【コラム】アベノミクスのインフレ目標の負の側面-ペセック

安倍晋三首相の日本再生計画に世の 中がすっかり酔いしれているが、その是非について最終的な審判を下す 人々がいることが忘れられている。財政・金融政策の緩みににらみを利 かせ、必要なら債券売りで抗議する投資家、いわゆる「債券自警団」 だ。

安倍首相が自らの思い通りに政策を進めた場合の結果がどうなるの か、「アベノミクス」の強気派はまだ説明し切っていない。日本銀行が 消費者物価上昇率を2%か3%に押し上げるのに成功した場合のことを ちょっと想像してもらいたい。長期金利の指標となる10年国債利回りは 上昇し、「日本株式会社」を根幹から揺るがせることになるだろう。

疑問があるなら、日本の年金積立金管理運用独立行政法人( GPIF、運用資産約108兆円)の三谷隆博理事長に聞いてみよう。同 理事長は1日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、資産運 用の基本となるポートフォリオを7年ぶりに見直すことを検討している ことを明らかにした。安倍政権の政策はGPIFが保有する約69兆円相 当の国内債券の価値を目減りさせる恐れがある。

約10年間にわたるデフレとの闘いを終結させることは正しい目標 だ。2000年代初頭以来の歴代の政権はそれを成し遂げることができなか った。しかし、そのプロセスが円滑に展開するとの見方は考え直す必要 がある。世界3位の経済大国にとって債券利回りの急上昇ほどの不安定 要因はないだろう。リスクを嫌う日本の金融システムの中にあって、債 券は銀行や年金基金、保険会社、家計に保有されている主要な金融資産 である。もし金利が突然、上昇局面に入れば、その打撃は経済全体に、 ひいては国家全体に及ぶ。

デフレ終結のプロセス

だからこそ、財務省と日銀は債券市場の安定維持にこだわるのだ。 国債の90%以上が国内で保有されている環境の中で生まれたまれに見る ほど素直な投資家からの恩恵を日本はこれまで受けてきた。だが、自ら の手で問題を解決しようとしがちな債券自警団を心配しなくてもいいの だろうか。

アベノミクスは極めて短期間でこうした平穏さを一変させる恐れが ある。そうなれば約0.77%の10年国債利回りを危険極まりない形で急激 に押し上げることになりかねない。

安倍首相がデフレ終結に真剣に取り組んでいるのは素晴らしいこと だが、そのプロセスが穏やかに展開すると期待してはいけない。(ウィ リアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニス トです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:The Dark Side of Japan’s Creating Inflation(抜粋)

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