【コラム】今度の通貨戦争は世界大戦に,日本が口火-ペセック

米財務長官に就任後、ジャック・ル ー氏がまずやる仕事は「嘘をつく」ことだろう。

ガイトナー長官の後任としての1日目に、新長官は米国の長年の政 策に変更はないと市場を安心させるため、「強いドルを支持する」と言 わなければならない。しかし真実からこれほど遠い発言もない。何しろ 円はドルに対して2年半ぶりの安値を付け、世界中が日本の電撃作戦に どう反撃しようかと考えているのだから。

通貨戦争パート2に備えよう。経済成長の実現が難しくなる世界 で、政策運営はゼロサムゲームになった。米国も中国も、変化を約束し た安倍晋三首相のあいまいな言葉が外国為替市場の流れを変えたスピー ドに不意を突かれた。大々的な反撃があることは確実だ。

LGTグループの南アジア投資戦略責任者、サイモン・グロースホ ッジ氏は「日本はゴールの明確でない円安政策で新たな通貨戦争の口火 を切った。日本の成功には皆驚かされた」と述べた。「どの国も、既に 厳しい輸出環境の中でさらなる自国通貨高を望まない」と付け加えた。

中国の新指導者、習近平共産党総書記は難しい時期に権力の座に就 いた。汚職や言うことを聞かない国内メディア、環境汚染と問題山積 だ。不利な為替動向による輸出急減だけは真っ平だろう。韓国の朴槿恵 次期大統領も同じだ。アジア中の政策当局者らが行動するだろう。

フィリピンのアキノ大統領もタイのキティラット財務相も対策を練 っている。政府と日本銀行が円安政策で足並みをそろえる中で、各国は 危機感を募らせる。

欧州も参戦

欧州勢も黙ってはいない。ユーロ圏財務相会合(ユーログループ) のユンケル議長(ルクセンブルク首相兼国庫相)はユーロ相場が「危険 なほど高い」と発言した。スイスとロシアからも警戒発言が出た。米国 も例外ではない。オバマ政権2期目の焦点は製造業の復活だ。そのため にはドル安が必須だ。

長期的には、主要7カ国(G7)の協力なしに日本が円安基調を維 持することは不可能だ。結局、円高はいつも、ユーロとドルの魅力が円 に対して低下したという結果にすぎない。安倍首相がデフレを終わらせ ると期待する向きは円資産を求めることから、円が反発するのは不可避 に思われる。

ただ、2004年3月までの1年3カ月に日本が35兆2000億円を費やし た介入の失敗を歴史の前例と考えることは恐らくできないだろう。これ までのところ、安倍首相は一文も使わずに円押し下げに成功している。 その結果、2013年には激烈な通貨戦争の恐れがある。

通貨戦争をするほど愚かではないという各国政府の公式発言など信 じてはならない。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は先週、 報復の脅威が新たな通貨切り下げ競争を防ぐだろうと発言した。しかし これは希望的観測だ。緊張の度合いを示す一つの指標として、日本の政 権交代以来、中銀での為替関連発言が急増している。

通貨切り下げという「近隣窮乏化政策」は、これを採用する国や地 域が少ない場合にはうまくいく。しかし向こう1年には皆が一斉に、輸 出によって自国経済の苦境を脱しようとするだろう。通貨の強さで最下 位を目指す競争が世界で始まる。ルー氏が米財務長官として本気で強い ドルを望むなら、他の全員が大喜びで望みをかなえてくれることだろ う。(ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニス トです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:‘Strong Dollar’ Is Lie Told in New Currency War: William Pesek(抜粋)

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