土壇場のドッド・フランク法審議、風穴開けた弁護士のメール

米議員らが金融規制改革法(ドッ ド・フランク法)案審議の最終段階に入り、徹夜で議論した2日後のこ とだった。20時間に及ぶ審議で、議員、議会スタッフ、ロビイスト、規 制当局者らは疲れ切っていた。詳細の全てを把握していた者などほとん どいなかったに違いない。

そこに登場したのがアネット・ナザレス氏(56)。2010年6月27日 の日曜の朝に米証券取引委員会(SEC)幹部10数人宛てに法案に関す る電子メールを送付した。この法案は後に2300ページに及ぶドッド・フ ランク法として成立することになる。

ナザレス氏自身、SECの元委員。現在は法律事務所デービス・ポ ーク・アンド・ウォードウェル(ワシントン)のパートナーとして大手 の銀行や証券会社の代理人を務めている。この日の電子メールには注釈 付きの法案の写しが添付され、未明に変更された部分が示されていた。 法案策定の期限が迫る中、追い詰められていた当局者にとってこれは法 案を分析するために計り知れないほど貴重な資料となった。

「お役に立てば幸いです」。ナザレス氏はメールを送信した人々に そうメッセージを添えた。送信先の多くは元同僚だ。

SECのシャピロ委員長は2時間後、「ありがとう。作業が短縮で きそうです」と返信している。

人脈活用

10年7月に成立したドッド・フランク法に基づいてSECはその後 2年間、取り組みを進めることになる。同法はナザレス氏にもチャンス をもたらした。金融サービス各社が規制強化をけん制する中、同氏は人 脈とSECでの長年の経験を武器に、この業界にとって貴重な法的権利 の擁護者として頭角を現した。

ナザレス氏が所属するデービス・ポーク・アンド・ウォードウェル のウェブサイトによると、同事務所は米銀6行と業界団体の証券業・金 融市場協会から、ドッド・フランク法担当の外部弁護団体として採用さ れた。クレディ・スイス・グループやドイツ銀行など米国外の銀行の顧 問業務も担当している。

シャピロ委員長や当時SECの法務顧問で政策担当シニアディレク ターだったデービッド・ベッカー氏に宛てたナザレス氏の電子メール は、ブルームバーグ・ニュースが情報公開法に基づいて開示請求して入 手した。このメールは、ロビイストや弁護士たちが政府関連の職務で培 った人脈を、顧客へのアクセスや人脈の維持にどのように利用している かを如実に表している。

回転ドア

連邦政府や議会、ホワイトハウスの元当局者が退職後に監督対象だ った業界で勤務するのは常態化している。制限される場合もあるが、合 法であり、日常茶飯事。ただ、ワシントンではなお、このような現状に 対して懸念の声が広がっている。ナザレス氏のやり取りを通じて回転ド アが回るように当局と業界を行き来する人々の間で何が起こっているか を垣間見ることができる。

ナザレス氏は特定の電子メールについてコメントするのを控えた。 官民双方で勤務した経験のある自分のような経歴を持つ人材について、 「SECが何を成し遂げようとしているのかを顧客により効果的に説明 することができる」ため貴重な存在だと指摘した。

同氏は自分が優遇されているということは「絶対にない」と説明、 「完璧に立ち回っているわけではない。そうありたいとは思っているけ れども」と語った。

原題:Top Bank Lawyer’s E-Mails Show How SEC’s Revolving Door Spins(抜粋)

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