商船三井グループの第一中央汽船が 経営改善に向け、60隻程度ある新造船の発注残のうち10隻程度の解約を 検討していることが明らかになった。商船三井から融資枠設定を受けて 当面の資金繰りにめどを付けた第一船は、中長期的な再生に向け新造船 への対応を含む経営再生計画を早ければ月内にもまとめる。

第一船の薬師寺正和社長が4日、ブルームバーグ・ニュースとのイ ンタビューで、取引相手との微妙な問題もあるとしながらも、「発注残 が多い新造船の対策が喫緊の課題だ」との認識を示した。新造船の発注 残のうち現在、貨物契約もファイナンスも付いていない「10隻程度の新 造船については、解約を含めた対応を検討している」と語った。

ただ同時に「この世界での契約は簡単にやめたと言えるものではな い」とし、今後の解約をめぐる造船業界などとの交渉は難航する可能性 を示唆した。キャンセルについては「解約料を払う問題も生じる。この 資金をどう調達するのか、解決すべき問題。すべてキャンセルではな く、一部は受け取りを遅らせることも一案だ」との考えを示した。

同社長はまた、約60隻の発注残のうち40隻程度については「既に船 主がついており、ファイナンス的には問題がない」という。さらに「フ ァイナンスがまだついていない20隻程度については、早急に対応する必 要がある」とした。このうちの10隻については、貨物契約の当てがある ことから、金融機関との調整で対応したいとの意向を示した。

想定外の市況悪化が遠因

同社は10月1日に商船三井と融資枠設定契約を締結し、限度額150 億円の短期運転資金の融資枠を設定。同社長は「これで今期の運転資金 のめどは付いた」と述べた。当面の安定的な資金調達手段を確保したこ とで、同社長は間を置かずに抜本的な経営再生策を発表する考えを示 し、早ければ月末に予定している第2四半期決算発表に間に合わせたい とした。

第一船は、筆頭株主である商船三井の系列企業。同社は主に中小型 のばら積み船を中核とした事業を展開している。リーマンショック後に 積極的なばら積み船への投資により業績拡大、企業価値の増大を狙った ものの、世界的な景気停滞に加え、燃油費の高騰や円高、運賃の値下げ による海運市況の低迷で積極投資が裏目となり、今期(2013年3月期) は最終損失80億円と2期連続となる赤字を見込む。前期実績は93億円の 損失だった。

業績悪化が続いていた6月、商船三井の副会長から同社の新社長に 就任した薬師寺社長は「ここまでマーケットが長期間にわたって悪くな ることは想定していなかった」という。

鉄鉱石、穀物などを運搬するばら積み船の国際的指数であるバルチ ック・ドライ・インデックスは、リーマンショック前の08年5月には1 万1793ポイントの高値を付けたが、その後に急落、リーマンショック直 後には663ポイントまで下げた。さらに12年の2月には、欧州経済危機 に端を発した世界的な景気の低迷で647ポイントまで下げ、現在も依然 として700-800ポイント台と低迷している。

既存船も整理へ

薬師寺社長は「今期の第1四半期の業績内容があまりにも悪く、先 の見通しもかなり悪いということが分かった時点で、このままでは流動 性の問題も出てくる可能性もあり、抜本的な再生プランが必要だと痛感 した」という。市況は「2年ぐらいはあまり芳しくないだろう」という 見通しの下で、再建計画に向けた資金繰りなどについて「現在メーンバ ンクなど金融機関と協議している」と述べた。

また同社長は、新造船だけではなく既存船の整理も急ぐ方針だ。同 社は現在、約240隻の船隊を有している。前社長の下で策定された11年 4月に発表した中期経営計画では船隊規模を15年度末に280隻とする計 画で、10年度の195隻から40%を超える増加を目指している。

しかし同社長は、中国による新造船の供給過剰による運賃引き下げ 圧力に加え、中国経済の成長鈍化による鉄鋼需要の減少などで市況が低 迷しているために、船を保有するだけでも経費がかさみ経営が圧迫され ると指摘。「会社の体力を考えると200隻を切るレベルが妥当だ。た だ、今すぐやれと言われれば無理だが、マーケットの回復に合わせて対 策はとれる。なるべくリスクを回避し、既存のフリー船の数を減らすこ とで対応したい」と語った。

財務体質の強化への方策

薬師寺社長は、150億円の融資枠設定で営業キャッシュ・フローの 面で一息つけたものの「これは一時的な時間稼ぎのようなもの」と認め る。その上で、「自己資本がかなり傷んできているので、何らかの形で 資本の増強は考えないとおさまらない。このままでは債務超過にもなり かねない」と危機感を示す。その具体的な方策としての増資の可能性に ついては「さまざまなオプションがある。可能性を否定するものではな いが、現実的には難しいと考えている」という。

さらに、「一般的には合併するか、第三者割当増資による完全な子 会社化、種類株の発行などは考えられるが、具体的なことについては、 微妙な時期であり、何もコメントはできない」と述べるにとどめた。そ して、「いろいろな組み合わせをこれから考慮して判断することにな る」とし「ある意味では、商船三井の判断がひとつのカギになることは 間違いないだろう」と付け加えた。

「選択肢のひとつ」

さらに薬師寺社長は、将来的に商船三井による吸収案の可能性につ いて、「アイデアとして、ひとつの選択肢としてあるのは事実。ただ、 まだまだそうするということが双方で決まっているわけでは決してな い。これは非常に難しい問題だ」と述べた。その上で、「今は商船三井 のコピーみたいなことをやっていてはダメだ。会社としての特質を強く 出せるようにしなければならない。それなりの特色や存在価値のある会 社にしないと淘汰されてしまう」との危機感を示した。

事業の差別化について薬師寺社長は、インドなどの新興国を対象に した事業展開や、他社がまだ手を付けていない南北アメリカでの大陸を 中心としたオペレーションを例として挙げた。さらに、日本の海運会社 として初めて長期貨物輸送契約を締結した独自の中国とのパイプを生か したビジネス強化など、収益増強のための方策も再生計画と同時に進め ていくとの考えを強調。そして、「マーケットが今のままの低迷が続け ば大変なことになる可能性も否定しないが、そう無茶苦茶に悲観的にな ることもない」と述べ数年先の業績好転を見越した経営再建に自信を示 した。

「結果を出す必要」

独立系投資顧問会社、バリューサーチ投資顧問の松野実社長は、 「商船三井の影に隠れてなかなか見えにくい第一中央汽船だが、早急な 再生計画を発表することで市場の信頼と認知をかち得る努力をマーケッ トにみせる必要がある」と指摘した。

続いて同氏は「商船三井と重ならない独自の事業展開を強化して収 益を確保する戦略は正しい方向」としながらも、「今後想定される厳し い海運市況を考えると単独で生き残るためには立派な計画だけでなく同 時にそれに見合う結果を出す必要があり、ここ数年の活動を見極めた い」と述べた。

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