円が対ドル2年半ぶり安値、デフレ対策期待や経常赤字で売り

東京外国為替市場では、円が対ドル で約2年半ぶりの安値を付けた。安倍晋三政権が日本銀行と連携して強 力にデフレ脱却を目指すとの期待感を背景に円の下値を探る展開となる 中、経常収支の悪化が円売りを後押しした。

ドル・円相場は朝方に一時1ドル=89円35銭と、2010年6月29日以 来の水準まで円安が進んだ。その後はやや円売りの動きに一服感が生 じ、午後の取引にかけて89円ちょうどを挟んでの展開が継続。午後3 時50分現在は88円93銭付近で推移している。また、円は対ユーロで一時 1ユーロ=118円59銭と、11年5月5日以来の安値を更新。同時刻現在 は117円85銭前後で取引されている。

IGマーケッツ証券の為替担当アナリスト、石川順一氏は、欧州情 勢の落ち着きを背景に海外市場がリスクオン(選好)に転換したことが 円安基調の根底にあるとした上で、国内経常赤字が円売りに拍車を掛け たと指摘。目先は日銀の金融政策決定会合で2%の物価目標と予想以上 の緩和継続姿勢が示されるかが注目されるとし、国内の材料は引き続き 期待先行で「円売り要因として働きやすい」としている。

一方で、石川氏は、金融緩和策だけではなく、中長期の潜在成長率 を高めるための戦略や財政規律など安倍政権の政策実行力も市場が注目 する中、「急ピッチで進んだ円安の調整が入る局面もあり得る」と言 う。ドル・円相場の相対力指数(RSI、期間14日)はドル買い・円売 りの行き過ぎの目安となる70を超えて推移している。

政府・日銀のデフレ対策期待強まる

朝方に発表された昨年11月の経常収支は10カ月ぶりに赤字に転落 し、赤字額は2224億円と、ブルームバーグ・ニュースがまとめた市場予 想の171億円を大きく上回った。

JPモルガン・チェース銀行債券為替調査部の棚瀬順哉チーフFX ストラテジストは、経常収支について「円に対する地合いが悪い中で、 こうした数字が出れば、円売りに反応しやすく、実際円売りも進んでい る」と指摘する。

一方、政府はこの日午前の閣議で、事業規模20.2兆円の緊急経済対 策を決定。日銀による大胆な金融政策と政府による機動的な財政政策、 民間投資を喚起する成長戦略の「3本の矢」によって、「日本経済を大 胆に再生させ、強い経済を取り戻すことに全力で取り組む」と強調し た。

安倍首相は対策決定後の記者会見で、「デフレ・円高からの脱却の ために政府・日銀の連携による大胆な金融政策が不可欠だ。併せて日銀 が供給したお金を使うことが必要だ」と強調した。

そうした中、日銀は21、22日に開く金融政策決定会合で、安倍首相 が求める2%の物価目標を導入するのに合わせて、14年度の物価上昇率 見通しを1%前後に上方修正することを検討している。同会合で行う 「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の中間評価でこうした見通 しを示す見通し。関係者への取材で明らかになった。

11日付の読売新聞は、日銀が今回の決定会合で2%のインフレ目標 を設定するとともに、その達成が見通せるまで金融緩和を続けることを 検討すると報じている。

外為どっとコム総合研究所のジェルベズ久美子研究員は、政府の日 銀に対する追加緩和の要求姿勢を背景に、「金融政策決定会合が終わる までは円高が進みにくい」と指摘。さらに、市場参加者の「脊髄反射」 が安倍首相の発言で円売りという方向に向いている状況下で、大幅な経 常赤字という材料が加わり、「円を売るしかない」というムードになっ たと説明している。

--取材協力:小宮弘子,大塚美佳. Editors: 青木 勝, 山中英典

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE