【コラム】日中に必要な「平和を我等に」の気概-Wペセック

ノーベル平和賞の選考委員会は、日 本と中国の新指導者である安倍晋三首相や習近平共産党総書記に大きな 期待はしていないはずだ。

それどころか、全く期待していない可能性の方が高い。中国海軍の 艦船が日本の海上自衛隊の護衛艦へ射撃管制用レーダーを照射する問題 が起きたことで、両国の当局者には平和という考えが全くないことがあ らためて示された。安倍首相が11年ぶりに防衛費を増額する一方で、来 月国家主席に就任予定の習総書記は、中国の領有権に関する主張を固持 する意向を示している。どちらも良くない兆候だ。

安倍、習両氏は国内政治をひとまず後回しにし、世界平和のために 協力すべきだ。高まる軍事衝突リスク回避に向けた首脳会談の実施を発 表すれば、それは可能だろう。

両国が日本名で尖閣諸島、中国名では魚釣島の領有権をめぐり譲歩 するとは誰も期待していない。日中が衝突し、米国を争いに引きずり込 むという事態を阻止するため、両国が面目を保てる合意を結ぶことが必 要となる。

経済的利益が事態を解決するとか、軍事攻撃はすぐには起こらない などといった甘い考えは捨てるべきだ。艦船にレーダーを照射するとい うことは、挑発どころか攻撃に向けた第1歩であることが多い。領空侵 犯も着実に増えている。危機的な状況とはどういう事態なのかと疑問に 思う人は、2001年に起きた海南島事件がヒントになるだろう。

この年の4月1日、米軍の偵察機と中国軍の戦闘機が空中衝突し た。当時のブッシュ大統領にとっては最初の国際的な危機となった。必 死の外交努力により決定的な対立は避けられたものの、事件は大国がこ れほど近くで軍事兵器を扱う危うさを示した。日中間でこのような事態 が起きれば、貿易関係の維持に必要不可欠な平穏が破られることは想像 に難くない。

不確定要素

ここで不確定要素となるのは習氏だ。国内情勢が同氏にとって不利 な状況になれば、現実主義から対決姿勢へと移行するだろう。同氏が国 家主席に就任したら、北京の大気汚染や、主張を強めるメディア、スキ ャンダルまみれの共産党や貧富の格差拡大など、取り組むべき問題が山 積している。

こういった問題が再燃すれば、習氏は国際社会に食ってかかるとい う誘惑に逆らえなくなる可能性がある。戦争中に中国を植民地化してい た日本は、当然ながら標的になるだろう。日本に譲歩すれば習氏の国内 での立場が危うくなり、緊張が高まる恐れがある。

世界遺産

このようなリスクがあるから、首脳会談はますます重要になる。安 倍首相は先月、習氏と会談する可能性を示唆していたが、今回のレーダ ー照射で実現は遠ざかった。このような状況では、東南アジア諸国連合 (ASEAN)が会談の仲介役となるのがいいかもしれない。オバマ米 大統領がホワイトハウスを会談の場所として提供することもできるだろ う。

つまり、まだ選択肢は残されているということだ。尖閣諸島を日中 共同開発の公園や観光地に変えることや、両国が天然資源の開発で協力 するということも選択肢として挙げられる。また、国連が同諸島を世界 遺産に指定して管理するということも考えられる。

結局、本当に重要なのは安定だ。アジアを戦争の瀬戸際に追い込む 前に、安倍首相と習総書記はギブ・ピース・ア・チャンス(平和を我等 に)という気概を持つ必要がある。(ウィリアム・ペセック)

(ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。この コラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:Itchy Trigger Fingers Make Dismal Economic Policy: William Pesek(抜粋)