最大市場の中国で反日デモ、震災を上回る痛手も-日本の自動車会社

中国・西安で研究員をしているシ ェリー・ワン氏は2年前、通勤に居心地の良いトヨタ自動車の「カム リ」を購入した。だが、最近はバスを使っている。近ごろ通りで群れ をなしている反日デモの標的になるのではないかと恐れているのだ。 彼女は「できるだけ早く普通の生活に戻ってほしいと思っている」と いう。

中国乗用車協会の崔東樹副秘書長は電話取材に対し、反日デモが 中国全土に拡大する中、日本の自動車メーカーは「非常に大きな影響 を受け、それは長期間にわたって続くだろう」と話す。「車を買う選択 肢はたくさんある。反日感情の高まりで安全性が心配されるようなと きに、あえて日本車を選ぶ必要があるだろうか」と述べた。

日中戦争の発端となった柳条湖事件から81年目となる18日、北 京の日本大使館前には日本政府の尖閣諸島(中国名・釣魚島)国有化 に抗議する反日デモに数千人が集まり、現地国営メディアは追悼の意 を表すメッセージを報じた。デモ参加者は中国国旗を振りながら武装 警官が包囲する日本大使館周辺を行進。

一連の反日デモでは、週末に日系自動車販売店が放火されるなど の被害が出ており、現地に事業展開する日系小売企業はデモ参加者の 乱入防止のため店舗の扉を閉鎖し、会社のロゴを覆い隠した。

敵対感情の解消には長い時間

中国最大の自動車ディーラー団体、中国汽車流通協会(CADA) の羅磊副秘書長は17日、日本車の中国販売への影響が昨年の東日本大 震災やタイ洪水などの自然災害を上回る可能性があると指摘し、「自然 災害による影響は迅速な解消が可能だが、日本車への敵対感情を消す には長い時間と取り組みを要する」と述べた。

「中国人はいま、日本に対して非常に敵対的な姿勢だ」-。四川 省成都にある三菱自動車販売店に勤務するチャン・ジェン氏は取材に こう答えた。ジェン氏の店では窓に中国国旗を掲げ、島の領有権につ いては中国の主張へ「絶対的な支持」を張り出した。「日本メーカーと の合弁車両を売っているが、釣魚島についてわれわれがどう感じてい るということは関係ない。われわれは中国人であり、中国の主張を支 持する」という。

こうした情勢を受け、現地の操業については、ホンダが18、19 日の停止を決定。日産自動車が18日に2工場で操業停止。トヨタも 18日に一部の工場で操業を停止した。18日は、ほかに三菱自が湖南省 の工場で、スズキも済南の二輪車工場の操業を停止した。

18日の株価は、日産自が一時、前週末比5.2%安の700円と、お よそ4カ月ぶりの下落率となった。また一時、ホンダ株が同3%安の 2590円、トヨタ株が同1.1%安の3180円に、それぞれ下落した。

ドイツが日本を抜く見通し

中国乗用車協会のデータによると、ドイツ車は今年、現地シェア

22.5%に拡大し、シェアを落とす日本車の22%を抜く見通しだ。日本 車は現地の外国ブランドで2005年からシェア首位だった。

日本車の乗用車販売台数は8月、対前年同月比で減少し、ドイツ や米国、韓国メーカーがいずれも同10%以上の増加となったのと対照 的な結果となった。中国は09年に米国を抜き世界最大の市場となった。 ブルームバーグ・データによると、11年は約1853万台で、2位の米 国より約580万台多かった。

BNPパリバ証券の日本株チーフストラテジスト、丸山俊氏は、 日本の輸送セクターは中国に最も依存していると指摘。また、ゴール ドマン・サックスでは、中国事業の貢献度が日産自で約3割、トヨタ で約17%、ホンダで約15%とみている。

日産自は昨年、15年までに中国で500億元を投資し、現地の販売 台数を現在の130万台から230万台に引き上げる計画を発表。トヨタ の新美篤志副社長は今月、15年に中国販売を現在の2倍前後となる 150万-180万台を目指すと話した。また、ホンダは4月、今後4年間 で中国販売台数を倍増させる計画を明らかにした。

両国とも深刻な紛争望んでいない

調査会社イプソスの自動車担当グローバル責任者、クラウス・パ ウル氏(上海在勤)は、中国も日本も深刻な紛争は望んでいないため、 両国間の緊張を解決する方法は近いうちに見つかる可能性があり、そ れは中国で日本ブランドが長期的なダメージを回避できることを意味 すると語った。

自動車調査会社、フォーインのアナリスト、周錦程氏は今回の反 日デモについて「都市に広がっていて、今までのデモと規模が違う」 とコメント。影響は「今年いっぱい、来年の頭ぐらいまで続く」と指 摘。日系メーカーが今年の中国で販売目標を達成するのは難しいだろ うと語った。今後の問題として、「中国は政治が不安な状況にあるのだ から、もうちょっと戦略的な考え方を持って、日系メーカーはこれか ら投資をどうするか考え直す必要がある」と話した。

尖閣諸島をめぐっては、東京都の石原慎太郎知事が4月、魚釣島、 北小島、南小島を都の予算で買収する計画を表明。これに対し、日本 政府は9月に入り、これら諸島を直接買い取り、国有化していた。

--取材協力:萩原ゆき、堀江政嗣、向井安奈、馬傑、Tian Ying、Liza Lin、Chua Kong ho Editor:Hideki Asai、Kenzo Taniai

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