S&P提訴でも格付け業界寡占変わらず-SECルールが障害

米政府が同国の格付け会社スタンダ ード・アンド・プアーズ(S&P)を相手取って起こした民事訴訟によ り、格付け業界に競争原理を持ち込む必要性が高まっている。その一 方、業界大手が付与した格付けが大恐慌以来最悪の金融危機に拍車を掛 けたにもかかわらず、格付けビジネスで大手の影響力を残すルールを政 府自らが課してきたことが寡占状況の固定化を招いてきた。

米司法省はS&Pと親会社のマグロウヒルについて、ウォール街の 金融機関から契約を獲得するために、リスクが最も高い借り手向けの住 宅ローンを裏付けとする債券のリスクを意図的に低く評価したと非難し た。政府および企業の債券を格付けするビジネスで、S&P、ムーディ ーズ・インベスターズ・サービス、フィッチ・レーティングス3社 の2011年の合計シェアは96%で、08年の97%からほとんど変わっていな い。11年の債券市場の規模は42兆ドル(約3920兆円)だった。

今回の訴訟を契機にこうした寡占状況に変化が生じる公算は小さ い。新規参入の促進を目的とした06年の法律が、その意図に反して大手 3社を保護しているからだ。新規参入者は推薦状の不備や高額のコンプ ライアンス(法令順守)コストなどが障害となり、格付けビジネス参入 に必要な当局の認定を受けるのが困難になっている。

ニューヨーク大学スターン経営大学院のローレンス・ホワイト教授 (経済学)は先月24日の電話インタビューで、この法律は「新規参入に 水を差し、新しいアイデアや方法の導入を妨げている。皮肉にもこれが 大手3社の地位を強固にしている」と語った。

格付け会社の新規参入申請窓口である米証券取引委員会(SEC)の ジュディス・バーンズ報道官は、手続きに関してコメントを控えた。

NRSRO指定

SECは1975年、S&Pとムーディーズ、フィッチの3社を国家認 定統計的格付け機関(NRSRO)に指定し、一部の投資家にはこの3 社の信用力評価が付された証券のみを購入対象にすることを義務付け た。06年の格付け機関改革法の下で現在は10社がNRSROに認定され ている。

パイパー・ジャフレーのアナリスト、ピーター・アパート氏(サン フランシスコ在勤)は先月24日のリポートで、格付け大手3社を取り囲 む「競争上優位な堀」が、過去6年間にわたり市場シェアが事実上変わ らないという結果を導いたと説明。今月5日には、「訴訟リスクが制御 可能であるのは明白だ」として、マグロウヒル株の買いを投資家に推奨 した。この堀はSECが導入した新ルールの影響をほとんど受けていな い。

5日のニューヨーク株式市場でマグロウヒルの株価は前日比10.7% 安の44.92ドルで終了。急落前まで同社株価は07年以来の高値水準にあ った。

原題:S&P Lawsuit Undermined by SEC Rules That Impede Competition (2)(抜粋)

--取材協力:Zeke Faux.