世界のタンカー操る海運王、直観で110億ドル投資-底値狙う

ロンドン市内チェルシーにある高級 宝飾品店ティファニーが入居するビル上階にある小規模な続き部屋のオ フィス。世界の石油輸送の大半が、ここでコントロールされている。ノ ルウェー人の海運王、ジョン・フレドリクセン氏は、このオフィスで世 界最多の超大型タンカーの運航や、業界最大の時価総額を誇る深海掘削 会社のほか、鉱物や穀物、液化天然ガス(LNG)を運搬する約128隻 もの船舶を管理する。同氏の資産評価額は132億ドル(約1兆300億円) に上る。

フレドリクセン氏は毎朝、自身の運営する巨大海運企業帝国の事業 に関する報告書を隅から隅まで目を通す。ただ、数年毎に一度、賭けに 出る際には、これらのデータは参考にしない。「いまだ直観で動いてい る」。双子の娘のうちの1人、キャサリンさんにちなんで名付けられた 超大型タンカーの絵画が飾られた会議室で同氏はこう語る。

海運市況は1970年代以降で最悪。同氏の直観は買いを推奨している という。世界の金融界で最も影響力のある50人・2012年版を特集したブ ルームバーグ・マーケッツ誌10月号が報じている。フレドリクセン氏は 海底油田で利用するリグ(掘削装置)18基に70億ドル、LNGやガソリ ン、プロパンなどの燃料を輸送する新造船約48隻に40億ドルを投資して いる。タンカーが最も得意分野だが、今は世界の液化エネルギー輸送業 界で優位性を高めようとしている。

フレドリクセン氏(68)はこれまでの破天荒な人生で数十億ドルの 利益を得たが、挫折も味わった。取引をめぐって詐欺罪に問われノルウ ェーの拘置所に約4カ月収容されたこともある。今、これまでのキャリ アで最大の賭けに出つつある。船乗り特有の顔つきをし恰幅(かっぷ く)の良い同氏は、冗談を言うのが好きだ。タンカー取引に携わった50 年のうち42年間はひどいものだったと振り返る。

タンカー業界の「ドン」

オスロのしゃれたカフェで資産運用者と話していてもアテネで海運 業者とビールを飲んでいても、話し好きな億万長者はタンカー業界のド ンでいることを楽しんでいる。16歳で高校を中退したフレドリクセン氏 だが、現在はチェルシー地区にある18世紀の教会施設を改修した豪邸で 暮らす。広さ1ヘクタールの庭付きで、価格は1億1000万ポンド (約140億円)を超える。

最近は、船舶価格が下落するとの見方に基づいて投資している。経 済や石油需要が伸びるとの見通しについては、不透明感が強過ぎ当てに ならないと考えている。現在、シンガポールの造船所で建造される深海 掘削リグの価格は5億3500万ドルだが、08年のピーク時と比較して31% 下落している。中国と韓国の造船所の超大型タンカーの新規受注価格は 約8000万ドルと、07年の高値の半分の水準となっている。

「基本的に私はトレーダーだ。市場は底値に非常に近いと考えてい る。底値で買いたい。これはゲームだ」。めったにメディアの取材を受 けないフレドリクセン氏はそう語った。

原題:Ship Magnate Uses Gut in $11 Billion Bet Worst Since ’70s Ending(抜粋)

--取材協力:Alaric Nightingale.

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