魅惑のブランデー南米産ピスコ、NYのカクテルシーンを彩る

数年前、チリのサンティアゴでバー を飲み歩いていた時、生まれて初めてピスコサワーを口にした。花の香 りのする甘酸っぱい飲み物で、卵白の泡が乗っている。モフィートより もフルーティー、マルガリータよりクリーミーでスパイシー、ウイスキ ーサワーよりはすっきりとした味わいだ。

白ブドウのブランデー、ピスコはチリとペルーの国民的なスピリッ ツ(アルコール分の強い蒸留酒)と言える。このピスコで作られた絹の ような味わいのカクテル、ピスコサワーは私の喉をあまりにスムーズに 滑り落ちたので、中南米の魚介類のマリネ、セビチェと一緒にもう1杯 注文せずにはいられなかった。ブルームバーグ・マーケッツ誌3月号が 報じた。

当時は、米国に戻ると良質のピスコはバーや酒類販売店で見つける ことができなかったが、今やロンドンやニューヨーク、サンフランシス コで最も人気の高い飲み物になっている。

覇権争い

チリとペルーは400年の歴史を誇るこの有名なスピリッツについ て、約100年にわたって覇権争いを繰り広げてきた。発明したのは誰 か、どの国がピスコと名づけたのか、正真正銘の醸造法はどれか、とい うようなことをめぐってだ。共通するのは蒸留されたワインであるとい う点だが、両国の規制に基づいて使用されるブドウの品種や栽培地、蒸 留や醸成の方法が決められている。

両国のピスコの味は決して同じではない。ペルーのリマを拠点とす るピスコの専門家でテレビタレントのジョニー・シューラー氏は、最初 に積み出された同国の港がある地名、ピスコにちなんで名づけられたた め発祥の地はペルーだと主張する。同氏は米国人起業家と共に保有する 新会社ピスコ・ポルトンの醸造長だ。

シューラー氏はペルーのピスコを3種類挙げる。「ペルーでは8品 種の使用が許可されているが、『プロ』はたった一品種のブドウから作 られる。『アチョラド』は数種類をブレンドしたものだ」。「ポルト ン」は「モストベルデ」と呼ばれるピスコの一種で、部分的に発酵した ブドウから作られ、そのために一段と滑らかで個性的な味に仕上がる。

ペルーには職人が運営する約400の小規模なセラーがあり、ピスコ の素朴な特徴を残す新発売の最高級品の味わいの多様さはお墨付きだ。 一方、チリは量で勝り、ペルーの10倍生産している。小規模のメーカー が増えているものの、大半は大規模な商業用蒸留所で製造されている。

チリの一般的なスタイルを守る同国の新たな高級ピスコ「カッパ」 は大半のペルー産ピスコより軽くて切れが良く、ドライでフレーバーが 柔らかい。カッパを製造しているのは、チャールズ・デ・ブルネ氏。オ レンジフレーバーのブランデーリキュールのブランド「グラン・マルニ エ」とチリのワイナリー「カサ・ラポストール」を家族で保有する。

ゴールドラッシュ

リマで米国人居住者によって約100年前に発明されたピスコサワー を作るのなら、私はポルトンか「カンポ・デ・エンカント」などペルー 産のアチョラドを使うのを好む。すっきりとした味わいに複雑なフレー バーを添えてくれるからだ。ただ、夏にはチリの「ワカール」のような 切れの良さと花のような香りが欲しい。

創造力に富むバーテンダーたちは、もう一つの人気再燃中のカクテ ル、ピスコパンチに元来のパイナップルのガムシロップの代わりにハイ ビスカスのシロップとベルモット酒など新たな味わいを加えている。ピ スコパンチは米カリフォルニア州のゴールドラッシュの全盛期にサンフ ランシスコで生まれた。

最近では、ニューヨークのチェルシー地区にあるペルー料理レスト ラン「レイミ」でピスコのカクテル文化に触れることができた。ここは 昨年開店し、店内にはムラサキトウモロコシやライチーなど30種類の材 料が入れられたガラス瓶が30本並んでいる。ピスコが優れた素材である 証拠に、瞬く間に世界のカクテルシーンを魅了している。

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