円全面高、過度の円安進行を警戒-対ドルで一時87円台後半

東京外国為替市場では、円が主要16 通貨に対して全面高の展開となった。政府当局者から過度の円安進行が 家計と一部の企業に与える悪影響が指摘される中、一段の円売りへの警 戒感が強まる格好となった。

円は対ドルで朝方に付けた1ドル=88円87銭を下値にじりじりと水 準を切り上げ、午後1時すぎには一時87円95銭と、4営業日ぶりの高値 を付けた。午後3時45分現在は88円15銭付近で推移。円は対ユーロでも 一段高の展開となり、一時は1ユーロ=116円87銭と4営業日ぶりの水 準まで円高が進み、同時刻現在は117円17銭付近で取引されている。

JPモルガン・チェース銀行債券為替調査部の棚瀬順哉チーフFX ストラテジストは、今までの円安・株高の進行ペースが相当速かったの で、「調整がいつ入ってもおかしくない状況だった」と言い、甘利明経 済再生担当相の発言を受けて明確に円高が加速したと説明。自民党の石 破茂幹事長が衆院選の後に望ましいと発言した85円-90円のレンジの上 限に近づいたタイミングで、甘利経済再生相が「トークダウン」した形 になり、しばらくは90円が意識されやすいと言う。

ただ、棚瀬氏は、石破幹事長の指摘した相場レンジが自民党内でコ ンセンサスになっているかは分からないとし、もう1回90円に近付いた ところでどのようなコメントが出てくるか注目する必要があると指摘。 また、レンジ下限の85円に近付けば、「逆のコメントが出てくる可能性 もある」としている。

麻生太郎副総理兼財務相はこの日、被災3県の金融機関との意見交 換会で、ここ1カ月の円安・株高は安倍晋三政権への市場の期待を反映 していると語り、長引く円高・資産デフレ不況からの脱却を目指すと述 べた。

「過度な円安」を警戒

甘利経済再生相は15日の閣議後の会見で、「過度な円安になれば、 今度は、輸入物価に跳ね返ってくる」と指摘し、輸出に追い風でも「国 民生活についてマイナスの影響も出てくる」との認識を示した。また、 日本経済新聞(電子版)によると、石破自民幹事長は16日、経団連幹部 との会談の席上で、このところの円安進行について、「産業によっては 困る企業も出てくる」と述べた。

外為オンライン情報サービス室の佐藤正和顧問は、ドル・円は90円 という節目を前にしたタイミングで国内当局から円安が家計に与える影 響を懸念する発言が出たということで利益確定の円買いにつながったと し、「本格的な調整」が入るきっかけになる可能性があると指摘。来週 の日銀会合や日銀総裁人事も含めて、基本的な円安の流れは変わらない としながらも、足元は行き過ぎた動きが調整されて、「急速な円の買い 戻し」になっていると説明している。

一方、安倍首相は15日、内閣官房参与の浜田宏一米エール大学名誉 教授ら学識経験者と金融政策について意見交換した。加藤勝信官房副長 官が会談後、記者団に明らかにしたところによると、会合では政府・日 銀による共同文書作成を前提に協議され、参加者からは大胆な金融緩和 を求める意見が出たという。

NHKの報道によると、甘利経済再生相は21、22日に開かれる日銀 の決定会合に自ら出席し、政府として経済成長の実現に総力を挙げる方 針を伝えるとともに、大胆な金融緩和への取り組みを日銀に要請する意 向を固めたという。

みずほ証券の鈴木健吾FXストラテジストは、ドル・円は引き続き 上値トライのトレンドにあるものの、昨年終盤からの円安進行がかなり 急激で、短期的には「いつ調整局面に入ってもおかしくない」と指摘。 注目の日銀会合を来週に控えて、ここまで期待先行できたため、期待が 現実になるタイミングでは「失望や出尽くし」といったことにもなりや すく、2%のインフレターゲットの導入や何らかの量的緩和がほぼ織り 込まれている状況の中、「サプライズやサプライズを期待させるような 材料が手前で出てこないと、ちょっときついかもしれない」と話す。

ユーロ高けん制発言

欧州では、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のユンケル議長 (ルクセンブルク首相兼国庫相)が15日、ユーロ相場について、「危険 なほど高い」水準にあると発言している。

また、ドイツで発表された2012年の国内総生産(GDP)が前年 比0.7%増と、11年の同3%増から大幅に鈍化した。ユーロ・ドル相場 は海外市場で一時1ユーロ=1.3264ドルと、2営業日ぶりの水準まで急 速にユーロ安が進み、東京市場も1.32ドル台後半で取引されている。

三井住友信託銀行ニューヨークマーケットビジネスユニットトレジ ャリーチーム主任の高橋健氏(ニューヨーク在勤)は、海外市場のユー ロ相場について、独GDP統計の内容が重しになっていたところにユン ケル議長の発言がきっかけとなって下げ幅を拡大する格好になったと説 明。今月10日の欧州中央銀行(ECB)理事会の結果を受けた利下げ期 待の後退がユーロ堅調につながっていたが、今後は金融政策の判断材料 となる指標や、高官発言などに影響される展開になるとみている。

--取材協力:小宮弘子,大塚美佳. Editors: 青木 勝, 崎浜秀磨

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