物価目標2%明示へ、実現には懐疑の声-追加緩和も、22日の日銀会合

日本銀行は21、22日開く金融政策決 定会合で、政府との共同文書で中期的な物価上昇率目標として2%を掲 げると同時に、2会合連続の追加緩和に踏み切るとみられている。もっ とも、2%の物価目標の実現可能性については、多くのエコノミストが 疑問を投げ掛けており、金融政策の信認が問われる可能性がある。

ブルームバーグが有力日銀ウオッチャー13人を対象にした調査で、 全員が2%の物価目標の設定と、資産買い入れ等基金の増額など追加緩 和が行われると予想した。追加緩和に踏み切れば過去5カ月で4度目。 2会合連続は2003年5月以来となる。東短リサーチの加藤出チーフエコ ノミストは同基金の10-20兆円増額を予想している。

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「共同文書 に2%の物価上昇率を政府と日銀が連携して目指すことが明記され、日 銀の金融緩和努力とともに、政府の成長力強化・財政規律確保の責務に ついても明記される」とみる。しかし、「下向きの人口動態のゆえに潜 在成長率が低下している日本経済に、米欧並みの物価上昇を持続的に求 めるのは無理がある。実現可能性は極めて小さい」という。

日銀は昨年2月14日の会合で、消費者物価指数の前年比で2%以下 のプラス、当面1%を目途(めど)とする「中長期的な物価安定の目 途」を公表。当面1%を目指して、それが見通せるまで実質的なゼロ金 利政策と資産買い入れ等基金などにより強力な金融緩和を推進すると表 明した。2%の物価目標の導入を求める安倍晋三首相に応え、白川方明 総裁は今会合で物価安定のめどを見直す姿勢を示していた。

異常な構図

バークレイズ証券の森田長太郎チーフストラテジストは「2%目標 を共同文書で明示することはダン・ディール(確定事実)だろう。『物 価安定のめど』という用語は使わず、『目標』に置き換えると見られる が、達成時期の明示は避ける」と予想する。

しかし、バブル崩壊後、消費者物価の前年比が2%を超えたの は1997年の消費税率引き上げ時と2008年の資源高騰期しかない。森田氏 は「未達成に罰則は設定されず、国会への報告義務だけであれば、それ 自体で大きな副作用があるとは思えないが、消費者物価が1%程度に達 したとしても、その時点でもまだ金融緩和強化を求められてくるという 構図は異常だ」という。

シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは「2%のイン フレ率が予想可能な近未来に達成される可能性は低い」と指摘。その上 で「うがった見方をすれば、新政権もそれが可能とはみておらず、非現 実的に高い物価目標を設定させることで、その間、国債の大量購入を続 けさせることに真の狙いがあるのではないか」とみる。

時間軸も書き換え

2%の目標達成に向けて日銀がどのような施策を打ち出すかも注目 される。まず、「当面1%を目指して、それが見通せるまで強力な金融 緩和を推進していく」と約束している時間軸の書き換え。上野氏は「ど う書き換えるかは難題だが、2%目標とは切り離して当面は1%の中間 目標の実現を目指す形をとるのではないか」と予想する。

加藤氏は「政府は『2%インフレが実現されるまで大胆な緩和策を 続ける』という表現を望んでいるだろうが、日銀はまずは実現可能性が ある1%を達成させ、その後、中長期的に2%が実現できるような経済 構造を築いていくというニュアンスにしたいだろう」と指摘。新たな時 間軸は、現在の「1%を見通せるまで」と「2%が実現されるまで」の 「中間が落としどころになるのではないか」とみる。

緩和の具体策について、SMBC日興証券の岩下真理債券ストラテ ジストは基金の10兆円増額に加え、大胆な金融緩和をアピールするため の「プラスアルファ」を予想。「1つの案としては、オープンエンド的 な印象を与える文言の変更だ。メンバー内に残高重視の考え方が優勢な 状況が変わっていない可能性があるので、『物価目標達成まで基金の残 高を維持する』というような説明が考えられる」という。

付利の撤廃は見送りか

石田浩二審議委員が昨年12月20日の会合で提案したことをきっかけ に、現在0.1%の当座預金に対する付利が撤廃されるのではないかとの 思惑も強まっている。白井さゆり審議委員も16日公表された講演の要旨 で「米国など他国との金利差をもたらすことで為替相場を円安方向に後 押しする効果が期待される」と指摘した。

しかし、JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは「今会 合で付利の引き下げや、基金における買い入れ対象国債の年限延長など を実施してしまうと、新総裁が着任する4月以降の追加緩和手段の選択 の幅が狭まることから、オープンエンドの国債買い入れにとどまる」と みている。

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◎利上げ予想時期は次の通り(敬称略)

【2015年4-6月以降】SMBC日興証券の岩下真理債券ストラテジス ト

【2015年7-9月以降】第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミス ト、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト、信州大学の真 壁昭夫教授

【2015年10-12月以降】みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノ ミスト

【2016年以降】三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債 券ストラテジスト、東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト、JPモ ルガン証券の菅野雅明チーフエコノミスト、東海東京証券の佐野一彦チ ーフストラテジスト、クレディスイス証券の白川浩道チーフエコノミス ト、野村証券の松沢中チーフストラテジスト(レンジ誘導停止)、シテ ィグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト、バークレイズ証券の森 田長太郎チーフストラテジス ト============================================================= 無担保コール翌日物金利の予想は以下の通り(敬称略50音順)

                      13   13   13   13   14   14   14   14
           3末 6末 9末 12末 3末 6末 9末 12末
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調査機関                13   13   13   13   13   13   13   13
中央値                 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
最高                   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
最低                   0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05
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三菱UFJ・MS 石井      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
SMBC日興証 岩下       0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
みずほ証 上野          0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
東短リサーチ 加藤      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
JPモルガン証 菅野         0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05
第一生命経研 熊野      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
BNPパリバ証 河野     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
東海東京証券 佐野   0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05
クレディS証 白川      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
信州大 真壁            0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
野村証 松沢            0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
シティG証 村嶋        0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
バークレイズ証 森田       0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10

(注)無担保コール翌日物金利の予想の0.10%は政策金利「0.0 -0.1%」の現状維持。アンケート回答期限は17日午前8時。「日銀サ ーベイ」金利予想、経済・物価情勢、金融政策の展望コメントを18日朝 に送信しました。ブルームバーグでは、回答者を拡大したサーベイも実 施しています。

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