ECB利下げ遠のく,総裁は「プラスの伝染」指摘-年内回復へ

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総 裁は10日、ユーロ圏の国債市場が3年にわたる混乱を脱し安定するに伴 い、域内経済が今年、徐々に健全性を取り戻すとの見通しを示した。

同総裁は政策決定後の記者会見で、「分断状況が緩やかに修復され つつある兆候がある」と述べた。ECBはこの日、政策金利を過去最低 の0.75%に据え置いた。総裁は「事態が悪い時に伝染ということがしば しば口にされたが、良くなる時にはプラスの伝染というものがあると思 う」と語った。

2010年に入ってからユーロ圏を揺るがしてきた危機は、収束の兆し を見せている。国債を無制限に購入するECBの計画とユーロ圏17カ国 の統合深化に向けた政治的進展が、共通通貨圏が崩壊するとの懸念を後 退させた。

総裁はECBの措置が経済に浸透するに伴い、今年中に「緩やかな 景気回復が始まる」との見通しを示した。

スペイン10年債利回りはこの日、昨年3月以来で初めて5%を下回 った。ユーロは円に対して2011年7月以来の高値を付けた。

スピロ・ソブリン・ストラテジーのマネジングディレクター、ニコ ラス・スピロ氏は電子メールで、「ユーロ圏の金融環境の劇的な改善が ECB政策委員会に強力な影響を及ぼしている」とし、「センチメント の改善が最終的には実体経済に浸透していくことを期待してECBは様 子見の姿勢だ」と指摘した。

勝利宣言は時期尚早

ドラギ総裁は危機封じ込めの成功を宣言するのは時期尚早だとも戒 め、景気見通しへのリスクは「下向き」で、バランスシート調整も必要 だとし、「根強い不透明感」が成長の重しとなっていると分析した。

それでも、総裁は最近数カ月の金融市場の改善点を挙げ、ECBの 措置が鎮静化に寄与したと述べた。「国債利回りとクレジット・デフォ ルト・スワップ(CDS)スプレッドは大幅低下」し、「株式相場も上 昇し、ボラティリティは歴史的低水準だ」と説明した。

総裁はまた、改善兆候を受けて政策委員会には物価安定の見通しを 変更する理由がないとし、金利据え置き決定は全会一致だったと明らか にした。

「インフレ率は今年中に一段と低下し2%を下回るだろう」とした 上で、インフレ見通しへのリスクは「おおむね均衡」していると付け加 えた。

「全体を見渡せば、金融市場環境に大きな改善が見られ、幅広い市 場の指標が安定化している」とも述べた。

政府に行動継続促す

ベレンベルク銀行のシニアエコノミスト、クリスチャン・シュルツ 氏は「景気回復の勢いまたはタイミングが期待外れにならない限り、利 下げが今年実施される公算はますます小さくなっている」と指摘。回復 については、物価上昇圧力への不安を呼ぶほどに強くも速くもないと付 け加えた。

ドラギ総裁はまた、ユーロ圏の高失業率にも触れ、競争力回復と失 業解消への構造改革に政府が一貫して取り組む必要があると強調。政治 指導者らが改革を実践しない限り、欧州債務危機は去らないと警告し た。「表れ始めている効果はECBの行動のみによるものではなく、政 府の行動によるものだ」と語った。

原題:Draghi Hails ‘Positive Contagion’ as Euro Markets Stabilize (1)(抜粋)

--取材協力:Gabi Thesing、Jana Randow、Stefan Riecher、Mark Deen、Jennifer Ryan、Patricia Lui.

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