JPモルガンやBOA、担保転換がリスク隠す恐れ-派生商品

米銀JPモルガン・チェースとバン ク・オブ・アメリカ(BOA)は、質の高い担保の不足によって金融シ ステムを守る新たなルールの実施に支障が出る中で、顧客がデリバティ ブ(金融派生商品)取引の追加担保を見つける手助けを行っている。ル ール変更に伴い、2兆6000億ドル(約203兆円)相当の新たな担保が必 要になる見通しだ。

金融メルトダウンの再発防止策として来年から導入される新たなル ールによって、トレーダーはより多くの取引の担保として、米国債や最 高格付け債の差し入れが義務付けられる。10兆8000億ドル規模の米国債 市場は、バランスシートの修復を進める銀行や安全な資産を求める投資 家のニーズを背景に既に逼迫(ひっぱく)しており、648兆ドル規模に 達するデリバティブ市場の担保として利用できる債券はますます少なく なっている。

その解決策として、少なくとも7つの金融機関が、米国債や適格債 を顧客に貸し付け、基準に満たない低格付けの証券と交換させる「担保 の転換」と呼ばれる手法の利用を計画している。しかし、投資家や銀行 幹部、学識経験者の間では、リスク回避のための措置がかえってリスク の隠蔽(いんぺい)につながると不安が高まっている。

デリバティブ市場と有価証券の貸借取引を研究するスタンフォード 大学のダレル・ダフィー教授(金融学)は「ディーラーは自らの利害を 優先し、これに伴うシステミックリスクには必ずしも注意を払わないだ ろう。この慣行が十分大きな規模となって初めて、監督当局はそれに気 付く可能性が高い」と指摘する。

営業を既に開始

デリバティブ取引を清算するクリアリングハウス(決済機関)の反 応も懸念を拡大させる要因の一つだ。一部の決済機関は、担保の不足に 適格基準の引き下げで対応しており、シカゴ商業取引所(CME)は、 投機的格付け(ジャンク級)を4段階上回るだけの証券も担保として受 け入れている。

数十億ドルの手数料収入が期待できる有価証券の貸借市場の拡大 は、収入源が不足する銀行に恩恵を与える可能性がある。JPモルガン とBOAのデリバティブ事業は合計で140兆ドル規模と米銀持ち株会社 で最も大きいが、事情に詳しい複数の関係者によれば、両行は新たな担 保転換デスクの営業を既に開始している。

関係者らが匿名を条件に語ったところでは、米銀バンク・オブ・ニ ューヨーク・メロン(BNYメロン)と英バークレイズ、ドイツ銀行、 ゴールドマン・サックス・グループ、ステート・ストリートも担保転換 ビジネスの機会をうかがっている。

積み上がる運用リスク

2010年に成立した米金融規制改革法(ドッド・フランク法)に基づ く新たなルールは、デリバティブの店頭取引も決済機関を通じて行うよ う義務付けており、CMEグループなどが運営する決済機関はトレーダ ーに対し、デフォルト(債務不履行)の発生に備えて国債など現金化が 容易な担保の提供を求めることになる。ブルームバーグがまとめたデー タによれば、約5000億ドルから最大で2兆6000億ドルの追加担保が必要 になると予想される。

ダフィー教授は、担保として貸し出される米国債を借り入れ、元の 貸し手から突然返還を求められれば、銀行が窮地に追い込まれる恐れが あるとの見方を示す。世界最大の資産運用会社ブラックロックのトレー ディング担当グローバル責任者、リッチー・プラーガー氏(ニューヨー ク在勤)は「われわれはある担保を別の形態に転換し、大量の運用リス クを引き続き積み上げているにすぎない」と話している。

原題:Big Banks Hide Risk Transforming Collateral for Derivatives Bets(抜粋)

--取材協力:Matthew Leising、Silla Brush.

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