【クレジット市場】国債金利リスクが最大、小泉以降の年限長期化鮮明

小泉純一郎氏から野田佳彦氏に至る 歴代内閣が低金利を活用し、国債の年限(デュレーション)の長期化を 進めてきた結果、投資家が金利上昇(価格は下落)時に被る潜在的な損 失は過去最大規模に膨らんでいる。

NOMURAボンド・パフォーマンス・インデックス(野村 BPI)によると、日本国債のデュレーションは3日に7.76年とブルー ムバーグのデータでさかのぼれる2000年1月以降で最長を記録した。04 年半ばを底に上昇に転じており、小泉内閣以降の長期化が鮮明だ。

投資家が仮に100億円相当の債券を保有している場合、市場金利が 1%上昇すると7.76億円の評価損が発生するリスクがある。同リスク は12年8カ月で36%増大した。米BOAメリルの指数によると、米国債 は6.08年だ。

低金利の時代に償還期間が長い国債発行を増やせば、政府の資金繰 りは改善するが、273兆円の国債を保有する国内投資家にとっては、金 利上昇時の評価損リスクが増すことになる。政局の混迷で財政再建への 信頼が揺らいだり、過度な金融緩和で将来の物価安定に対する疑念が強 まるなどして相場が下落すれば、残存期間が長い債券ほど金利上昇幅が 大きくなりやすいためだ。

みずほインベスターズ証券の井上明彦チーフストラテジストは、政 府にとって「歴史的な低金利下では、返済までの期間が長い資金を調達 するのが鉄則だ」と指摘。「国債発行計画では平均償還年限が前年度よ り短くならない形になっており、デュレーション指標の長期化にも表れ ている」と説明した。その一方で、「投資家の抱える金利リスクは高ま る」と述べた。

超長期債の増発は計画的

歴代の政権は国債のデュレーション長期化を計画的に進めてきた。 財務省の資料によると、償還まで10年を超える超長期債の発行予定額は 今年度当初予算案で計21.6兆円。機関投資家に入札方式で発行する市中 発行額149.7兆円の14.4%に相当する。02年度当初予算案では10.2兆円 で9.7%。今年度も中長期的な借り換えリスクの低減にも配慮し、平均 償還年限を着実に長期化して7年9カ月に伸ばす方針だ。

10年前と比べ、超長期債の発行額は2.1倍に増え、市中発行額に占 める割合は4.7%上昇した。15年物の変動利付国債を取りやめたことに 伴い、20年債は3.4倍、30年債は発行額こそ20年債の半分以下だが9.3倍 に増加。40年債も07年11月に発行を始めた。この結果、デュレーション は2年3カ月伸びた。

ニッセイ基礎研究所の千田英明主任研究員は、超長期債の発行増が デュレーション長期化をもたらしており、その分「債券の保有リスクは 徐々に上がってきている」と指摘。今後もこの流れが続くとみる。

過去最低から急騰

低金利時代でも利回り急騰に見舞われた場面もある。30年債利回り はバブル崩壊後の金融システム不安・不況・デフレを背景に03年6 月、0.96%と過去最低を記録。04年9月から約4年間は2.5%程度だっ た。利回りは08年9月のリーマン・ショック後に低下し、菅直人内閣に よる財政健全化方針もあって10年8月には1.535%を付けた。足元で は1.86%程度と長期的に見れば低水準にある。

しかし、03年6月に過去最低を付けた直後、量的緩和政策の解除を めぐる思惑をきっかけに売りが売りを呼ぶ展開となり、1カ月足らずで 1%以上も上昇。10年8月には民主党代表選に積極財政を主張する小沢 一郎元代表(現・国民の生活が第一の代表)が出馬すると伝わると、3 週間足らずで0.5%余り上昇した。

こうした中、財務省が6日実施した30年物の利付国債入札では、最 高落札利回りが4カ月ぶりに1.9%台に上昇。投資家需要の強弱を示す 応札倍率は4.46倍と8カ月ぶりの高さとなった。

膨らむ評価損

将来の金利急騰リスクに対する警戒感は、内外で徐々に強まってい る。日本銀行の白川方明総裁は7月25日、金利が一律2%上昇した場 合、3月末時点の国債保有額に基づくと、大手行で7.3兆円、地銀で も6.0兆円の評価損が発生すると、参院で答弁した。大手行が抱える金 利リスクは一段と増大している。

国際通貨基金(IMF)は先月1日公表した報告書で、邦銀による 「大量の国債保有により、金融システムは急激な利回り上昇の影響を受 けやすくなっている」などと指摘。市場利回りが1%ポイント急騰した 場合でも「影響は管理可能」だが、国債保有状況の「厳格な監視、リス ク管理の改善、緊急時の計画が必要だ」と強調した。

日銀の資金循環統計によると、国債・財融債や国庫短期証券の残高 は3月末に919兆円。うち、国内銀行が16.2%、保険会社が18.9%、公 的および民間の年金基金が合計で10.7%、ゆうちょ銀行などが19.4%を 保有する。また、世界最大の年金基金、年金積立金管理運用独立行政法 人(GPIF)は先月31日、4-6月期の運用資産108兆1685億円 の64.92%を国内債券に振り向けたと発表した。

シュローダー証券投信投資顧問債券チームの金丸壮史ファンドマネ ジャーは、投資家は金利上昇リスクを意識しつつも、野村BPIのデュ レーションが伸びると「指標に連動させるパッシブ運用では追随しなく てはならない」と指摘。超過収益を追求する「アクティブ型でも大幅な かい離を放置するのは難しい」と説明する。

金融緩和で低金利続く

日本の公的債務残高は国内総生産(GDP)の約2倍と主要国で最 悪の状況だ。野田佳彦首相は10日、現在5%の消費税率を14年4月に 8%、15年10月に10%へと引き上げる法案を成立させたが、政府は法案 通りに増税できても20年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス) を黒字化する目標を達成できないと試算。国際通貨基金(IMF)は日 本の政府債務残高が17年にGDPの257%に達すると予測する。

政府の今年度予算に基づく「後年度歳出・歳入の影響試算」による と、国債利回りが来年度に1%上昇した場合、償還と利払いに充てる国 債費は同年度に1兆円、翌年度は2.4兆円、15年度には4.1兆円膨らむ。 財政への悪影響は国債の借り換えに伴って徐々に広がるため、単年度に とどまらないとの試算だ。

ただ、欧州債務危機を背景に世界経済が減速色を強める中、米連邦 準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は追加緩和を示唆。欧州中 央銀行(ECB)のドラギ総裁はユーロ圏内の重債務国の国債買い支え を検討中だという。円高対応やデフレ脱却を求められる日銀も、追加金 融緩和で国債購入を拡大する可能性がある。

日銀が10年10月に5兆円規模で始めた資産買い入れは今年7月に は45兆円に拡大。主な購入対象である残存期間が3年以下の国債は、市 場での利回りが政策金利「0-0.1%」の上限とほぼ同水準まで低下し ている。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りも7月23日 に0.72%と03年6月以来の低水準を記録。今週は0.775%まで下げた。 中長期債の利回り低下は超長期債の相対的な割安感を強める。

宮尾龍蔵審議委員は昨日の講演で、国内の景気・物価見通しについ て「下振れリスクを意識している」と発言。「必要と判断される場合に は細心かつ果断な措置を講じていかなくてはならない」と述べ、追加緩 和の可能性を示唆した。

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