円が対ドル2年7カ月ぶり安値、欧米好感でリスク選好-スピード警戒

東京外国為替市場では、円が対ドル で、約2年7カ月ぶりの安値付近で推移した。欧州債務危機をめぐる懸 念の緩和や米長期金利の上昇を背景にリスク選好に伴う円売り圧力がか かった。

ドル・円相場は朝方に一時1ドル=91円26銭と、2010年6月21日以 来の水準までドル高・円安が進行。その後はやや円売りの勢いが鈍化し て午前10時半過ぎに90円84銭まで値を戻した。午後にかけては91円ちょ うどを挟んだ水準でもみ合い、午後3時25分現在は90円92銭付近で取引 されている。円は対ユーロで一時1ユーロ=122円91銭と、11年4月11 日以来の安値を付けた後、122円19銭まで円高方向に振れ、同時刻現在 は122円33銭付近で推移している。

外為オンライン情報サービス室の佐藤正和顧問は、欧州は景気面で 難しさが残るものの、「債務危機に対する懸念の払しょくという点では じわじわと好材料が出てきている」と指摘。その上で今週は、連邦公開 市場委員会(FOMC)や雇用統計など米国サイドの材料が目立つと し、FOMC声明やバーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長の発 言で「緩和策からの出口戦略が早まった」という観測につながり、雇用 統計の内容も好調となれば、ドル高・円安の流れが後押しされる展開に なりやすいとみている。

一方、ドル・円相場の相対力指数(RSI、期間14日)は70付近で 推移しており、ドル買い・円売りの行き過ぎが示されている。佐藤氏は ドル・円は90円台を固めた感があり、円安のトレンドは変わっていない としながらも、チャート的に月足の一目均衡表の雲に突入していること から、「ここからのスピードは緩やかにならざるを得ない」と分析。日 経平均株価がマイナスに転じる局面もあり、さすがに連日ドル買い・円 売りが進んでいる状況下では、調整が入りやすい面もあると言う。

この日の東京株式相場では、日経平均株価が取引開始直後に一時約 2年9か月ぶりとなる1万1000円台に乗せたが、取引が進むにつれて上 昇幅を縮小し、午前の取引後半からはマイナス圏での推移に終始した。 午後は下げ幅を拡大し、結局、前営業日比100円超下げてこの日の安値 で取引を終えた。

円安めぐる攻防

この日は安倍晋三首相が通常国会召集を受けて衆院本会議で所信表 明演説を行い、「強い経済」を回復するため、断固たる決意で臨む考え を強調した。事前に配布された演説テキストによると、経済の再生が日 本にとって「最大かつ喫緊の課題」と指摘。「これまでの延長線上にあ る対応では、デフレや円高から抜け出すことはできない」と訴え、大胆 な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「3本 の矢」で経済再生を進める考えを示した。

外為オンラインの佐藤氏は、日本政府の姿勢はぶれていないとし、 所信表明の内容が円売りの流れにとって「マイナス材料になりにくい」 としている。

米国のブレイナード財務次官(国際問題担当)は25日、スイスのダ ボスでインタビューに応じ、為替市場で「私はゲームのルールが今後も 引き続き守られると信じている」とし、「システムを円滑に機能させる ために非常に重要なことだ」との見解を示した。また、ドイツのメルケ ル首相が25日に安倍首相に電話をしたことも明らかとなっている。

甘利明経済再生担当相はこの日、臨時閣議後の記者会見で、日本銀 行に大胆な金融緩和を求めるなど安倍政権の経済政策が円安を誘導して いるとの批判は「ごく一部の国」から出ただけで、週末に出席した世界 経済フォーラム(WEF)年次総会の会合では日本の政策を支持する声 が相次いだとの認識を示した。

また、麻生太郎財務相は臨時閣議後の会見で、日本としてはデフレ 不況からの脱却が優先順位の一番であって、円が結果として安くなって いるのは付随的に起きている話だと述べている。

欧州懸念緩和で欧米金利が上昇

欧州中央銀行(ECB)は25日、初回の3年物長期リファイナンス オペ(LTRO)について、繰り上げ返済が可能になる来週30日、銀 行278行が1372億ユーロを返済すると明らかにした。これは、ブルーム バーグ・ニュースがまとめた市場予想の840億ユーロを大きく上回る。

ドイツのIfo経済研究所が25日に発表した1月の独企業景況感指 数は3カ月連続で上昇し、昨年6月以来の高水準となった。

25日の欧州債市場ではドイツ債が売られ、2年債の利回りが10カ月 ぶりの水準に上昇。10年債の利回りは3カ月ぶりの高水準を付けた。ま た、米国債相場も下落し、昨年9月以来の大幅安となった。

一方、米国で25日に発表された昨年12月の新築一戸建て住宅販売は 前月比7.3%減の36万9000戸と、市場予想の38万5000戸を下回った。た だ、昨年は年間で19.9%増の36万7000戸と09年以来の水準。また、年間 でのプラスは05年以来7年ぶりとなる。

米国では今週、30日にFRBがFOMCを開くほか、2月1日には 1月の雇用統計が発表される。ロイヤル・バンク・オブ・スコットラン ド・グループ(RBS)のシニア為替ストラテジスト、グレッグ・ギブ ズ氏(シンガポール在勤)は「再び円軟調の波が見られ、ドル・円は底 堅くなっている」と指摘。長期的なスタンスで米景気回復が進むとの見 方も出てきており、量的緩和の終了に近づく可能性が意識されやすく、 ドルの下支え要因になっている面もあると説明している。

--取材協力:Mariko Ishikawa、小宮弘子. Editors: 崎浜秀磨, 青木 勝

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