ECB総裁、やんわり口先介入-ユーロ高の物価リスクに言及

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総 裁は7日、ユーロ相場の上昇が景気回復を後押ししようとするECBの 取り組みの妨げとなることを当局者らが懸念している状況を示唆した。

総裁は政策決定会合後の記者会見で、「為替相場は政策の目標とな るものではないが、成長と物価安定にとって重要だ」と指摘した。 ECBはこの日、政策金利を0.75%で据え置いた。ドラギ総裁は「この 相場上昇が持続的なものであるかどうか、物価安定へのリスクに関する 当中銀の判断に変化をもたらすものかどうかを見極めたい」と述べた。

最近のデータは昨年にリセッション(景気後退)入りしたユーロ圏 経済が安定化しつつあることを示しているが、ユーロ高が輸出に打撃を 与えたりインフレ率を過度に押し下げることで、景気回復の芽を摘む恐 れもある。ドラギ総裁はECBが最新の景気予測を来月に公表すること に触れ、当局は「緩和的な金融政策姿勢を維持する」と強調した。

コメルツ銀行のチーフエコノミスト、イエルク・クレーマー氏はド ラギ総裁の発言について「これは口先介入だ」と指摘。「総裁は何回 も、ECBが緩和的な政策姿勢を維持すると繰り返した。また、来月に インフレ率予想を下方修正する可能性もやんわり示唆した」と分析し た。

ドラギ総裁の会見中からユーロは下落し、フランクフルト時間午後 4時43分は1ドル=1.3393ドル。今月はドルに対して1年2カ月ぶり高 値の1.3711ドルを付けたほか、円に対して3年ぶり高値に達していた。

インフレ目安は2%弱

ロイヤル・バンク・オブ・カナダの世界外為ストラテジー責任者の アダム・コール氏は「市場は総裁の発言を総じて弱気と解釈したよう だ」とし、「それに加えてインフレ低下のリスクに関する発言がユーロ を下落させた」と解説した。

ECBはインフレ率を2%弱とすることを政策の目安としている。 現在の予想は今年が1.6%、来年が1.4%。ユーロ高は輸入物価を押し下 げインフレ鈍化要因になる。

ドラギ総裁は景気の弱さが顕著なのは今年の「早い時期」のみにな るだろうとの見通しを示し、「今後年内に、経済活動は当中銀の緩和的 な政策姿勢に支えられ徐々に回復していくだろう」と述べた。ただ、景 気見通しへのリスクは依然、下方向だとも付け加えた。

ABNアムロのマクロ調査責任者、ニック・コーニス氏は「ドラギ 総裁はやんわりと金利とユーロ上昇の期待に水を差した」とし、実際 「ユーロ高は持続すれば最終的に利下げを引き起こしかねない」と述べ た。

貿易加重ベースのユーロ相場はドラギ総裁が通貨同盟を守る決意を 表明した昨年7月26日から11%上昇している。総裁の約束は債券市場の 波乱を鎮めるのには役立った。

通貨戦争

さらにユーロ高をあおっているのは市中銀行が、ECBが危機対応 で緊急に実施した3年物融資の繰り上げ返済を始めていることだ。これ によりECBのバランスシートは縮小。一方、米金融当局と日本銀行が バランスシートを膨らませ続けている中で、各国が自国通貨安による成 長を目指す「通貨戦争」を懸念する声も聞かれ始めた。

しかし、ドラギ総裁はそのような見方を否定し、ユーロ相場はおお むねファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)に沿っていると述べ た。ただ、金融政策が「為替相場に対して20カ国・地域(G20)の総意 を反映しないような結果をもたらすならば、われわれはそれについて話 し合う必要がある」とくぎを刺した。

INGグループ(ブリュッセル)のシニアエコノミスト、カルステ ン・ブルゼスキ氏は「ドラギ総裁の最大の課題は、口先介入で魔法のよ うなスキルを発揮してユーロ相場を押し下げることだった」とした上 で、「総裁は成功した。物価安定に対する下振れリスクにユーロ高を絡 めることで、ユーロがこれ以上上昇し成長とインフレの予測に影響を与 え始めた場合の新たな政策行動に道を開いた」と語った。

原題:Draghi Signals Euro Strength May Hurt ECB’s Recovery Efforts (1)(抜粋)

--取材協力:Emma Charlton、Jana Randow、Jeff Black.

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