長期国債は政府と協調の手段、上限撤廃も議論-02年下期の日銀議事録

日本銀行は29日、2002年7月-12月 に開かれた金融政策決定会合での全発言を記録した議事録を公表した。 日銀は当時、量的緩和政策の下で長期国債を買い入れていたが、流動性 供給という表向きの説明とは別に、委員の間では、政府の経済対策と歩 調を合わせて協調姿勢を示すことが意識されていたことが分かった。

日銀は01年3月、日銀当座預金残高を操作目標とする量的緩和政策 を導入。その下で、当座預金を円滑に供給する上で必要と判断される場 合に長期国債の買い入れを増額することを決めた。同時に、財政ファイ ナンスとの見方を招かないよう、日銀が保有する長期国債残高は銀行券 発行残高を上限とする「日銀券ルール」を設けた。

政府が総合デフレ対策を発表した02年10月30日、日銀は同目標を10 兆-15兆円から15兆-20兆円、長期国債購入を月1兆円から1.2兆円に 増額した。山口泰副総裁は「いわゆる、これはかぎかっこ付きで表現を 使うとすれば『政府とのある種の連携プレーみたいなものをどういうふ うに意識するか』」とした上で、「具体的には恐らく長期国債の買い増 しを考えるのかどうかというような問題になろうかと思う」と述べた。

山口副総裁は続けて、長期国債購入の実務上の必要性について「資 金供給上への対応という意味では、ショートエンドでのさまざまなオペ レーションを組み立てるということで、十分対応できている状況であろ うと思う。そういう意味で、あえて国債のオペをさらに増やしていくと いう客観的な理由には乏しいのではないか」と語った。

5000億円の増額を主張

これに対し、須田美矢子審議委員は「私は今回、長期国債の買い切 りを増大させる必要はないと思う。そうしなくても、資金供給を増加さ せることは可能だからである。しかし、山口副総裁も言われたように、 協調というものがまたここに出てくるとしたら、もし増やすとしても、 これまで通り私は2000億円が上限だと思っている」と述べた。

中原真審議委員は「政府の不良債権処理の加速とデフレ対策につい て、最終案はいまだ見えていないが、今日、明日中に決定されるという こと、これと軌を一にして金融緩和策を打つということで、期待形成面 では少なくとも単独の政策に比べて効果は高いと思われる」と指摘。そ の上で、長期国債購入を1.4兆円ないし1.5兆円まで増やすことを提案し た。さらに、田谷禎三審議委員も4000億円の増額を主張した。

植田和男審議委員は長期国債の位置付けについて「われわれの公式 的なスタンスでは、苦しくなってから、つまり当預目標実現が苦しくな ってからやるということでもよろしいわけだが、ここまで金融緩和をや ってきたときにセットでやってきたということもあるし、今日は繰り返 さないが、裏では込み入ったいろいろな議論もあることなので、私は両 方セットでやってよろしいかと思う」と述べた。

白川現総裁も議論に参加

当時理事だった白川方明現総裁も事務方として議論に参加。「国債 をさらに増やして1.4兆円、あるいは1.5兆円、いろいろな提案があった が、仮にその一番大きい1.5兆円という金額でいくと、銀行券の伸びが 仮に今の12%台から8%まで低下すると、1年後の2003年10月にこの枠 に到達するという計算になる」と説明を行った。

速水優総裁は議論をまとめる形で「補正予算とか来年度国債、来年 度予算とかそういうようなことがまた今後出てくることは間違いないわ けであるし、そういうことも今後考えて情勢の変化に対応していくため には、今回は1兆2000億円で良いのではないか」と言明。今後も政府と の協調のために長期国債を使うことを示唆するとともに、その余力を残 しておくためにも増額幅は最小限にすべきだとの考えを示した。

長期国債買い入れに上限を定めた日銀券ルールの撤廃についても議 論が行われた。政府代表として出席した谷口隆義財務副大臣は「私自身 の意見」とした上で、月2兆円までの増額を提案。当時の小泉政権が不 良債権処理を終えることを宣言していた04年3月末まで、日銀券ルール を停止することを検討してはどうかと述べた。

日銀券ルールの再検討が必要

こうした意見に対し、中原委員は02年12月16、17日の会合で「当座 預金目標の引き上げが実体経済に働き掛けるチャネルがうまく機能して いないとすれば、長期金利の低位安定によるリスクプレミアムへの影響 の方が確実かもしれないという気もしている」と指摘。その上で、日銀 券ルールについて「再検討することが必要かと思う」と語った。

次期総裁の有力候補の1人である武藤敏郎大和総研理事長は21日の ブルームバーグ・ニュースのインタビューで「日銀券ルールは平時とし ては意味があると思うが、それが政策の展開の邪魔になるということで あれば、一時的に撤廃しても特段問題があるわけではない」と述べた。 白川総裁の任期が切れる4月以降、新総裁の下で、再び日銀券ルールの 是非をめぐる議論が活発化する可能性もある。

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