太陽光ブームに照準、メガバンクが狙う1兆8000億円の融資市場

三菱UFJフィナンシャル・グル ープなど3メガバンクは、3年間で最大1兆8000億円規模の市場に拡大 が見込まれる国内の太陽光(ソーラー)発電所関連融資の獲得に動き始 めた。政府が推進する再生可能エネルギーの固定価格買取制度を背景に 大型の事業案件が相次ぐ中、3メガ銀は収益拡大に向けて太陽光ブーム に照準を合わせる。

3メガ銀が狙うのは、メガソーラーと呼ばれる大規模発電所の建設 資金ニーズだ。今後3年間のメガソーラー市場について、みずほフィナ ンシャルグループは約1兆8000億円、三菱UFJは約1兆3500億円が新 たに設備資金として発生すると見込む。

日銀統計によれば、2011年度の国内製造業の設備投資向け新規融資 額は約1兆9800億円で、3メガ銀が狙う太陽光融資は、この70-90%に 相当することになる。調査機関のブルームバーグ・ニューエナジーファ イナンス(BNEF)によると、日本での太陽光発電(住宅除く)への 投資額は12年が2230億円だった。

政府は11年3月の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電 所の事故などを受けて、再生エネルギーの推進を目的に太陽光などで発 電した電力を全量固定で電力会社が買い取る制度を導入した。発電事業 者の内部投資収益率(IRR)を太陽光の場合は6%と試算し、昨年7 月に今年度の買取価格を1キロワット時42円(20年間)に決定した。こ の価格はドイツや中国の約3倍に相当する。

三菱UFJは、大規模太陽光の国内市場規模について年間約4500億 円(150万キロワット相当)の投資が3年間続くと予想する。三菱東京 UFJ銀行ストラクチャードファイナンス部の西川哲夫副部長は、ライ バル金融機関との競争が激しくなる中、太陽光に関連したプロジェクト 融資で「トップシェア」を目指す意向だ。これまで海外で培った再生可 能エネルギー向け融資の実績を背景に、商社などと連携して大型案件の 獲得を狙う。

大型案件

すでに大型案件が動き出している。ゴールドマン・サックス証券と 日本アイ・ビー・エムは昨年9月、岡山県瀬戸内市に建設する日本最大 級の太陽光発電所の委託事業者に選定された。同市の計画では、ゴール ドマンなど7社は400ヘクタールの塩田跡地に総出力25万キロワットの プロジェクトを展開する。総事業費は最大861億円で、13年4月に着手 する予定だ。

ソフトバンクは、これまでに京都府など4カ所でメガソーラーを稼 働させた。同社広報の中山直樹氏によると、すでに稼働済みも含めて全 国で合計21万1000キロワットの発電事業を計画する。

みずほコーポレート銀行プロジェクトファイナンスチームの白石幸 治次長は、メガソーラー市場について「3年間は年6000億円程度(200 万キロワット相当)で推移する」とみている。国内は景気低迷で本業の 融資業務が伸び悩む中、「銀行にとって設備資金の需要がこれだけある のはなかなかない」と述べ、魅力的な市場の拡大に期待を寄せる。

みずほは、1月に大規模な太陽光発電に投資する専門ファンド(総 額50億5000万円)を設立した。事業会社などとの共同出資に加え、地方 銀行との協調融資で総額2000億円の事業に発展させる計画を進める。こ のほか、プロジェクトファイナンスで対応する大規模な案件で約2000億 円、発電量が2000キロワット以下の中規模案件で約4000億円の融資相談 がきている。

日銀統計によれば、12月の都銀(大手11行)の貸し出しは前年 比0.3%増となり、3年2カ月ぶりにプラスに転じた。地銀なども加え た銀行・信金合計の総貸出平残は同1.2%増と09年10月以来の高い伸び を示した。

三井住友フィナンシャルグループは太陽光発電の融資関連に約110 人を配置し、大企業だけでなく中堅・中小企業も対象に推進する。発電 収入を優先的に返済に充てるなどプロジェクト融資の要素を取り入れる ことで、通常は5年前後の企業融資を返済期間10年以上で対応する。三 井住友銀行成長産業クラスター室長の工藤禎子氏は、国内の太陽光発電 融資では「3分の1以上のシェアはとりたい」と意気込む。

ファンドも動く

メガソーラーのブームはファンドも動かす。東京海上アセットマネ ジメント投信は、昨年8月に全国10カ所のメガソーラー事業(合計約2 万8000キロワット)に投資するファンドを立ち上げた。目標IRRは 5%に設定し、国内の企業年金や銀行などから90億円を集めた。メガソ ーラー運営は三井物産が行う。同ファンドを推進した東京海上アセット の外尾竜一商品企画部長は、同規模の第2号ファンドをつくれないか検 討を始めている。

日本政策投資銀行環境・CSR部長の竹ケ原啓介氏は、固定価格買 い取り制度の導入によって「ソーラー発電事業がハイリスク・ノーリタ ーンに近いところからローリスク・ローリターンに変わった」とし、銀 行にとってファイナンスがつけやすくなったとみる。今後のリスクとし ては、太陽光パネルの保守・管理について投資期間の20年間を誰が保証 できるかが課題と指摘する。

全量買取制度は、太陽光発電パネル製造にも大きな影響を与えてい る。太陽光発電協会(JPEA)よると、12年7-9月期の国内太陽電 池出荷数は前年同期比80%増の62万7000キロワット分に達し、81年以降 では最高を記録した。BNEFは、13年には日本が世界で3番目に大き な太陽光市場になると推測する。

海外勢との競争激化

太陽光発電が注目される裏では、パナソニックやシャープなど太陽 光パネルメーカーは中国などの海外勢との競争が激しさを増している。 JPEAのデータによれば、12年7-9月の国内出荷数のうち輸入分 が32.3%を占め、11年度の21.5%から10ポイント以上増えた。

エネルギー政策では、政治的な転換リスクも浮上している。昨年12 月の衆議院選挙では、今回の太陽光など再生可能エネルギー政策を主導 した民主党が破れた。政権を奪い返した自民党の茂木敏充・経済産業相 は、同月28日の記者会見で「3年間は再生可能エネルギーと省エネを最 大限拡大する」と述べた。その一方で「火力発電の依存は当面避けられ ない」との見通しを示した。同党は、政権公約に10年以内に持続可能な 電源構成のベストミックスを確立すると明記した。

茂木経産相は1月21日の日本記者クラブでの会見で、再生可能エネ ルギーの固定価格買い取り制度について、13年度に太陽光発電の買取価 格を今年度の1キロワット時当たり42円から30円台後半に引き下げを検 討する考えを示した。経産省の調達価格等算定委員会は、3月末までに 新年度の価格を検討する。

太陽光ブームは、高い固定価格買取制度が見通せる3年間しか続か ないとの見方もある。BNEF太陽光発電アナリストのジェニー・チェ ース氏は、「高い買取価格と潤沢な資金供給により、政府予測を大幅に 上回る導入量になれば、その後は不況に陥る恐れが懸念される」と述べ た。みずほの白石氏は「固定買取金額が下がっても投資がゼロになるこ とはない」とみている。

--取材協力:. Editors: 淡路毅, 平野和