三井物:穀物メジャーの人員採用、商品デリバティブ事業拡充

三井物産が原材料価格の変動リスク を軽減するための商品デリバティブ(金融派生商品)事業を拡充してい る。穀物メジャーや外資系投資銀行などから専門家も採用し、高騰する トウモロコシなど農産品向けの新たなヘッジ手段の提供を始めた。原料 価格の変動による利益悪化を防ぎたいという企業の需要は高まると見て サービスを広げる。

商品市場部の菊地原伸一部長らがブルームバーグとのインタビュー で明らかにした。商品市場への投機資金の流入増で原料価格の変動幅は 大きさを増している。価格高騰による調達コスト増で企業収益を圧迫す る例も多い。「顧客のニーズは増えており、実際に現物を扱う営業本部 と一緒になってヘッジの新しいアイディアを提供していく」と言う。

食品メーカーなどが三井物産から穀物を輸入する際、数量や期間、 価格を決めるが、価格の部分を固定化せずに市況に応じて変動させるサ ービスの提供を始めた。対象となるのはトウモロコシや大豆、砂糖、コ ーヒー豆などシカゴやニューヨークの商品先物取引所に上場している農 産物。原料価格が上昇した場合のリスクだけでなく下落した場合にも対 応できるのが特徴。現在までに大手食品メーカーなど7社と契約した。

「もともと穀物メジャーが行っていたサービスだが、自社で提供で きるようにした」と佐伯智洋・新商品営業室長は説明する。流動性のあ るシカゴのオプション市場を活用することで、顧客の要望に応じた提案 が可能になるという。今後は「非鉄や鉄鋼原料などにも対象を広げた い」との考え。こうした新サービス提供に向けて昨年9月に商品市場部 内に同室を設置し、12人の人員のうち半数を外部から採用した。

米国の干ばつによる影響でシカゴ商品取引所(CBOT)の大豆先 物相場は4日に史上最高値を付けた。トウモロコシ相場も先月に最高値 を更新したばかり。穀物急騰を受けて日清オイリオグループが10月から 今年3度目となる食用油の値上げを発表するなど影響は波及している。

富国生命投資顧問の日比勝己アナリストは「食品業界では原料価格 が上がる際に製品価格への転嫁により採算が良くなるケースもあり、価 格ヘッジを導入する企業はそれほど広まっていない」と指摘。ただ競争 が厳しく価格転嫁が難しい企業にとっては対策が必要になると見る。

経済産業省によると、取引所を介さない国内の店頭取引(OTC) での商品デリバティブの取引残高は3月末時点で12兆1000億円。そのう ち航空機燃料や原油などのエネルギー関連が8兆8000億円、非鉄金属や 貴金属などの金属関連が3兆3000億円、農産物関連は約100億円。

マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表取締役は「欧 米に比べて日本のコモディティ・デリバティブの認知度は低く、まだま だ市場の成長余地はある」と語る。

三井物産ではこのほか、造船や鉄道敷設など期間の長い個別のプロ ジェクトごとに原料の固定価格を提示するサービスも始める。鉄道敷設 事業では構想段階からレールを実際に敷くまでの間に鉄の値段が大きく 変動する可能性もある。総合商社は世界各地で幅広くプロジェクトに関 与しており、事業機会も大きいと見ている。

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