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【書評】「ブラック・スワン」タレブ氏が説く、混乱は味方だ

ベストセラー「ブラック・スワン」 の著者ナシーム・タレブ氏によれば、統計に基づく予想が信頼できるの は、そこに過去のデータのみではなく将来も考慮されている場合のみ だ。これを同氏は以下のように説明する。

「七面鳥に肉屋が1000日にわたって餌をやれば、アナリストらは統 計に基づき、肉屋が七面鳥を大事にしているという確信を日を追って強 める」が、「この餌やりが感謝祭の2、3日前まで続いたところで、七 面鳥には実に気の毒な日がやってくる」。

タレブ氏が新著「Antifragile: Things That Gain From Disorder (仮訳:アンチ脆弱性:混乱から得られるもの)」で言わんとするの は、「(害悪の)証拠がないこと」を「それが存在しない証拠」と混同 してはならないということだ。

ただ、予測というものが実質不可能であっても、予測可能性につい てはそうではない。なぜなら、ガラスのコップであれ2007年より前の米 銀行システムであれ、壊れてしまいそうな脆弱性は見つけやすいから だ。

タレブ氏は「津波や何らかの経済イベントが起きるのを予測できな いのは許せるが、それらに対して脆弱な何かを作ってしまうことは許さ れない」と語る。

新著で同氏は、ストレスに耐性があるだけではなく、そこから利を 得るシステムに焦点を絞る。例えば人間は運動というストレスを与えら れると体が強くなるが、怠惰に過ごせば弱くなる。

グリーンスパン氏は理解していた

同氏はアンチ脆弱性のシステムとはボラティリティを取り除いたシ ステムとは全く異なると強調する。「森林で小さい火事が定期的に起こ れば最も燃えやすい物質が取り除かれるので、そのような物質が増え過 ぎてしまう危険はなくなる。しかし、『安全のため』という目的でシス テム的に森林火災を防いでしまえば、実際に大火事が起きてしまった際 に被害はさらにひどくなる」という。

「同じ理由で、安定も経済には良くない。失敗がなく常に繁栄とい う期間が長く続くと企業は非常に弱くなり、水面下で静かに脆弱性が積 み上がる」とタレブ氏は説く。そして、ボラティリティを抑え込もうと すれば、その後に起きるのは反動だけでは済まされず、「いずれ大きな 爆発を起こす」と警告する。

同氏の手にかかると、グリーンスパン前米連邦準備制度理事会 (FRB)議長やノーベル経済学賞受賞のポール・クルーグマン、ジョ ゼフ・スティグリッツ両氏、ルービン元米財務長官、ブラインダー元 FRB副議長も皆、「何が起きているのか理解していると考えて脆弱性 を引き起こした人物」となる。

脆弱性を逆手に利を得ようとのタレブ氏の主張は、個人投資家には 目からうろこかもしれない。しかし、それを金融システム上で大規模に 実行する方法が提示されないままでは、新著の内容はあくまでアカデミ ックな世界にとどまるようだ。(クレイグ・セリグマン)

(セリグマン氏はブルームバーグ・ニュースの芸術・娯楽部門で記 事を執筆しています。この記事の内容は同氏自身の見解です)

原題:Taleb Pegs Greenspan, Stiglitz as Economy-Hurting ‘Fragilistas’(抜粋)

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