44歳の男性タイリー・ジョンソンさ んは米マクドナルドの洗面所で固形せっけんで体を洗い、清潔な香りを まとった。衣料品メーカー、ケネス・コールのバッグに洗面用具を持ち 歩いている。このバッグは百貨店メーシーズで働いている母親からの贈 り物。ジョンソンさんはその後、電車に飛び乗った。次に向かうのもマ クドナルドの別店舗だ。

ジョンソンさんはシカゴで多く見られるファストフード店にたむろ するホームレスではない。マクドナルド2店舗で働く従業員だ。衛生状 態と外見が年収査定の項目に含まれるため、さっと体を洗うことが必要 になる。勤務前にせっけんで何度洗っても職場に漂う脂肪食品の臭いを 取り除くのは難しいという。「臭いがするから昇給は無理だと女性ボス に言われたくない」と話す。

ジョンソンさんはシカゴ北部にあるアパートの賃貸料を支払うため 2カ所で働く必要がある。マクドナルドで勤務して20年になるが、週40 時間労働できず、時給はイリノイ州の最低賃金である8.25ドル(約690 円)。

これが、米国で最も目覚ましい成長を遂げる業界で働く従業員の実 態だ。2009年6月に景気回復が始まって以降、ファストフード業界の雇 用は米国平均の2倍以上のペースで増加した。雇用を生み出しているバ ーガーキング・ワールドワイド、「ピザハット」や「KFC」などを運 営するヤム・ブランズなどの従業員の給与は米国の最低水準にとどまっ ている。例外は経営幹部の報酬だ。

100万時間

ファストフード業界では従業員と最高経営責任者(CEO)との報 酬格差が広がっている。ブルームバーグが集計したデータによると、マ クドナルドでは格差が過去10年間で2倍に拡大。一方で、同社は最低賃 金引き上げに反対するロビー活動に資金提供し、最近シカゴやニューヨ ークで活発になっている労働組合結成の動きを抑え込もうとしている。

米国勢調査局の現況人口調査によれば、ジョンソンさんのような年 齢の高い従業員がファストフード店の調理担当者として勤務するケース が増えている。10年には調理・サービス担当従業員に占める16-19歳の 割合は17%と、2000年時点と比較して約25%減少した。年齢の高い不完 全就業者がこれらの仕事に就いているためだ。

マクドナルドが昨年、前CEOのジム・スキナー氏に支払った報 酬875万ドル(約7億3000万円)をジョンソンさんが稼ぐには約100万時 間、100年以上勤務する必要がある。バーガーをひっくり返し、フライ ドポテトの箱を手にするジャクソンさんの仕事と同様の勤務に低賃金の 業界で数百万人が携わっている。こうした低賃金業界の雇用増加は、07 -09年のリセッション(景気後退)終了後に所得格差が拡大した一因に なっている。

今回のリセッション後の回復は近代史上、最も不均等なものだっ た。国勢調査局の推計によると、米国の上位1%を占める年間所得120 万ドルの世帯の収入は昨年5.5%増加したのに対して、下位80%を占め る所得10万1583ドル未満の約9700万世帯では収入は1.7%減少した。

原題:McDonald’s $8 Man Serving $8.75 Million CEO Shows Pay-Gap Surge(抜粋)

--取材協力:Elliot Blair Smith、Frank Bass、Phil Kuntz、Nick Tamasi、Andrew Harris.

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