【クレジット市場】「眠れる巨人」参入で地銀の収益性に懸念も

ゆうちょ銀行が住宅ローンなど融資 業務の拡大に向け動き出した。貸し出しの原資となる預金額は約177兆 円と国内最大。全国に幅広い拠点網を持つ巨大銀行がローン市場に本格 参入すれば、貸し出し競争により利ざやが縮小し、地方銀行などの収益 性をさらに圧迫するとの懸念が出ている。

ブルームバーグ・データによると、全国の地銀や大手行など84行の 融資業務の収益性を示す純利息マージンは2012年3月末で1.40%と少な くとも01年以降の12年間で最低を記録している。これは米国主要24行 の3.36%を大きく下回り、ヨーロッパ38行の1.57%より低い。

ゆうちょ銀は3日、①住宅ローン②企業向け融資③個人向けのカー ドローンの認可を金融庁や総務省に申請。20日には18年3月に住宅ロー ンで7900億円、企業向け3500億円の融資残高を目指す方針を示した。政 府の郵政民営化委員会が新規業務の妥当性を審査し、早ければ13年度に も参入する。個人向け融資は全国82店舗で取り扱う計画だ。

米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の根本直子マネージ ング・ディレクターは、「国有の巨大銀行の参入は、住宅ローンの利ざ やを押し下げる」と分析。銀行全体のリスク要因となり、格付けにも影 響する可能性があると指摘する。特に地銀については「稼ぎ頭の住宅ロ ーンで影響を受けて収益性が悪化する」とみている。

格付けにネガティブ

ムーディーズは10日付のリポートで、ゆうちょ銀による融資業務 参入は、地域銀行の信用力にネガティブに働くとの見解を公表した。地 銀にとって成長分野である住宅ローン市場に、競争が激しい中で、ゆう ちょ銀が参入すれば、低い利益率がさらに低下する可能性があるなどと 指摘している。

ブルームバーグ・データによると、24日の静岡銀行債(表面利 率1.37%、2015年償還)の同じ残存期間の国債に対する上乗せ利回り (スプレッド)は24bp(1Pb=0.01%)と年初来の最少だった5 月17日の22bpから拡大。島銀行債(同1.89%、2017年償還)は44bp で同様に9月13日の42bpから広がっている。

ゆうちょ銀の資産は12年3月末で195兆8200億円。このうち74%に あたる144兆9400億円が日本国債で運用されている。同行では新規の融 資業務の申請に際し、国債に偏った運用による金利リスクの改善が必要 などと説明していた。ゆうちょ銀の融資関連業務は現在、スルガ銀行の 住宅ローン仲介や企業向け融資団への参加などにとどまっている。

地銀の再編に発展も

住宅金融支援機構の調べによると、12年3月末の全国銀行の住宅ロ ーン残高は前期比0.7%増の176兆5700億円。このうちメガバンクや地銀 などは106兆8000億円で、銀行の全融資残高367兆4000億円の約30%を占 める。住宅ローンは銀行にとって主力の貸し出し業務だ。

中でも地銀にとってゆうちょ銀参入のインパクトは大きい。野村証 券の集計によると、上場地銀84行の12年3月末の住宅ローン残高は53 兆5343億円と前年同期から3.1%増加した。ゆうちょ銀が18年3月まで に住宅ローンで目指す融資残高7900億円は1行当たり平均の6373億円を 大きく上回る。

SMBC日興証券の阿竹敬之チーフクレジットアナリストは、ゆう ちょ銀の参入について、「眠れる巨人が目を覚まし、住宅ローン市場に 入ってくることは地方の金融機関にとって脅威」とみる。同行のビジネ ス拡大のスピードにもよるが、「今後、地銀の合併など再編が進む可能 性がある」とみている。

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