自民:政権奪還へ強まる「保守色」-総裁選告示で5氏出馬

(候補者の記者会見などの発言を追加し、見出し、第1、2段落の一 部を差し替え、17段落以降を追加します)

【記者:広川高史、Isabel Reynolds】

9月14日(ブルームバーグ):自民党の総裁選が14日告示された。 石原伸晃幹事長など5人が出馬する乱戦模様だが、いずれの候補者も領 土問題などへの取り組み強化や集団的自衛権の行使容認などを掲げる。 次期衆院選後の政権奪還も視野に入る同党だが、3年間の野党経験を経 て保守政党としてのカラーを強めている。

総裁選には石原氏のほか、町村信孝元外相、石破茂前政調会長、安 倍晋三元首相、林芳正政調会長代理の5人が立候補した。5人は党本部 で立会演説会と共同記者会見を行い、論戦をスタートさせた。26日には 国会議員による投票が行われ、党員票と合わせて開票される。

自民党は野党転落後の翌2010年、谷垣禎一総裁の下で新綱領を作成 し、新憲法の制定や国の主権を「自らの努力により護る」方針を明記。 次期衆院選に向けて作成した政策集「日本の再起のための政策」では、 与党時代に踏み切れなかった集団的自衛権行使の容認、尖閣諸島(沖縄 県石垣市)の有人化を図る方針なども盛り込んだ。

日本大学の岩井奉信教授は、総裁選は幹事長職にあり、複数の派閥 領袖から支持を得た石原氏が有力との見通しを示した上で、自民党は民 主党との違いを見せるために、昨年あたりから保守的な傾向を明確に打 ち出してきているとの見方を示す。

保守

保守色を強めている自民党の現状を象徴するのが、5年前に任期途 中で辞職した安倍元首相の総裁候補としての復権だ。

安倍氏は12日の出馬会見で、「現在、私たちの美しい海や領土が侵 されようと、脅かされようとしている。日本の領土、領海を、何よりも 日本人の命は断固として守る、このことを宣言したい」と明言。会見に は尖閣諸島への上陸許可を政府に求めてきた新藤義孝衆院議員らが同席 した。

2006年9月から07年9月の1年間の在任中に教育基本法改正や憲法 改正の手続きを整備するための国民投票法の制定、防衛庁の省への昇格 などを実現した安倍氏。出馬のきっかけとして昨年3月の東日本大震災 と竹島、尖閣をめぐる「出来事」を挙げる。安倍氏は慰安婦募集の強制 性を認めた1993年の河野洋平官房長官談話を修正する「新たな談話」を 発表すべきだとの考えも示している。

その安倍氏と6日に領土や外交に関する勉強会を開くなど連携を模 索しているのが防衛相などを歴任した石破氏。自衛隊の海外派遣のため の一般法制定を求めてきた安全保障政策のスペシャリストだ。

尖閣

石破氏は7日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、野 田佳彦政権の尖閣への対応について「国が所有をするのだから今のまま で維持しますよ、というのは正しいとは思っていない。今のまま『誰も 入ってはだめ』、『灯台があるぐらいで他のものは作らない』というこ とでいいとは思っていない」と批判。漁船の避難場所なども設置し、 「実効支配のレベルを引き上げていくべきだ」と訴えている。

安倍氏は総裁選の公約で「避難港創設」を明記。町村氏も10日のイ ンタビューで、健全な日中関係を築く外交努力の必要性を強調しながら も、「地元の要望ということで必要なものはやる」と理解を示す。

東京都の石原慎太郎知事の長男である石原幹事長は、公約では「わ が国の領土と主権を守る国内法や組織・機関の整備を進める」と触れる にとどめたが、11日のテレビ朝日の番組では付近を航行する船舶の安全 を確保するための新たな灯台建設などを提唱した。

林氏は公約で、領土をめぐる問題などに「毅然と対応する」と指 摘。13日のテレビ朝日の番組では、避難港などの建設については、国有 化する際に「やるのならいっぺんにやればよかった」と述べ、政府を批 判した。今後の対応については「今の政府の判断しかない。どこまで手 を握りながら殴れるかは、やっている本人たちでしか分からない」と語 った。

コロンビア大学のジェラルド・カーチス教授は、自民党総裁選の候 補者たちは尖閣に何らかの港湾施設を建設するという考え方に閉じこも ってしまっているようで、実行すれば中国が正面からの挑戦と受け止め て反発してくるだろうとの見通しを示した。

維新の会

総裁選では、「大阪維新の会」代表で、国政政党「日本維新の会」 結党を宣言した橋下徹市長との関係の在り方も争点になりそうだ。維新 の会の「維新八策」は、憲法改正など保守的な政策を掲げており、自民 党の政策との共通点もあるからだ。

安倍氏は12日の会見で、「教育政策などで共鳴できるところもたく さんある。パワーには期待したい」と強調。ベテランの町村氏もインタ ビューで教育委員会廃止など個別の一部政策には「首をかしげる」とし ながらも、全体的な方向性については「そんなに違和感は持たない」と 指摘する。

産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が1、2両日に 行った世論調査では、衆院選での比例代表の投票先として「大阪維新の 会」を選んだ人が23.8%で、自民(21.7%)、民主(17.4%)を上回っ た。橋下氏は12日に大阪市内で行った懇親会で、「日本維新の会」結党 を宣言。松浪健太衆院議員が自民党を離党し、同会に参加した。

論戦

5人は14日、党本部での共同記者会見で、いずれも社会保障と税の 一体改革に関する民主、公明両党との3党合意について維持する考えを 表明。早期の衆院解散を求めていく方針も示した。ただ、石破氏は解散 は首相の「専権事項」とも指摘し、「解散を強く求めるが、協力しなけ ればならないことは国家のためにする」とも語った。

また、安倍氏は首相在任中に靖国神社を参拝しなかったことについ て「痛恨の極み」と振り返った。

これに先立つ演説会では、石原氏が、中国の人民元、韓国ウォン、 台湾ドルなど新興国の通貨について「産業発展を続けて成長していけば 円に対してその国の通貨は上昇しなければならない」と指摘。その上 で、「新しい国際金融の枠組みをしっかり構築して、この通貨とドルと の連動というものを切り離していく。そこに初めて私は円高を是正し、 デフレを解消する糸口があると思う」と主張した。

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