労働市場で時限爆弾抱えるインド-マルチの暴動が波及も

インドの乗用車生産最大手マルチ・ スズキ・インディアのマネサール工場でフォークリフトの運転手として 働くムケシュ・クマール・ヤダフさんは、医療費の支払いに困っている ことを打ち明けた。工場内で今月起きた事故で足の指2本を失ったヤダ フさんは、契約社員のため給料は正社員に比べて少なく、労災も受ける ことができない。

「私たちは会社と関係ないし、会社も私たちに対して何の義務も負 っていない」と話すヤダフさんの月給は約7000ルピー(約9870円)。 「マルチは私たちを単に働かせて金を支払っているだけだ」と言う。

管理職1人が死亡し、同工場の閉鎖につながった18日の暴動にヤダ フさんは参加しなかったが、彼の話は労働者の不満が高まった理由を明 らかにする手掛かりとなる。LMCオートモーティブのアナリスト、ア ンマー・マスター氏(バンコク在勤)は、賃金格差は自動車業界全体に 見られる問題で、他の自動車メーカーもマルチ・スズキの工場で起きた 暴動を踏まえて労働者の不満に耳を傾ける必要があると指摘する。

マスター氏は「経済的恩恵の少なさと不平等意識という組み合わせ は、ささいな口論でも爆発しかねない時限爆弾だ」と説明。「この課題 に取り組まなければ、誰にとっても問題になる。こうした労働問題に対 応しないと、インドから投資家が逃げてしまう」と語った。

正社員の給与

ブルームバーグ・ニュースがマルチ・スズキの従業員7人に取材し たところ、正社員の月給は約1万8000ルピーで、契約社員の3倍近い。

マルチ・スズキの人事部門責任者、S・Y・シディーク氏は会社の 方針を擁護した上で、同社は最低賃金を70%余り上回る水準を支払って いると説明。食事代や退職給付を含めると、同社の従業員の約半分を占 める契約社員の平均コストは1カ月当たり約1万2000ルピーになると述 べた。正社員の場合、同コストは当初1万2500ルピーで、3年後には2 万3000ルピーに増えるという。

マネサール工場での勤務を6月に辞めたラトーレ・ネタジさん (22)は、こうした格差は不公平だと指摘。契約社員として3年半働い た彼は、会社から医療給付を受けられないため、同僚に数回にわたり借 金をしたこともあると語った。非正規社員は会社が提供するシャトルバ スのサービスを利用できないという。

「工場のラインでは誰もが同じ仕事をしているのに、給料に差がつ くのはなぜか」と不満を口にしたネタジさんの月給は約7800ルピーだっ た。

契約社員数ほぼ倍増

インド労働省の最新の年次統計によれば、国内で資格を持つ契約社 員の数は昨年約150万人と、2000年の77万3849人からほぼ2倍に膨らん だ。ニューデリー近郊のノイダにあるVVギリ国立労働研究所のフェロ ー、アヌープ・クマール・サトパティ氏は、一部の州は契約社員のデー タを報告していないため、政府の数字は「著しい」過小評価だと指摘し ている。

マスター氏は、労使関係を改善しなければ、他の国内自動車メーカ ーでも似たような状況が起こり得るとみている。同氏は「火を付けるに はマッチ1本で十分だ」と警鐘を鳴らした上で、「契約社員を正社員に することが一つの解決策になる。負担は増えるだろうが、生産が停止す るコストの方がはるかに大きい」と語った。

原題:Maruti Suzuki Violence May Signal Broader India Labor Time Bomb(抜粋)

--取材協力:Manish Modi、Karthikeyan Sundaram、Shikhar Balwani、Abhishek Shanker.