映画「レ・ミゼラブル」の監督、主人公に父の姿重ね涙

2010年製作の映画「英国王のスピー チ」でアカデミー監督賞を受賞したトム・フーパー監督(40)が新作の ミュージカル映画「レ・ミゼラブル」で歌唱力はまちまちながら、きら 星のごとく輝く俳優陣の名演を指揮している。

「レ・ミゼラブル」は一切れのパンを盗んで入獄したジャン・バル ジャンの生涯を描く19世紀フランスの長編小説を映画化。主人公のバル ジャン役のヒュー・ジャックマンの歌唱力は見事だが、バルジャンを執 拗(しつよう)に追う警官、ジャベール役のラッセル・クロウをはじめ 他の俳優たちの歌唱力はジャックマンほどではない。

ロンドンのホテルの一室でフーパー監督にインタビューした。監督 は英オックスフォード大学卒。青いベルベットのブレザーがよく似合っ ている。歌手ではない俳優たちを配役した理由について尋ねた。

「かなりの数の人々のオーディションをしたが、最も難しいのはフ ィルムカメラでのクローズアップに堪え得るかどうかだ。映画スターが 映画スターであるのには理由がある。それは、カメラに映し出された時 に並外れて人を引き付ける魅力であり、映画スターでない人々にはない ものだ」

フーパー監督はソフトウエアを使って録音の質を高めようとしたが 「常に欠陥があった」。そこで、「生の音声」を残すことにした。

バルジャン役はオーストラリア出身のジャックマン以外には考えら れなかった。監督はジャックマンのテノールの声や映画とミュージカル でのキャリア、肉体的スタミナ、そして「優しさと思いやり」を挙げ 「ヒューがいなければ、この映画を製作しなかっただろう」と振り返 る。

警官役のジャベールには「観客がこの男なら打ち負かすことができ ると感じられるような誰かを必要としていた。ラッセルはそのような力 を秘めた数少ない俳優の一人だ」。

革命のような映像

バルジャンの死のシーンを見ると、自分の作品なのに涙が出ると監 督は打ち明ける。「なぜ泣いてしまうのだろう。私の父は存命で元気だ が、いつか死に直面する日が来るだろう。このシーンを見るとそのこと を考えずにはいられない」。

撮影開始前、監督は父の言葉を思い出したという。「父は安らかな 死を迎える方法を習得したいと語った。家族がなるべく苦痛を感じない 方法を習得し、残された者たちにできるだけ幸福でいてほしい、と」。 それはバルジャンが語りそうな言葉でもある。

監督はビクトル・ユゴーの原作小説について「死を受け入れている ように見える。ひるんではいない」と指摘。一方、「現代映画で描かれ る死は、物語上の仕掛けか、漫画の中の出来事のような場合が非常に多 い」と話す。

監督は「レ・ミゼラブル」と、「ウォール街を占拠せよ」や「アラ ブの春」などの最近のデモ活動との間に顕著な類似点を見いだしてい る。

「われわれはテレビで日常的に革命のような映像が映し出される時 代に生きている。経済的不平等に対する怒りは大きい」。

(ナエリ氏はブルームバーグ・ニュースの芸術・娯楽部門で記事を 執筆しています。この記事の内容は同氏自身の見解です)

原題:Russell Crowe Roars in ‘Les Mis,’ Director Hooper Cries for Dad(抜粋)

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