円が対ドルで10年6月以来の安値付近から反発、甘利発言で88円台後半

東京外国為替市場では円が対ドルで 前日に付けた2010年6月以来の安値付近から反発。甘利明経済再生相が 過度な円安の弊害に言及したことを受け、円の買い戻しが活発化した。 取引の前半は日本銀行の金融緩和強化期待や日銀総裁人事をめぐる思惑 を背景に円売り優勢の流れとなっていた。

ドル・円相場は1ドル=89円48銭前後で東京市場を迎えると、午 前10時すぎには89円63銭と、14日に付けた10年6月25日以来のドル高・ 円安水準(89円67銭)に接近。その後、甘利再生相の発言が伝わると円 買いが強まり、正午すぎには一時10日以来の水準となる88円63銭まで円 高が進んだ。午後の取引でも欧州市場に向けて再び円買いが強まる展開 となった。

一方、安倍晋三首相はこの日、有識者らと金融政策について意見交 換したが、4月に任期を迎える日銀の白川方明総裁の後任人事について 具体的な話はなかった。

大和証券投資戦略部の亀岡裕次チーフ為替ストラテジストは、日本 の政策期待と世界的なリスク選好により円安が進んできたが、「政策期 待による部分に関してはいったん終わりに近づいているのではないか」 と指摘。日銀の金融政策決定会合が開かれる来週以降は材料出尽くしと なり、「調整局面がくる可能性がある」と話した。

ユーロ・円相場は前日に1ユーロ=120円13銭と11年5月4日以来 のユーロ高・円安水準を付けたが、この日の東京市場では120円近くま で円安に振れた後、一時118円半ばまで円買いが進行。欧州市場に向け てはさらに値を切り下げ、一時118円28銭を付けた。ユーロ・ドル相場 は午前に1ユーロ=1.3394ドルと前日に付けた昨年2月末以来のユーロ 高・ドル安水準(1.3404ドル)付近までユーロが強含んでいたが、対円 でのユーロ売りが波及し、一時1.3339ドルまで値を切り下げた。

甘利発言

甘利再生相は15日の閣議後会見で、為替市場で円安が進んでいるこ とについて「過度な円安になれば、今度は、輸入物価に跳ね返ってく る」と指摘し、輸出に追い風でも「国民生活についてマイナスの影響も 出てくる」との認識を示した。

クレディ・アグリコル銀行外国為替部ディレクター、斎藤裕司氏は 「ドル・円相場は高所恐怖症という状況の中、甘利氏の発言で外人の円 買いを誘った」と説明した。

一方、安倍首相はこの日、内閣官房参与の浜田宏一エール大学名誉 教授ら学識経験者と官邸で昼食を取りながら会談した。加藤勝信官房副 長官によると、会談では政府・日銀による共同文書作成を前提に意見聴 取し、参加者からは大胆な金融緩和を求める意見が出たという。安倍首 相は13日のNHK番組で、白川総裁の後任には大胆な金融緩和を実行で きる人が望ましいとの考えを示し、15日に浜田教授らから意見を聞くと 述べていた。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作シニア為替・債券 ストラテジストは、日銀の次期総裁人事に関しては、「安倍首相が選ぶ からには、大胆な金融緩和に協力的な人物が選ばれるとの見方がある」 と指摘。実際に人事が発表された後は材料出尽くし感が出る可能性もあ るが、「アベノミクスによる円安観測」は底流に残ると話した。

白川総裁はこの日、支店長会議であいさつし、デフレからの早期脱 却が極めて重要な課題であるとの認識を示した上で、強力な金融緩和を 間断なく推進していくと述べた。日銀が同日午後に公表した地域経済報 告(さくらリポート)によると、昨年10月の前回調査に続き、全国9地 域のうち8地域が景気判断を下方修正した。

--取材協力:三浦和美,大塚美佳. Editor: 崎浜秀磨

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