「日銀サーベイ」金利予想、経済物価情勢、金融政策の展望コメント

【記者:日高正裕】

1月18日(ブルームバーグ):ブルームバーグ・ニュースは21、 22日に日本銀行が開く金融政策決定会合を前に、有力「日銀ウオッチ ャー」13人に金融政策の予想を聞いた。質問内容は以下の通り。アン ケート回答期限は17日午前8時。エコノミスト予想のまとめ記事とし て「物価目標2%明示へ、実現には懐疑の声-追加緩和も、22日の日 銀会合」を同時配信した。

1)今回の会合で予想される政策、2)日銀が政策金利を「引き 下げる」時期、3)日銀が政策金利を「引き上げる」時期、4)~11) 政策金利の予想水準(氏名50音順、かっこは前回回答)、12)経済・ 物価の見通し。13)金融政策運営の見通し-①政府との共同文書の内 容、2%物価目標の提示の是非、その実現可能性、中長期的な物価安 定の目途(めど)の書き換え、新たな金融政策運営方針の時間軸(コ ミットメント)、それら諸施策の効果、副作用。

②追加緩和の可能性、追加緩和がある場合、資産買い入れ等基金 の増額規模、長期国債、短期国債、指数連動型上場投資信託(ETF)、 不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ増額規模、買い入れ対象国 債の年限の拡大、買い入れのオープンエンド(無期限)方式への変更、 下限金利の撤廃、政策金利の引き下げ、輪番オペの拡大、外債購入な ど、予想される手段、その効果と副作用、金融市場に与える影響、追 加緩和を行わなかった場合の市場の反応、③次期総裁、副総裁候補の 具体名と、その下で予想される4月以降の金融政策運営の展開。

●三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジスト 1)今回会合 :追加緩和(基金10兆円、無期限化)、物価2%目標 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2016年度以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%

12)「財政の崖」からの転落を回避した米国景気は今年の後半以降、年 率3%の拡大軌道へ回帰する。原動力はバランスシート調整圧力の弱 まりに伴う個人消費の拡大。ただし「財政の崖」問題の余波(減税打 ち切りや歳出削減、さらには債務上限問題をめぐる政治混迷の企業・ 消費者心理への悪影響)が景気下押し要因としてくすぶる。一方、中 長期的にはシェールガス革命の果実(エネルギーコストの低減による 産業競争力の向上など)がインフレなき持続的成長に寄与してゆく。

欧州景気は4-6月期より後退局面を脱して緩やかな回復局面へ。 ただし債務危機問題を早期に抜本解決できず引きずってゆくので、事 実上の低迷状態からは抜け出せない。南欧各国で緊縮政策への反発や 憤懣が噴出する場面では、厳しい状況が再発してしまう。グローバル・ マネーフローもしたがって、リスクオフ基調が根強く残存してゆく政 策効果で失速リスクが低下した中国景気は短期的には7.5%成長にソ フトランディングへ。中長期的には労働人口の減少局面入りなどを背 景に減速傾向(成長率のシフトダウン)が続く。

事実上の後退局面にある国内景気だが、その長期化を回避し、今 春以降は緩やかな回復経路へと復帰する。円安傾向と海外景気の持ち 直しを受けた輸出の回復、エコカー減税終了で落ち込んだ自動車販売 の反動増、および今年度の大型補正予算の効果などによる。ただし成 長戦略を欠くため(6月に決定される予定のようだが、具体策、実効 性とも不明)、成長期待の高まりを背景とした国内民需の自律拡大によ る堅調な景気拡大基調までは今のところ期待できない。

したがって、消費者物価についても、緩やかな景気回復に伴う需 給の緩やかな改善(=デフレギャップの縮小)を受け、ごくごく緩や かな脱デフレの動き。日銀の金融緩和強化に脱デフレの即効性は見込 まれない。よって「物価目標2%」が達成されるのは最短で16年度以 降と、事実上メドが立たない状況が続く.

昨年11月から始まった円安の主因はリフレ(脱デフレ)期待の台 頭。日米の物価上昇率格差が先行き縮小するとの思惑を背景に、円の “期待”購買力平価が下落していると考えられる。とすると、円安傾向 の持続性はすなわちリフレ期待の持続性と表裏であり、そのカギはア ベノミクス(=公共事業中心の財政再拡張/事実上無制限の金融緩和/ 未だ中身不明の成長戦略)の実効性が握る。アベノミクスのリフレ効 果が早期に期待どおり表れてくれば円安トレンドは持続し、一方、期 待はずれと失望感を招くと反動で円高に振れる

13)①共同文書の予想される骨子は以下の通り。政府・日銀が緊密に 連携して目指す「物価目標」は2%。目標達成の期限はカレンダーへ のコミットではなく、「中期的に」などと柔軟性を持たせる。目標達成 のための手段の選択は日銀が独立性を持って決めるが、目標達成まで は事実上、無制限に金融緩和を続けるという趣旨に。外為と雇用にも 言及する可能性がある。

一方、政府は金融緩和のリフレ効果を高めるための成長力強化と、 「悪い金利上昇」の引き金となりうる財政ファイナンス懸念を回避す るための財政再建への取り組みをコミットする。つまり政府・日銀の デフレ脱却に向けた“双務契約”という形に。「物価目標2%」は当初は 近年の実績から市場の信認を得られない可能性が高いが、双務契約が 済々と実行されていけば、やがて信認が高まり、アナウンスメント効 果を通じてリフレ期待が胎動する可能性も出てくる。

②資産買入等基金(長期国債と短期国債)の10兆円拡大とオープ ンエンド化。中短期債を中心に需給引き締めを通じた金利低下効果が 見込まれるが、織り込み済みなので追加的な効果は限られる。副作用 は債券バブルを助長するリスクを高めること。追加緩和を行わなかっ た場合の市場の反応は、円高/株安と、それらによる債券高。上記の他 の追加緩和メニューは、今回は想定されない。

③正副総裁の候補者は、山口廣秀日銀副総裁、中曽宏日銀理事、 稲葉延雄リコー経済社会研究所長(元日銀理事)、杉本和行みずほ総研 理事長(元財務次官)、武藤敏郎大和総研理事長(前日銀副総裁、元財 務次官)、渡辺博史国際協力銀行副総裁(元財務官)、黒田東彦アジア 開発銀行総裁(元財務官)、岩田一政日本経済研究センター理事長(前 日銀副総裁)、伊藤隆敏東大教授、竹中平蔵慶大教授等々。

ポスト白川日銀は資産買い入れ等基金を通じた買い入れ対象国債 の年限延長(3年債→5年債)、銀行券ルールの廃止、輪番オペの増額 や買い入れ対象の年限延長(長期債・超長期債に軸足を移すなど)へ と踏み込んでゆく見通し。

●SMBC日興証券の岩下真理債券ストラテジスト 1)今回会合 :追加緩和(基金10兆円)、オープンエンド的文言に 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年度以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%

12)昨年12月会合後発表の11月分の国内指標は生産統計の下げ止ま り、消費の持ち直しと、水準は低いが、この先どんどん悪くなる状況 にはない。年末年始のアネクドータルな話でも、お正月休みの日並び の良さから旅行関係は好調、JRの旅客数も増加、初売り等の百貨店 の売り上げも活況だった。12月の景気ウオッチャー調査(調査期間は 昨年12月25日~31日)では、円高修正と株高に加え、新政権による 経済対策への期待が先行きのマインドを大きく押し上げた。

日本では生産統計の動きから、テクニカルな景気後退局面は短期 終了との見方が強まり、さらには大型補正予算と金融緩和というアベ ノミクスにより、13年度の成長率の押し上げが期待される。海外でも 中国経済の持ち直し、米国が財政の崖を回避したこと等、明るい材料 も増えてきた。足元が「一段と弱含み」の表現では、弱過ぎるだろう。

それでも今年1-3月期の国内指標では、生産統計が季節調整の 歪みにより高めに出やすい時期に当たること、貿易統計では中国の今 年の旧正月が2月(2/9~15)と昨年(1/22~28)からずれること 等により、実勢が読み難くなる要因が重なる点には注意が必要だ。生 産統計は、1-3月期が強ければ強いほど、4-6月期の反動減の可 能性が高まる。

海外では、①中国経済は安定成長への移行期であること②欧州ソ ブリン問題のテールリスクは後退し、欧州経済に安定化の兆しは出て きたとは言え、まだ回復軌道には乗っていないこと③米国では債務引 き上げ問題が残っており、今年も春先から夏への弱気風が吹く可能性 があること等、不確実要因は引続き多い。よって、筆者は今年の世界 経済がL字型(低成長)になる懸念はまだ残ると考えている。

日本のアベノミクスも期待先行であり、外需に力強さが欠ける状 況が長引けば、タイムラグを伴い出る政策効果が想定より弱くなる可 能性がある。円高修正の動きも水準を1年ぐらいキープできなければ、 押し上げ力は小さい(10%程度の円高修正された水準を1年キープで、 コアCPIを+0.2~+0.3%pt程度押し上げる)。一方、過度な円高修 正は日本経済にデメリットとなる部分もある。今後は外交面を含めて、 オバマ米政権のドル円容認水準との折り合いが重要となりそうだ。

13)①各種報道によれば、政府との共同文書では、日銀が中期的な物 価目標2%の導入を明記する一方、政府が成長力強化、財政健全化に 取り組むことも明記する形で、デフレ脱却に向けて日銀と政府の連携 強化を示すことが見込まれる。日銀としては、「目途(めど)」から「目 標」への呼称の変更自体には抵抗感はないようだ。従来も当面が1% であり、その先の2%には距離感があっても、最終目標の水準自体に は違和感はないだろう。また目標達成時期は明示せず、具体的な緩和 手段は日銀に委ねられるならば、金融政策の柔軟性を確保できる。そ の上、政府協力の必要性を明確に示すのならば、受け入れやすい。た だし、日銀の説明責任として、経済財政諮問会議等での報告は求めら れよう。

とは言え、物価目標2%への道程はまだまだ遠い。バブル崩壊後、 CPIの前年比が2%を超えたのは、97年消費税引き上げ時と08年 の資源高騰期しかない。良い物価上昇とは、企業収益の増加から賃金 の上昇が実現した後に生じる必要がある。日本について、賃金上昇率 と失業率でフィリップス曲線を描いてみると、失業率が3%程度まで 低下しないと賃金上昇率が1%程度上昇しないという関係が導き出さ れる。失業率が日銀の金融緩和だけで3%まで低下することは考えが たい。政府による雇用対策(ミスマッチ解消のための規制緩和等)、企 業による雇用慣行の改革(女性やシニア労働力の活用)が必要である。

②政府の緊急経済対策発表と足並みを揃える形で、日銀は追加緩 和を検討すると予想。資産買い入れ等基金の10兆円増額(国債買入れ 主体)に、大胆な金融緩和をアピールするための+αを考えると思われ る。α部分の一つの案としては、オープンエンド的な印象を与える文 言の変更。米連邦準備制度理事会(FRB)のように月々の国債買入 れ金額というフローベースを考えているとは決め打ちできない。

メンバー内にストック重視の考え方が優勢な状況が変わっていな い可能性がある。だとすれば、例えば、「物価目標達成までは、資産買 入等基金の残高を維持する。その後は状況によって残高を見直す」と いうような説明が考え得るだろう。

他の案としては、市場機能へのこだわりの強い白川総裁体制では やらないと考えられた付利撤廃。基金の目標に向けた積み上げに支障 をきたす施策であり、優先順位は低いと思われてきただけに、決定す ればサプライズにはなる。昨年12月に石田委員が提案した付利撤廃に 対して反対多数だったこともあり、メンバー内の調整では0.05%刻み の引き下げなら妥協点になり得るかもしれない。ただし大胆さをアピ ールするには撤廃ありきだろう。今回はなくても次回以降の可能性は 残る。事前観測がいったん強まってしまうと、やらないことが、むし ろ為替に逆に働きかけるリスクがあるとも言える。

③次期総裁候補の本命は武藤敏郎氏、対抗馬は岩田一政氏か。副総裁 候補は、中曽日銀理事、伊藤隆敏氏とみている。基本的には、誰が正 副総裁をやっても日銀が政府と連携してやれることは限られており、 選択される金融政策の中味や手段が大きく変わることはないだろう。 現状の資産買入等基金の枠組みにも限界が近づいており、新総裁の下 で抜本的な見直しに着手すると予想している。違いが出るとすれば、 政策の見せ方もしくはアピール力(発信力)、政権や財務省との交渉面 でのスムーズさ等ではないか。

●みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :追加緩和(10兆円基金増額が柱)、物価2%目標 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年10-12月以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%

12)景気の落ち込みは昨年11月ころで終息し、足元は緩やかに上向き つつある。非製造業は製造業悪化の影響を受けつつも、なお底堅さを 保持している。輸出の緩やかな回復と補正予算による財政出動を原動 力にして、循環的には景気は少なくとも秋にかけて、上向き推移が見 込まれる。ただし、物価については構造的な面からのデフレ圧力が根 強いため、日銀の追加緩和期待や円安進行だけでこれを持続的に打ち 消すのはきわめて困難とみる。

なお、円安局面は来年にかけて続くと予想している。「アベノミク ス」に基づいた期待先行の動きは遅くとも参院選までには一巡するだ ろうが、米景気回復・米国株上昇・日米金利差縮小など海外要因主導 での円売り圧力には持続性があると見ているため。

13)①共同文書には2%の物価上昇率を政府と日銀が連携して目指す ことが明記され、日銀の金融緩和努力とともに、政府の成長力強化・ 財政規律確保の責務についても明記されるだろう。しかし、下向きの 人口動態のゆえに潜在成長率が低下している日本経済に、米欧並みの 物価上昇率を持続的に求めるのは無理のある話。目標実現の可能性は 極めて小さい。

日銀が包括緩和の「時間軸」をどう書き換えるかは難題だが、2% 目標とは切り離して当面は1%の中間目標の実現を目指す形をとるの ではないか(「(1%が)見通せるようになるまで」を「達成されるま で」に書き換える可能性もある)。

②追加緩和は基金の(長期国債および国庫短期証券の)買い入れ 増額10兆円が柱になるだろう。ETFやREITなど信用リスクを伴 う資産の買い入れを14年についてさらに上積みする可能性もある。ま た、米FRBが行っている再投資政策に相当する、買い入れた国債の 償還金を新たな国債に再投資して残高を維持する政策を「無制限緩和」 であると位置付けて導入する可能性が増大しているようである。

なお、市場の一部で観測が強まっている超過準備付利撤廃につい ては、「量」の拡大路線と矛盾すること、12月会合で反対多数で否決 されたばかりであることから、少なくとも白川総裁の任期中は行われ ないだろうと予想している。

●東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト 1)今回会合 :追加緩和 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2016年後半(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%

12)米経済はこれから政府債務上限問題を乗り越えていく必要がある が、金融危機ピークから今年は5年となるため、バランスシート調整 がゆっくりと進みつつある。欧州は低成長が続くが、ユーロ危機に対 するセイフティーネットは貼られている。中国では素材産業などの業 績が都市化推進策の期待もあって改善しており、今年は8%程度の成 長は確保できそうである。世界経済に全般に底打ちムードがあり、日 本の輸出も先行き徐々に回復していくことが予想される。

現状程度の円安は日本経済をサポートするが、輸入価格上昇のデ メリットもある。安定的なデフレ脱却実現のためには、収益が改善し た企業は意識的に賃金・ボーナスを増加させて、「賃金上昇と物価上昇 の適度なスパイラル」を生み出すように努めるべきだろう。

13)①デフレ脱却には政府による成長戦略、構造改革も非常に重要で あるため、共同文書の基本的な枠組みは、実際は10月30日のそれと 似たものになるのではないか。ただし、金融政策にかかるウエートが 今回は前回よりも重めになる。2%インフレ目標は明記されるだろう。 しかし、その実現は金融政策だけでは無理があり、かつ国債価格の安 定を維持する必要もあるため、達成時期は明示されないだろう。

時間軸は、政府は「2%インフレが実現されるまで大胆な緩和策 を続ける」という表現を望んでいるだろうが、日銀はまずは実現可能 性がある1%を達成させ、その後、中長期的に2%が実現できるよう な経済構造を築いていくというニュアンスにしたいだろう。中間のお としどころになるのではないか。

②1月の追加緩和は、資産買い入れ等基金のネット10〜20兆円程 度の増額(長期国債、国庫短期証券が中心。共通担保資金供給オペは 残高を5兆減らして、国庫短期証券へ振り替え。リスク資産増額の可 能性もある)。長期国債の年限は拡大されず、超過準備への付利引き下 げはないだろう。新しい時間軸の条件のもとで、(これまでも実はそう だったのだが)「オープンエンド」的な印象を強調することになるだろ う。将来的には、輪番オペを「日銀券ルール」を維持しつつ、買入対 象を長めの債券を中心にして、資産買い入れ等基金と役割分担させて もよいのではないか。

③有力総裁候補は、岩田元日銀副総裁、伊藤隆敏東大教授、武藤 元日銀副総裁、黒田ADB総裁、副総裁は中曽日銀理事らか。

●JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミスト 1)今回会合 :追加緩和、政府との合意文書 2)利下げ時期 :2013年4月(なし) 3)利上げ時期 :2016年以降(2015年度以降) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.05%(0.00%-0.10%) 6)13年9月末 :0.00%-0.05%(0.00%-0.10%) 7)13年12月末 :0.00%-0.05%(0.00%-0.10%) 8)14年3月末 :0.00%-0.05%(0.00%-0.10%) 9)14年6月末 :0.00%-0.05%(0.00%-0.10%) 10)14年9月末 :0.00%-0.05%(0.00%-0.10%) 11)14年12月末 :0.00%-0.05%

12)補正予算による追加的な景気刺激効果(追加的な建設国債発行額 の5.2兆円)と10%の円安は13年度GDPを0.6%押し上げる。ただ し、CPI前年比押し上げ効果は限定的で+0.1~+0.2%程度。円安で 輸入物価が上昇しても、日本の場合、輸入コスト上昇分は流通段階で かなり吸収され、小売価格を押し上げる力は弱い。

足元の円安は「物価上昇期待」を反映している。今後どこまで期 待をけん引できるかがポイント。政府は参議院選挙まではさまざまな 手段を用いて少なくとも足元の円安期待を維持しようとするだろうが、 その後は未知数。日本にとってのベストシナリオは13年後半に米国景 気が上向き、量的緩和(QE)早期終了観測が高まるケース。米国長 期金利上昇と円キャリートレードの増加から一段の円安化の可能性が 高まる。半面、海外景気が失速するような場合には、リスクオフとな り、円高に逆戻りするケースもありうる。

13)①2%インフレ目標についての日銀と政府の合意。ただし、イン フレ目標達成の期限については明示せず、中期目標に止める。日銀の インフレ目標達成に関する説明責任(経済財政諮問会議への報告)。雇 用の維持拡大は日銀の目標に含まれず。政府の財政規律。2%のイン フレ目標の達成は極めて困難。

日米のインフレ格差が2%強あることを考えると、日本でインフ レ率が2%になると、米国のインフレ率は4%強となるが、FRBは このインフレ率は受け入れられず、金融引き締め策がとられ、米国景 気は減速する。日本にとっては海外需要が減少することを意味するの で、日本の景気にとってはマイナス。需給ギャップが拡大して、イン フレ率は低下、場合によってはデフレに逆戻り。日米のインフレ率格 差が縮小するためには、日本での期待インフレ率が、日本の事情によ って大幅に上昇する必要があるが、あまり現実的な想定ではない。

一方、かなり強引にインフレ率を引き上げるためには、日銀によ る国債引き受けと政府の財政支出増大を継続的に行う必要があるが、 この場合にはインフレ率が急上昇しかねない。その場合には、長期金 利急騰→利払い費急増に伴い、財政破たん懸念高まる。以上をまとめ ると、インフレ率を2%程度に安定的かつ制御可能な形で作り出すこ とは困難。実際には2%のインフレ目標を掲げるも、0.5-1%のイン フレ率で満足する、というのが最もあり得る姿ではないか。これが実 現すれば、デフレ脱出は達成されるので、合格点の内容だ。

②オープンエンドの資産買い入れ。金額は毎月4兆円(内訳は長 期国債2兆円、短期国債2兆円)。この結果、基金の総額は13年末に 115兆円となる(現状の枠組みでは101兆円)。ETFなどは現在の枠 組みを踏襲。石田委員は付利水準引下げを提案する可能性があるが、 今回は実現せず。ただ、この場合、白井委員が賛成する可能性はある。 新総裁が着任する4月会合では付利水準を5bpに引き下げると予測 (ゼロにはしない)。

このほか、4月に国債の年限延長(3年→5年)も実施。日銀が 外債を金融政策目的で購入できる枠組みの変更も4月に併せて実施。 ただし、日銀が直ちに外債を購入するわけではない。将来、大幅な円 高が進んだときの対策の一つとして、予め用意しておくため、との位 置づけ。オープンエンドの国債買い入れが発表されれば、市場は好感 して円安トレンドは維持されるだろう。今回、付利の引き下げ、年限 延長などを実施してしまうと、新総裁が着任する4月以降の追加緩和 手段の選択の幅が狭めされることから、オープンエンドの国債買い入 れに止まると予想。

③麻生財務相が、新総裁の要件として「組織運営力、国際性、健 康」を挙げているが、この要件に合致するのは黒田東彦アジア開発銀 行総裁。黒田氏は以前から日銀の政策に対し批判的で、量的緩和とイ ンフレ目標の重要性を主張されてきたので適任。さらに、元財務官と して為替政策にも精通。日銀が外債を購入することに関し、財務省は 反対し続けてきたが、その説得役としても適任。黒田氏は「無制限金 融緩和」を支持してきたので、日銀のバランスシートの一層の拡大を 含む積極的な緩和政策を打ち出す見込み。市場は好感するだろう。

黒田日銀総裁の場合の副総裁は伊藤隆敏氏と(残りの1名は)日 銀の内部からの昇格者。伊藤氏はインフレ目標を中心に据えた新しい 金融政策の枠組みを理論面から支える役割。ただし、黒田氏が日銀総 裁になることの障害は、アジア開発銀行総裁の後任選び。日本がアジ ア開銀の後任総裁選びに主導権を握れるのであれば問題ないが、そう でない場合には、黒田氏ではなくなる可能性も。黒田氏以外では、岩 田一政氏、武藤敏郎氏、渡辺博氏などが候補。

●第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミスト 1)今回会合 :追加緩和 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年後半以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%

12)甘利経済大臣や石破幹事長の円安けん制発言によって円安は一服。 もっとも、今後、次期日銀総裁の選定が進み、金融緩和に積極的な人 物が金融政策を行うと、13年5月あたりまでは円安は持続するとみて いる。ただし、新しい総裁に替わっても、それほど劇的な緩和効果が 得られないと理解が進めば、円安は80円台前半のレンジまで戻るとみ ている。

13)①麻生大臣の意見が共同文書にどのくらい反映されるかが注目さ れる。2%のインフレ目標が盛り込まれることは既定路線。②インフ レ目標を達成するために、毎月2~3兆円の範囲で長期国債の購入を 行う形で、「無制限の買入」に踏み切るとみられる。ETF、REIT の買入も数千億円の規模であるだろう。

③次期総裁は、岩田一政氏、武藤敏郎氏の両名が本命。副総裁は 財務省出身、日銀出身(あるいは経済学者)で構成される可能性があ る。4月以降は、無制限の買い入れを増やし、インフレの効果が表れ るまで金額を積み増す。付利金利0.1%の撤廃、3年の買入期限の延 長(10年へ)も十分にあり得る。

●BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト 1)今回会合 :追加緩和、物価2%目標、政府との共同文書 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年7-9月以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%

12)安倍政権は運が良い。世界経済は昨年秋を底に、米中を中心に持 ち直しが始まっていた。さらに、為替の需給動向を見ると、原発停止 による化石燃料輸入増大で貿易収支赤字定着が強く意識される中、電 機セクターが国内生産の撤退を加速させ、さらに、製造業、非製造業 を問わず、売り上げ拡大のため、海外企業の買収など資本輸出を積極 化させており、中長期的な為替需給も円高修正と整合的な方向に向か っていた。

デフレ圧力を緩和するには、円安政策が有効であるのは間違いが ない。ただ、通貨外交としての実行可能性の問題がある。2000年代半 ばに円安政策が可能であったのは、世界経済の環境が良好だったため。 当時は日本を除いていずれも好調で、日本の円安政策に対して各国が 寛容であった。しかし現在は、米欧先進国も新興国も成長率が低下し、 各国は外需で内需低迷を補おうとしている。輸出倍増計画を掲げるオ バマ政権が円安政策を受け入れるか、疑問である。

アジア諸国も円安を強く警戒している。日本側でも甘利明経済財 政担当大臣が過度な円安が輸入物価の上昇を通じて国民生活にマイナ スの影響を与えるリスクを指摘するなど、円安が急速に進みすぎるこ とへの警戒感も出始めている。こうした発言の背景には、中小企業に とって90円を超える円安では材料価格が上がって苦しいと、日本商工 会議所の岡村正会頭が最近の講演で述べていることなどがある。ここ から一段の円安を促す政策が出てくる可能性は小さいのではないか。

13)①共同文書では、2年程度の間に、2%のCPIを達成すべく、 政府・日銀が目標を設定。金融政策だけでは不可能だが、アグレッシ ブな財政政策を継続すれば、可能。アベノミクスの本質は、アグレッ シブな財政政策と日銀による金利上昇を避けるためのサポート。最大 の問題は財政規律が大きく損なわれる点。デフレから脱却できても、 低い潜在成長率は変わらず、巨額の公的債務だけが残ったということ になりかねない。財政破綻確率を高めるが、名目成長率の上昇に伴う 名目金利の上昇を日銀のアグレッシブな国債購入で回避した場合、新 たな金融的不均衡(バブル)が発生する可能性がある。

②現在、年率20兆円の資産買入れプログラムによる長期国債の買 い入れを、年率30~40兆円に増額する可能性がある(現在月1.7兆円 をオープンエンド方式で月間2.5兆円~3.3兆円程度に)。買い入れ対 象年限の拡大は5年程度に引き上げ。ETF、J-REITなどリス ク資産についても、政府との共同文書で、損失が発生した場合、政府 が自動的に補てんすることが盛り込まれ、日銀の買い入れ額が増加す る可能性がある。

日銀の現在の拠り所は「財政ファイナンスには手を染めない」と いうものであり、買い切りオペを大幅に増額するとなると、日銀は最 後の拠り所を失うため、ハードルはかなり高い。付利撤廃に関して、 これまで日銀は短期金融市場の機能を損なうという副作用がある一方 で緩和効果は小さいとして否定的な立場を採ってきたため、撤廃その もの実行されないかもしれないが、引き下げはありうる(0.1% →0.05%)。外債購入については、これ以上の円安が進むとその副作用 も発生するため、盛り込まれても、小規模なものに。次期総裁は武藤 敏郎前副総裁、岩田一政前副総裁、黒田東彦アジア開銀総裁。

金融政策ばかりが注目されるが、アベノミクスの本質は、拡張財 政であり、金融政策はあくまでサポート。追加財政は、将来所得の先 食いであるため、日銀のサポートによって金利上昇さえ避けることが できれば、現段階では誰も痛みを感じることはなく、繰り返されるお それがある。政策を中断すると強い痛みが現れるため、政策継続を皆 が求めるようになる。懸念されるのは、こうした財政頼みのモルヒネ 経済化である。株価が上昇し、楽観や高揚感が見られるのは、成長期 待が高まっているのではなく、モルヒネが効き始めたからである。

追加財政を続ければ、名目成長率をかさ上げし、インフレ圧力を 高めることは可能。そうすると長期金利が上昇する。1980年代以降、 日本では政府の資本コストは名目成長率を概ね上回ってきた。長期金 利が上昇を始めれば、公的債務残高はGDPの2倍まで膨らんでいる ため、利払い費の増大から財政赤字や公的債務が膨らみ、財政危機を 引き起こすリスクがある。だからこそ、アベノミクスでは長期金利上 昇を避けるために、日銀による積極的な金融緩和が期待されているの かもしれない。

ただ、国債金利を無理に名目成長率以下に抑え込もうとすれば、 バブルが生じるリスクがある。潜在成長率が相当に低下していること を考えると、われわれにはバブルの後遺症を解決する体力はもはや残 っていない。財政危機、バブルのいずれのケースをたどるにせよ、相 当に危険な賭けのように思われる。わずかであっても一国経済を財政 危機やバブルのリスクにさらすような政策を選択すべきではない。想 定され得る最大損失を最小化するミニマックス原理が、不確実性に直 面する中での経済政策の基本原則ではなかったか。

マネーという特殊な負債を発行することができるため、中央銀行 が財政ファイナンスを行うと、財政危機やバブルといった致命傷につ ながるリスクがある。それを避ける歴史の知恵として、われわれは独 立した中央銀行制度を創設した。法解釈を変更することで、日本では 中央銀行制度を事実上、骨抜きにしようとしている 。もちろん、安倍 政権下では、絶妙のさじ加減で上手く行くのかもしれない。しかし、 一度制度が骨抜きにされると、魔法の杖の存在を信じて、その限界を 試そうとする政治勢力が必ず現れる。民主主義の下でどのような為政 者が選ばれても、最悪の事態を避けるための制度の一つが中央銀行制 度だったはずである。

●東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジスト 1)今回会合 :追加緩和、物価目標と政策協定 2)利下げ時期 :2月までに決定される公算あり(3月までの可能性) 3)利上げ時期 :2016年1-3月以降(同) 4)13年3月末 :0.00-0.05%(同) 5)13年6月末 :0.00-0.05%(同) 6)13年9月末 :0.00-0.05%(同) 7)13年12月末 :0.00-0.05%(同) 8)14年3月末 :0.00-0.05%(同) 9)14年6月末 :0.00-0.05%(同) 10)14年9月末 :0.00-0.05%(同) 11)14年12月末 :0.00-0.05%

12)円安や公共投資の拡大などから、来年度の実質GDPは1.0%台 後半から2.0%程度に回復する可能性が高くなった。一方、米国は増 税や歳出削減の影響から2.0%弱、ユーロ圏はゼロ近傍にとどまろう。 欧州の財政問題は落ち着きを取り戻しているものの、今後、再燃する 公算が大きいと見ている。

円安の主因は積極的な日銀の金融緩和期待にある。いずれにせよ、 人為的円安は基本的に円の反発を招くと考えている。ただし、物価目 標や政策協定はともかく、超過準備に対する付利の引き下げや「資産 買入等の基金」で買い入れる長期国債の年限長期化、「輪番オペ」の増 額などを行えば、その反発を一定に抑え込むことができるかもしれな い。

円安は短期的には輸出企業の収益回復につながるが、これまでの 円高への企業対応や我が国の貿易赤字化などを考えると、以前に比べ て経済デメリットが大きくなっている。加えて、非効率企業の延命に つながり、必要な産業構造の転換が遅れる要因にもある。円安はもち ろん、物価上昇要因だが、所得増加を伴わなければ、購買力が低下し てしまう。今回はこのケースに当たろう。

13)① 詳細を予想することは難しい。「共同文書」では、物価目標の 2%を中(長)期的な目標として明記し、政府も成長戦略などで責任 を負うことを同じく明記しよう。わが国において2%の目標は高過ぎ、 実現可能性に関し、原油価格の急騰など外的ショックを除けば、恒常 的な2%超えは見込めない。したがって、たとえば、「2%達成まで金 融緩和を続ける」などのコミットメントに効果はないと考える。逆に、 現状ではリスクの低い財政ファイナンス懸念が大きくなりかねないな どデメリットがあろう。

② 今回(1月21、22日)も、資産買い入れ等の基金」を10兆円 程度増額(長期国債5兆円、短期国債5兆円、ETFとJ-REIT 若干額)する可能性がある。加えて、今後の具体的な緩和強化のメニュ ーは、(イ)「基金」の増額と期限延長・撤廃、(ロ)付利を0.05%へ引き 下げ、(ハ)政策金利の上限引き下げ、(ニ)「基金」で買い入れる長期国 債の年限を5年まで長期化、(ホ)「輪番オペ」増額などを考えている。 これらに従い、金利低下が円安の持続に資する部分があろう。追加緩 和を行わないと円反発・株価反落が必然である。

③総裁、副総裁の具体名はないが、積極的な金融緩和は新体制で はなく、現体制で決断されると予想している。

●クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト 1)今回会合 :追加緩和 2)利下げ時期 :なし(同) 3)利上げ時期 :2017年以降(2015年度以降) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%

12)海外経済は底打ちしたが、引き続き足踏み的な状況。特に新興市 場国景気に回復感がない。リスクはダウンサイド。米国内需は財政緊 縮を受けて2~5月にかけてある程度減速する可能性があるが、議会 がデットシーリングや歳出削減のハンドリングを誤れば、失速気味に なる可能性も。

国内経済は11月までは堅調だった消費は鈍化しているが、生産・ 設備投資はやや上向き。ただ、持続性は低い。これまでの円安の効果 は13年度の実質GDPを0.2~0.3pp押し上げ。CPIを0.1~0.2pp 押し上げ。米国景気鈍化や米国リスク・イベントの存在からすれば、 向こう3ガ月のレンジは83~91円。

13)①日銀法第4条(政府との関係)には「日本銀行は、その行う通 貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、 それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政 府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」と規定 されており、公的組織としての日銀の独立性には制約があることが示 されている。その意味において、政府の経済政策運営の方向性に日銀 が応じることは当然である。

中期的な物価安定目標2%の採用は政府の意向に日銀が応じるも のであって、日銀主導のものではない。日銀は決定会合後・声明文の 発表と同時での政策協定文の発表を望むはずであり、政府はこれに従 うであろう。2%インフレ目標の達成はあくまで政府と日銀が共同で 責任を負うという発想である。政策協定には①2%の達成は中期的な 目標(達成期限は明示しない)③日銀は金融政策手段における選択の 独立性を確保④日銀総裁はインフレ目標の達成状況を経済財政諮問会 議および国会に対して定期的に報告⑤政府は中期的な財政健全化努力 を維持などが盛り込まれるだろう。

昨年2月14日会合では「中長期的な物価安定の目途」が導入され、 「CPI前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあり、当面は1% を目途とする」とされた。これについては「政府との政策協定を踏ま え、中期的な物価安定目標としてはCPI前年比上昇率で2%を適当 と考える」といった表現に変更されるものと予想される。「中長期的」 は「中期的に」に修正されることになる。

同様に昨年2月14日の会合では「当面、CPI前年比上昇率1% を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策 と金融資産の買い入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進してい く。」とされた。これについては「当面、CPI前年比上昇率2%が見 通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買い入れ 等の措置により、強力に金融緩和を推進していく。」と変更されるもの と予想する。「目指して」という表現は削除されよう。

②金融政策の焦点は、インフレ目標の変更やアコードの締結とい った概念的な部分にあるのではなく、具体的な政策アクションにある。 実際のインフレ率に期待インフレ率が影響すると考えるのであれば、 日銀にとっては、「どのような金融緩和手法・措置が期待インフレ率を 高めるのか」という点に関する議論が最も重要になる(一般論として)。

インフレ目標の引き上げを決定する以上、追加緩和は不可避であ ると考えられる。その際、日銀には2つの選択肢がある。第1の選択 肢は、現行スキームを維持した形での資産買い入れ等基金の増額、と いう従来からの緩和政策の延長腺上の対応を行うというものであり、 第2の選択肢は、資産買い入れ等基金のスキーム変更を含む、何らか の新しい措置を決定するというものである。

第2の選択肢については、①長期国債輪番オペの増額②資産買い 入れスキームの月額購入型・オープンエンド型への変更③買い入れ資 産メニューの拡大(外債ETF、外国株ETFの追加)④当座預金付 利金利の引き下げなどである。インフレ目標を引き上げる以上、また 期待に働きかけようとする以上、第2の選択肢が採用されるべきであ ると考えられ、実際に、第2の選択肢も議論されようが、次回会合に 関しては、最終的には、第1の選択肢が選択され、長期国債5兆円、 短期国債5兆円を軸(株式ETF、J-REITの購入額増額が含ま れる可能性も十分にある)とした資産買入額の増額が決定されよう。

市場は日銀による2%インフレ目標の政府との共有を既にほぼ織 り込んでおり、具体的な追加緩和アクションで基金増額以外のサプラ イズが出てこない限り、反応は限定的になるだろう。なお、仮に2% インフレ目標の共有が先送りされた場合、市場では失望感が広がり、 ドル円相場は一時的に85-86円まで下落するリスクがある。現状では 一連の政策変更の副作用をさほど論じる必要はない。そもそも、イン フレ期待も、実際のインフレ率も上がらないからだ。

③総裁候補は黒田東彦氏、副総裁候補は原田泰氏、雨宮正佳氏。 可能性のある政策は銀行券ルール撤廃、実質的な為替レート・ターゲ ティング。

●信州大学の真壁昭夫経済学部教授 1)今回会合 :追加緩和(基金10兆円増額)と物価2%目標 2)利下げ時期 :当面なし 3)利上げ時期 :2015年下期以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%

12)米国経済は緩やかな回復過程にある。1月の雇用統計では市場予 想と同水準の15.5万人の雇用者数の増加となり、住宅市場の回復も景 気にはプラス材料だ。今後、財政の崖に関する協議の展開が注目され る。また、住宅市場などストック面の回復が、中長期的に持続可能か どうかを見極める必要がある。FRBによる異例の低金利政策へのコ ミットを考えると、今後、米国の債務上限など財政面への極度な悲観 が高まらない限り、当面は相対的に底堅い回復経路をたどるだろう。

ただ、バランスシート調整が終わるまでには、まだ時間を要する とみられる。一方、シェールガス革命のインパクトは、これから一段 と鮮明化するはずだ。それが、どのように米国経済を押し上げるかが 重要なポイントになると見る。

欧州では、景気は依然、後退局面にあると考えられる。ECBの 積極的な政策運営もあり、金融市場においてイタリア、スペインへの 懸念は落ち着きを見せている。欧州首脳からも最悪期は脱したとのコ メントが出ているが、状況によっては、ECBによる利下げなどの追 加緩和が検討されることもあるとみるべきだろう。

新興国経済については、少しずつ明るさが見え始めている。中国 の景気回復に対する期待は高まっている。ただ、12月のCPIは7カ 月ぶりの上昇となり、製作運営にマイナスの影響が出ることも懸念さ れる。また、中東でのイラン、シリア等に加え、フランスによるマリ 空爆など、地政学リスクファクターも増加傾向にあり、原油価格等へ の影響が懸念される。

わが国については、12月20日までの貿易統計は7513億円の赤字 となっており、外需の低迷の影響は景気の足かせになっている。足元 の円安については、日銀によるインフレターゲット設定、さらなる追 加緩和など、アベノミクスへの期待が背景にある。当面、円安傾向が 続くとみられるものの、国内経済にプラス効果が本格的に波及するに は時間が掛かるだろう。今までのところ、アベノミクスに対する市場 評価は好意的である。大規模な公共投資の実施などによって、短期的 にわが国経済は回復過程を歩む可能性は高いだろう。

13)①まず共同文書においては、物価上昇率目標が2%と明記され、 政府、日銀が一体となったデフレ脱却路線が明確になる。既に1月会 合にて想定される決定内容は市場にとっては織り込まれている可能性 が高く、2%のインフレターゲット設定を先延ばしするリスクは政府、 日銀も十分に認識しているだろう。インフレターゲットの設定により、 これまでの政策の内容も、時間軸のさらなる延長や物価上昇へのコミ ットメントが強化される可能性が高まる。今後の金融政策には、政府 からさらなる要求が多く反映されることになるだろう。

②共同文書を背景に、今回の会合では追加緩和策も決定されると 考えられる。おそらく、12月の会合同様、10兆円規模の増額になるの ではないか。それ以降も、デフレ脱却に向けて買い取りの増額が断続 的に行われる可能性が高い。その中、買い取り対象国債の年限の拡大、 買い入れのオープンエンド方式への変更など、想定しうる方策も導入 される可能性が高いと考えられる。

問題は、こうした断続的な緩和策の実施が、市場の自律機能を損 なう懸念だ。市場が本来の自立機能を失うことは、中長期的に見ると、 金融政策の有効性を損なうことも考えられる。政府の日銀に対する圧 力が高まる中、そうした金融緩和策の副作用を考えておく必要がある だろう。

③総裁:武藤敏郎氏(元日銀副総裁)、副総裁:岩田一政氏(元日 銀副総裁)。新総裁下での金融政策は、より政府との協働を意識したも のになるだろう。アコードが正式に締結されるかは別としても、今後 の日銀による金融政策は、実質政府との協働によって進められていく ものと見る。

●野村証券の松沢中チーフストラテジスト 1)今回会合 :物価2%目標、基金のオープンエンド化 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2016年1-3月にレンジ停止(右記15年7-9月) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%

12)景気ウオッチャー調査、鉱工業生産計画などから見て、景気は今 年1-3月に後退局面の谷を迎える可能性が高い。4―6月から補正 予算や消費税上げ前の駆け込み消費で景気は再加速。経常収支と長期 資本収支のバランス、金融政策の方向感など、円安を持続させる要因 はかなり強固。円安の輸入品を通じたインフレ押し上げ効果は近年落 ちてしまっている。むしろ円安→企業業績回復→投資拡大→需給ギャ ップ縮小の経路の方がインフレ改善に重要。

13)①2%インフレ目標には特に法的拘束力を付けず、期限も設定し ない。②基金買い入れをオープンエンド化、月々の買い入れ額は現状 で想定される13年中の月2.2兆円よりも増やし月2.5兆円とする。国 債以外はオープンエンド化しないと見ており、ETF・REITで13 年末までに5000億円積み増し。サプライズがあるとすれば、輪番オペ の年限枠の撤廃。③オープンエンド化後は、月々の買い入れペースの 増減により金融緩和度合いを調整。随時ETF・REITの買い入れ を決定。政府主導の外債ファンドへの資金融通(レポ)。

●シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト 1)今回会合 :追加緩和(基金10兆円)、付利金利0.05%に 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2016年以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%

12)国内景気は昨年11月に底を打った可能性が高い。この点は、12 月と1月の製造工業・生産予測指数の反発、景気ウオッチャー・現状 判断DIの2カ月連続の上昇等からうかがえる。この重要な背景とし て、グローバルな製造業サイクルの持ち直しが指摘できる。今後はこ こ2カ月ほどの円安ドル高と緊急経済対策の効果(後者は一時的なも のだが)も加わることで、景気の持ち直しが徐々に鮮明になろう。13 年度のGDP成長率は2.2%を予想する。

ただ、こうした中でも、コアCPIの前年比マイナス幅は目先、 拡大する可能性が高い。これはエアコンとテレビの押し上げ効果が、 値上がりから1年が経過しはく落するため。テクニカルな要因ではあ るが、インフレ率の明確なプラス転化へのハードルを高めることにな ろう。13年度のコアCPIは前年比0.0%を予想する。

過去2カ月ほどの円安ドル高は13年のGDP成長率を0.3%程度 押し上げよう。ただ、「食品・エネルギーを除くCPI」に対するイン パクトは1年目で0.1%程度、2年目で0.15%程度にとどまると試算 される。常識的な円安ドル高だけで(2%はもちろん)1%のインフ レ率を実現することも困難であろう。インフレを飴細工のように簡単 に操れるかのような議論が多すぎる。

為替市場関係者の間では、中央銀行のバランスシートの拡大ペー スに対する注目度が高いように見受けられる。13年には日銀のバラン スシートがFRBよりも速いペースで拡大するとみられ、その場合、 さらなる円安ドル高が進む可能性が高いだろう。また、米国では緊縮 財政の影響が一巡すれば、景気は着実に加速するとみられ、これもド ルを押し上げると予想される。

13)①2%の物価上昇率を「中期的な」目標として設定するとみられ る。物価上昇率目標の具体的な達成期限は示さず、「中期的」といった 表現にとどめる可能性が高い。具体的な文言は、「中期的に消費者物価 の前年比上昇率2%を目指して、強力に金融緩和を推進していく」と いったものになろう。一方、成長力底上げ(成長戦略)、財政規律に関 して、政府の役割を書き込むことで、日銀の顔もある程度、立てるこ とになるのではないか。

2%のインフレ率が予想可能な近未来に達成される可能性は低い。 うがった見方をすれば、新政権もそれが可能とはみておらず、非現実 的に高い物価目標を設定させることで、その間、国債の大量購入を続 けさせることに新政権の真の狙いがあるのではないか。

②まず、資産買い入れ等基金の約10兆円増額を見込む(内訳は長 期国債で4~5兆円、国庫短期証券で5兆円)。ただ、これだけだと従 来の延長線上の措置という印象を与えよう。政府の圧力が強まる中、 何らかの「新しさ」を演出することを迫られるのではないか。こうし た点から、超過準備に対する付利金利の5bpへの引き下げを予想する。

資産買い入れをオープンエンド化し、フロー(月次)の国債買入 れ額を示すといったオプションも否定は出来ない。ただ、その場合、 現在の残高ベースの枠組み(13年末で残高101兆円を目指すというよ うな)は放棄されることになり、中央銀行のコミットメント(約束) という観点から望ましくないと判断される可能性が高い。一方、「資産 買入れを期限を区切らずに続ける」と宣言する選択肢はあるが、この 点は既に市場に織り込まれているように思われる。

輪番オペの拡大には論理的な飛躍があるように思える。金融緩和 のための枠組みは資産買い入れプログラムであり、輪番オペではない。 また、大型補正予算の発表の直後だけに、輪番オペ拡大の可能性は低 いと判断される。今回の追加緩和では「新しさ」を演出する必要があ ろうが、巷間言われている政策オプションには一長一短があり、結果 的に、付利引き下げが妥協点になるとみている。市場機能の維持に配 慮しつつ、金利の引き下げ余地を極限まで追及したとのアピールが可 能性になるのではないか。

③政治情勢が不透明なため、現時点では決め打ちは困難である。 ただ、誰が総裁になっても、より長い年限の国債をより大規模に購入 することが大きな方向感になるとみている。

●バークレイズ証券の森田長太郎チーフストラテジスト 1)今回会合 :追加緩和(国債購入拡大) 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2016年以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%

12)株価上昇を受けて景況感の改善がまず先行して起こっている状況。 グローバルには10月ないし11月ころから循環回復の動きが始まって いるが、12月の輸出統計からその動きが反映され始めるかどうかが注 目されるところ。ただし、グローバル景気も米国指標は足元で早くも 製造業データが鈍化する兆しも見えるなど、底打ちはしても成長ペー スはかなり鈍いものにとどまるのではないか。

日本の場合、円安による輸出企業の収益回復は確実ではあるが、 数量ベースの輸出への影響が表れるには相当なラグがある。外需その ものの回復ペースに加速感が生じない状況が続けば、輸出主導での景 気浮揚には限界があるだろう。円安の物価への影響も通常の経済モデ ルで弾かれるような数値からすれば、10円の円安ではCPI上昇率を 1%に押し上げることも困難。

そもそも、為替変動はそれが一回限りのものであれば、2年程度 かけて影響が一巡してしまえば、CPI上昇率は再び元の水準に戻っ てしまう。毎年10円ペースでの円安を実現してゆくということになる と、為替介入措置も必要になってくると見られる他、米国などからの 反発も相当高まってくるだろう。

13)①2%目標を共同文書で明示することはダン・ディールだろう。 物価安定の目処という用語は使わずに、目標と置き換えるものと見ら れるが、達成時期の明示は避けるものと思われる。未達成に対するペ ナルティが設定されず、国会への報告義務だけであれば、それ自体で 大きな副作用があるとは思えないが、CPIが1%程度に達したとし ても、その時点でもまだ金融緩和強化を求められてくるという構図は 異常である。

②資産買い入れ基金と輪番オペの一部を統合するような形で国債 購入スキームの見直しを行う可能性がある。結果的に、短期金利との スプレッドが殆どなくなりつつある中短期債ではなく、より長い年限 の国債の購入を増やすようなスキームを検討するのではないか。付利 の引き下げはメリットよりデメリットの方が大きく、1回限りの措置 となるので、実施しないのではないか。

③与党は財務省OBを推し、野党に官僚出身者を敵視する政党が あるという現状では、財務省OBの中でも積極金融緩和論者、という ところで妥協が目指されるのではないか。その文脈で黒田元財務官が 有力候補だろう。副総裁候補は雨宮日銀理事や伊藤隆敏氏など。

日銀の現実的な金融緩和オプションとしては国債購入政策の拡充 以外にはないわけなので、新総裁が行う金融緩和も本質的には現在日 銀が取り組もうとしている政策の延長線上のものとなるはず。ただ、 政策の強度ということで言うならば、同じ国債購入でも、新総裁の緩 和姿勢が強ければ強いほど、より長い年限の国債購入に動くはずであ り、株式やREITといったリスク資産購入拡大のペースも高まるか もしれない。

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