トレーダーからパン職人に転身-おいしさ追求、違う人生を

四六時中スクリーンで市場の動きを 見つめているトレーダーたちが他の仕事を夢見るのは無理もない。これ らのトレーダーのうちの2人はパン作りを通して夢をかなえた。

米農産物供給大手カーギルでエネルギー取引を専門としていたト ム・モルナー氏(46)はパン販売店の創業を支援。トレード・デベロッ プメント・バンクで為替取引に携わっていたスティーブン・ハリントン 氏(55)はロンドンの自宅でパン作りの学校設立に着手した。

「トレーディングを始めた時はとても強いストレスを感じたが、今 の仕事もストレスが多い」。ゲイルズ・アーチザン・ベーカリーの共同 創業者であるモルナー氏はインタビューでそう語る。

「トレーディングをしていると、自分でも理解しづらい状況に陥っ てしまうことがあった。トレーディングの仕事はあまりに大規模で触れ ることも感じることもできなかった。今は毎日小麦粉からパンを作って いる。トレーダーは大きなビルで勤務し世界を相手にする。つまり2つ の世界を生きている。今は現実の1つの世界で生きることができるが、 その代わり一日中働かなければならない」。

もっと楽しいことを

「何か違うことをしたかった」。モルナー氏はパン作りへの転身に ついてそう話す。「以前勤務していたコンサルタント会社マッキンゼー の同僚だった友人のラン・アビダンと私は、ロンドンにおいしいパン屋 がなく、がっかりしていた。ロンドンでトップクラスのパン職人数人に 会いに行き、ゲイル(・スティーブンス)はそのうちの一人だった」と 振り返る。

女性のパン職人、スティーブンス氏はロンドン有数のレストラン数 軒にパンを納入しており、モルナー氏とアビダン氏はスティーブンス氏 と共同で小売事業を立ち上げた。ゲイルズ・アーチザン・ベーカリーは 約8年前、ロンドンのハムステッド地区で創業。現在では13店舗を構え 従業員は約200人、年間の売上高は約760万ポンド(約10億7100万円)に 上る。昨年はブルームズベリー地区でレストラン「ゲイルズ・キッチ ン」を開店した。

一方、ハリントン氏は「元同僚たちは、これまでと違うことをして いる私に脱帽すると言う。彼らは多額の報酬を受け取っているが、もっ と何か楽しいことをしたいと思っているだろうから、中には私のことを ちょっとうらやましいと感じている人もいると思う」と話す。「トレー ディングやブローキングの仕事で特にストレスを感じたことはなかった が、パフォーマンスに対するプレッシャーはあった。今感じているスト レスの大半は事業が軌道に乗るかどうかについてだ」。

(バインズ氏はブルームバーグ・ニュースの芸術・娯楽部門の主任 料理評論家です。この記事の内容は同氏自身の見解です)

原題:Traders Turn Bakers in Pursuit of Life, Liberty and Good Bread(抜粋)

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