日銀は2%目標掲げるも、事実上ゼロ回答-「面従腹背」で市場は失望

日本銀行は2%の物価目標を掲げる とともに、期限を定めない資産買い入れ方式を導入した。金融市場では 決定直後に円安・株高に振れる場面もあったが、2%を実現させる上で 実効性に乏しい追加緩和の内容に対し、失望感が台頭。23日の東京市場 では円高・株安になっている。エコノミストの間からは、事実上、日銀 のゼロ回答であり、政府に対する面従腹背との指摘も出ている。

日銀は22日の金融政策決定会合で、消費者物価指数(CPI)前年 比上昇率で2%の「物価安定の目標」を導入。併せて、資産買い入れ等 基金について、2014年初から期限を定めず毎月一定額の金融資産を買い 入れる方式を導入すると発表した。

日銀によると、資産買い入れ等基金は14年中に10兆円(長期国債、 国庫短期証券それぞれ5兆円)増加するという。白川方明総裁は会見で 買い入れのペースについて「14年のフローの買い入れ金額は13年中の平 均のフローの金額より大きくなる」と述べたが、10兆円という額は昨年 9月以降3回行った追加緩和の規模と変わりはない。基金の増額を13年 中でなく14年に先送りしたことも失望につながっている。

シティグループ証券の道家映二チーフJGBストラテジストは「早 期実現には事実上の『ゼロ回答』だ」と指摘。「日銀は『物価安定の目 標』を『できるだけ早期に実現する』としつつも、年内実施分の追加緩 和は何も決めなかった。これまでと変わらず『羊頭狗肉』、『面従腹 背』という印象が強いようだ」という。

目標と手段の食い違い一段と

三井住友アセットマネジメントの武藤弘明シニアエコノミストは 「2%の物価目標を採用することで日銀が大きく妥協した形だが、資産 買い入れの停止時期や実質ゼロ金利の終了時期に関しては、時間軸は曖 昧(あいまい)なものとなっており、金融面の不均衡の蓄積に対しても 一応ケアするという枠組みを残した点で、日銀はある程度の裁量を確保 した形となっている」と指摘。「依然として面従腹背的な要素は残って いるようにもみえる」という。

第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「これから日銀 は2%の物価目標をどうやって達成するのかという作戦は描き出されて いない。日銀は政府から要求されるテーマを消化したようにみえて、政 策手法として革新的なことは盛り込んでいないように思える」という。

シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは「物価安定目 標が2%に設定されたことで、目標とそれを実現するための政策オプシ ョンの齟齬(そご)が一段と強まってしまった印象が強い。この点を最 も強く認識しているのは、ほかならぬ日銀自身であろう」という。それ を如実に表しているのが、エコノミスト出身の佐藤健裕、木内登英の両 審議委員が物価目標2%に反対したことだ。

緩和積極派の2人が反対

政府は昨年3月にBNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミス トを審議委員候補として提示したものの、白川総裁と立場が近いとして 否決された。代わりにより金融緩和に積極的として両氏が任命された経 緯がある。バークレイズ証券の森田京平チーフエコノミストは「その両 氏が『2%は持続可能な水準を上回る』『成長力強化の前の物価目標の 明示は信頼を毀損(きそん)させる」という2つの理由から今回の決定 に反対した」と指摘。

その上で「潜在成長率の上昇という裏付けがない中では、2%の物 価上昇が持続可能かつ経済厚生に資する形で実現するか疑問を持つこと は至極妥当だろう。潜在成長率引き上げに向けた政府のコミットもまだ 明確とはいえない。こうした中で、今回の両氏の反対は十分うなずける 行動といえる」と評価する。

会合前、金融市場では付利が引き下げられるとの見方が一部であっ たが、白川総裁はそうした思惑を一蹴した。しかし、次期総裁の有力候 補の1人である武藤敏郎大和総研理事長は21日のブルームバーグ・ニュ ースのインタビューで、金融緩和を進める上で「タブーをあらかじめ作 ると柔軟性、大胆さが失われる」と言明。「今の日本はデフレ脱却のた めの金融緩和が最優先であって、副作用がどの程度心配されるかはっき りしないのに副作用を強調するのは適当ではない」と語った。

新体制に先送り

バークレイズ証券の森田長太郎チーフストラテジストは「日銀がフ ロー重視にスタンスを変えたということであるのならば、『現状維持』 というのが長期国債購入についての今回の決定である」と指摘。「日銀 としては、13年中の緩和強化策と14年中に増加するストックの中味につ いては、新正副総裁の体制において決定するということで、実質的に決 定を先送りしたということであろう」と指摘する。

東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジストは「遅かれ早かれ、 付利の引き下げや、資産買い入れ等基金で買い入れる長期国債の年限長 期化などは実現する」とみている。

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