JPモルガンのロンドン鯨が失ったのは誰の金?-コーハン

いまや悪名高きJPモルガン・チェ ースの「ロンドンの鯨」が失った60億ドル(約4670億円)はいったい誰 のお金だったのだろう。

預金者のお金だろうか、それとも株主のお金だろうか。実は誰のお 金も失われなかったし、鯨事件すべてがJPモルガンのジェイミー・ダ イモン最高経営責任者(CEO)が最初に言ったように「取るに足らな いこと」でしかなかったのだろうか。

JPモルガンが5月10日の記者会見、ダイモン氏の2回の議会証 言、そして7月13日のアナリスト向けプレゼンテーションを通じてわれ われに伝えたのは、問題の取引を仕切っていたブルーノ・イクシル氏 (別名、ロンドンの鯨)が同行のチーフ・インベストメント・オフィス (CIO)で働いていたということだ。CIO部門の仕事は、JPモル ガンが顧客から預かった1兆1000億ドルと法人向けに融資した7500億ド ルの差額を投資することだったという。

ウォール街の標準から言っても巨額のこの3500億ドルは、JPモル ガンで一目置かれていたバンカーのアイナ・ドルー氏の指示の下で日 々、投資されていた。ドルー氏と同氏のチームはこの3500億ドルを安全 に見える短期の金融商品に投資し、ダイモン氏によれば全体的なリター ンは2.6%程度だった。

この3500億ドルのうち100億ドルを、イクシル氏はよく分からない 指数に投資し、これまでに分かったところ58億ドルを失った。

預金者の金

私には、このお金は預金者のもののように思われる。イクシル氏が 所属するCIO部門は融資に回らない預金を投資していたからだ。しか し私が先週のコラムでそのように書いたところ、JPモルガンの広報担 当ジョゼフ・エバンジェリスティ氏が電子メールで、それは違うと反論 した。失われたのは株主のお金だという。

確かに、今の時点でどの預金者も個人的に金を失ってはいない。し かしそれは取り付け騒ぎが起こっていないからであって、もし預金者が 1兆1000億ドルすべての払い戻しを求めていたら、JPモルガンが倒れ るだけなく、連邦預金保険公社(FDIC)の保証上限である25万ドル を超える額を預けていた預金者は損をしただろう。

JPモルガンは失われたのは株主のお金だという。確かに、JPモ ルガン株はロンドンの鯨の損失額が明らかになるにつれて売り込まれ た。株主は株価下落により250億ドル近くを失った。

しかし株価はその後回復し、今は不祥事発覚の前とほぼ同水準にな っている。株主がロンドンの鯨の取引によって失ったものはほとんどな いと言っていいのではないだろうか。

JPモルガンは1カ月前、取締役会が米エクソンモービルの会長兼 CEOだったリー・レイモンド氏を起用し、ロンドンの鯨問題を新たに 調査すると発表した。問題の60億ドルにいったい何が起こったのかが明 らかになるかもしれない。(ウィリアム・D・コーハン )

(ウィリアム・D・コーハン 氏は元バンカーで、「Money and Power: How Goldman Sachs Came to Rule the World(マネー・アン ド・パワー:ゴールドマンはどうやって世界の支配者になったか)」の 作者で、ブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内 容は同氏自身の見解です)

原題:Exactly Whose Money Did the London Whale Lose?: William D. Cohan(抜粋)

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