震災後の投資リターン1位は建設株、強靭化追い風-低リスク
岩本正明、Yoshiaki Nohara震災復興需要や政府による公共事業 の拡大方針を背景に、東日本大震災以降の期間で見ると、建設株がハイ リターン、ローリスクの収益機会を投資家に提供している。今後につい ても、国土強靭化という国策をばねに安定したパフォーマンスを続ける との見方が強いようだ。
東証1部の業種別33指数を比較したブルームバーグ・リスクレス・ リターン・ランキングによると、建設株指数の震災前日(2011年3月10 日)からことし1月末までのボラティリティ調整後のリターンは1.95% と、全業種中で1位となっている。同期間のトータルリターン(配当込 み)は41%と2位のゴム製品(37%)を引き離した一方、ボラティリテ ィは21と全業種平均の26を下回った。
震災以降、政府は公共事業やがれき処理などの費用として11、12年 度の予算でおよそ19兆円の復興関連経費を計上。安倍政権発足後に打ち 出された緊急経済対策では、被災地の道路・港湾整備や老朽化したイン フラ補修などで、復興・防災事業向けに財政支出ベースで3.8兆円を投 じる。安倍政権は、政権公約で復興加速と災害に強い国土づくりを掲げ ており、13年度予算案では復興特別会計で4兆4000億円を計上した。
損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントの角田成広シニアイン ベストメントマネジャーは、「今後も政府の風向きやインフラ老朽化の 問題がポジティブに働く。消費税増税前の住宅の駆け込み需要も期待で きる」と指摘。建設株に関し、「最低ニュートラルで、良ければポジテ ィブ。これから少なくとも2、3年は堅調な推移が続く」と見る。
世界経済の影響受けにくい
震災後の日本株は、為替の円高や欧州債務問題などを受け厳しい局 面が多く、TOPIXは昨年6月4日に1983年以来の安値水準に沈ん だ。その間、復興需要への期待が下支え要因となり、建設株指数はほぼ 横ばい。それ以降、直近までのパフォーマンスを見ても、建設株指数は TOPIXの35%を上回る、39%の上昇を演じた。
足元の建設株は、低いボラティリティの中で高いリターンを上げて いる。クレディ・スイス証券の望月政広アナリストは、「そもそも建設 は内需株で、世界経済の影響を受けにくく、収益が安定している」と指 摘。世界景気が悪くなったときや特別な材料があった時に買われるセク ターで、「投資家が頻繁に売り買いするセクターではない」と言う。
震災復興、政府の公共投資拡大に加え、14年4月からの消費税増税 を前にした住宅の駆け込み需要発生の可能性も建設株の支援要素だ。こ としで期限切れとなる住宅ローン減税について、13年度の税制大綱で17 年までの延長が盛り込まれた。
半年以内終えんの慎重論も
建設株の今後について市場参加者の期待感は強いが、一部では先行 きに慎重な声も聞かれている。ニッセイアセットマネジメントの久保功 株式ストラテジストは、「日本の財政を考えると、今後もどんどんと公 共事業を拡大することはない」とし、震災以降は財政支援が継続してき たが、「それも長くは続かず、建設株の好調も半年以内に終わる可能性 が高い」と予想した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の水谷敏也シニアアナリスト は、公共事業の拡大が実際に企業収益の改善につながるかどうかは、民 間建設需要誘発の有無にかかっていると見る。また、公共事業の集中発 注は労働者不足問題によりマージンを圧迫する可能性もあり、株価回復 が持続するには「実需に結びつくシナリオと実現性が必要」とした。
リスクレス・リターンは、期間中のトータルリターンをボラティリ ティで除して計算、リスク1単位に対するパフォーマンスを計測してい る。ボラティリティが高い資産は、短期間での価格の変動率が大きく、 予期しない損失の可能性も大きくなる。
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