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中国など海外勢が狙う日本の水、森林買収進む-温暖化で世界的に不足

北海道真狩村でミネラルウォーター を販売するジャパン・ミネラルの小熊盛弘社長の元には、外国人投資家 が同社を買収したがっているとして、一時期、毎日のようにブローカー から照会の電話が掛かってきた。小熊氏は「金額はいくらでもいいとい う話が多かった。要するに水利権が欲しかったのだろう」と振り返る。

取得目的や届け出などの規制が緩やかな日本の土地取引。その間隙 を突いて、中国など外国資本による格安な森林取得が目立っている。世 界的な飲用水の獲得競争が背景にある。

日本不動産研究所の調べでは、林地価格(山林から木を除いた価 格)は今年3月現在、1平方メートル当たり約47円。輸入材の増加で木 材価格が急落したのを背景に、林地も下落し、ピークだった1983年の89 円の約半分になっている。一方、林野庁が把握した限りでは、2011年の 外国人の森林買収は157ヘクタール(14件)で、前年の45ヘクタール (同10件)の3倍以上。06-10年の5年間の累計では620ヘクタール (40件)で、このうち北海道が約600ヘクタールを占める。

森林取得の背景にあるのは、地下に豊富に蓄えられた上質な水資源 の存在だ。国連の報告書によると、水資源のランクで日本は上位10%に 入っているのに対し、人口増の続く中国やインドは30年から水不足に陥 る。経済協力開発機構(OECD)は温暖化による水不足で、同年には 水不足に直面する人口が10億人増えて39億人に達すると警告。東京財団 の平野秀樹上席研究員は、水の獲得競争がさらに激化する可能性を指摘 する。

中でも北海道は外国資本による森林買収が集中している。道の経済 調査・土地水担当局長、三戸部正行氏によると、道独自の調査で把握し た外国人の森林取得件数は57件で、このうち中国が21件を占める。ま た、英国領バージン諸島が9件だが、「これは税の関係でここに登記し ているので、ほとんどが香港の方と聞いている」と話す。残りはシンガ ポール8件、オーストラリア5件などとなっている。

日本の水

富士山の麓に広がる静岡県富士宮市。地下に眠る豊かな水源を求め て、さまざまな企業の飲料水工場が点在する。もともと繊維業を営んで いたセブンイエロー(京都市)は、中国人の出資者から持ち掛けられ て、この地で自社ブランドの飲料水工場を立ち上げた。

吉田勝久社長によると、ペットボトル(500ミリリットル)の販売 価格は日本向けが100-120円なのに対し、中国向けは150-200円と高 く、中国向けの輸出は多い月で約8割を占めるという。

尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題をめぐって日中関係が悪化する 中、冷ややかな目で見られがちだが、吉田社長は「問題なのは森林がな くなること。保全につながるのであれば、だれが森林を買おうとも問題 はないはずだ」とし、中国資本が入っているからといって問題はないは ずだと強調した。

11年にシンガポール人による43ヘクタールの土地取得が行われた群 馬県嬬恋村は、地下に眠る水資源は地元にとって重要な資源だとし、土 地取得を阻止するための条例制定など対応を急ぐ方針を表明した。

土地取引規制の強化

外資による森林買収増加を受け、北海道は水源となる土地の取引に ついては、事前届け出を義務付ける水資源保全条例を独自に施行した。 4月に施行された改正森林法で森林取得の事後届け出が義務付けられた が、これでは取得者の事前チェックができなかった。高橋はるみ知事は 先月18日、外国特派員協会で記者会見し、「森林の大規模な取得で、か つ目的が明らかでないものは阻止していかないといけない。魅力的な北 海道を守るべきだ」と強調した。

高橋知事は森林取得のための事前届け出に基づいて、「利用方法な どについて助言をする。買い手が助言に大きく外れるような場合は、氏 名を公表する」と話した。条例は中国など「一定の国を狙い討ちしたも のではない」と付け加え、今後こうした動きが山梨県や長野県などを含 めて全国に広がっていく可能性があるとの見方を示した。

海外では土地取引の届け出強化にとどまらず、食糧安全保障などの 観点から用途によっては外国人による取得制限をかけている国もある。 東京財団のレポート「失われる国土」によると、ブラジルでは農産物の 大量流出を恐れて10年に外国人の土地所有制限が強化された。また、規 制の少ないとされる米国でも、オレゴン州の空軍基地付近の土地に風力 発電施設を開発しようとした中国人の動きを、オバマ大統領が阻止し、 中国企業側による訴訟騒ぎに発展している。

--取材協力:. Editors: 持田譲二, 平野和

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