日銀はタブー作らず大胆に、副作用強調も適当でない-武藤前副総裁

日本銀行の前副総裁で現在、大和総 研理事長の武藤敏郎氏はブルームバーグ・ニュースのインタビューで、 金融緩和を進める上で「タブーをあらかじめ作ると柔軟性、大胆さが失 われる」と述べるとともに、「今の日本はデフレ脱却のための金融緩和 が最優先であって、副作用がどの程度心配されるかはっきりしないのに 副作用を強調するのは適当ではない」と語った。

インタビューは21日行った。武藤氏は「生鮮食品を除く消費者物価 指数(コアCPI)前年比は2013年度までゼロ%近傍にとどまるだろ う。消費税率引き上げの影響を除けば、14年度も急に1%を展望するこ とにはならない可能性が高い」と言明。その上で「デフレ脱却は15年以 降にならざるを得ないのではないか。金融政策も少なくとも14年くらい まで、緩和的な状況が続く可能性が高いだろう」と語った。

さらに、「副作用は常にモニターする必要があるが、それを理由に 金融緩和にブレーキをかけるという状況ではないだろう。量的緩和を推 進する手段としては、国債を買うことが、今は量的にも、現実問題とし ても、適切な政策だ」と語った。

物価目標については「日銀が昨年2月発表した中長期的な物価安定 のめども、CPI前年比で2%以下のプラスと言っており、2%も視野 に入っている」と指摘。「日本のCPIは歴史的に非常に低水準だが、 バブル崩壊後のデフレ期待やバランスシート調整などさまざまな足かせ があったためだ。国際的には2%が標準であり、日本だけが特殊という のは適切ではない。日銀は2%を標榜して良いと思う」と語った。

日銀券ルール撤廃も

日銀は長期国債購入の歯止めとして、同国債保有を日銀券発行残高 にとどめる「日銀券ルール」を設けている。現在は資産買い入れ等基金 により大量の購入を行っているが、これはあくまで例外措置との位置付 けだ。武藤氏は「日銀ルールは平時としては意味があると思うが、それ が政策の展開の邪魔になるということであれば、一時的に撤廃しても特 段問題があるわけではない」と述べた。

財政政策については「機動的な財政出動はカンフル剤として認めら れてしかるべきだが、財政赤字を無関心に拡大していくことは避けなけ ればならない」と言明。「単年度の財政収支で見ても、債務残高の GDP比で見ても、長期の持続可能性はない。財政赤字を監視し、コン トロールする力が政府にあることを示すことが大事だ」と語った。

その上で「大胆な金融政策と機動的な財政政策は基本的にカンフル 剤的なものだ。それが必要なことに異議はないが、生産性や競争力向上 の観点からは間接的な役割しかない」と指摘。少子高齢化による労働人 口減少を補うため、女性や高齢者、外国人労働者を活用するほか、投資 の効率化や規制緩和、技術革新、環太平洋連携協定(TPP)を進める など、「さまざまな努力が必要であり、1つの特効薬はない。政策総動 員が必要だ」と述べた。

今が円安過ぎるとはみてない

為替相場について政府要人の発言が錯綜(さくそう)していること については「為替は自由な市場で適切な水準が決まるということは、7 カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)でも繰り返し確認している。日 本が円安誘導することも辞さずと強調すれば、必ず反発を招くし、市場 は非常に不安定になるリスクがある」と言明。

その上で「もっとも、1ドル=80円を上回る円高は日本経済の実力 を表していないという意見も強かった。円に資金が流入してくる理由も 積極的な日本買いではなく、安全資産への逃避だと指摘されていた。し たがって、今の状況が円安過ぎるとはみていない」と述べた。

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