ゾンビ銀行抱えるドイツ、銀行同盟の最初の一歩に動けるか

欧州連合(EU)の欧州銀行監督機 構(EBA)が昨年、金融機関のストレステスト(健全性審査)実施し た際、ドイツはEBAによる資本の定義に反対した。

EBAへの異論は中央集権的な銀行監督機関への権限移譲に対する 各国政府の抵抗を反映しており、これが銀行同盟をめぐる協議やスペイ ンやアイルランドの銀行救済の負担を他のユーロ圏諸国が引き受ける計 画を妨げる可能性がある。

ソブリン信用リスクを専門とする英コンサルティング会社、スピ ロ・ソブリン・ストラテジーのマネジングディレクター、ニコラス・ス ピロ氏は、「国内の問題銀行をめぐる条件についてドイツはEBAの指 示を一切認めなかった。新しい中央の監督機関に権限を移すと今さら言 うが、そうした機関の展望は不安定なもにのなるだろう」と述べた。

EU首脳は6月、新たな中央機関が設立された後に銀行への直接的 な資金注入に共通資金を活用することで合意。スペインは国内銀行の資 本増強で最大1000億ユーロ(約9兆6400億円)の支援を取り付けたが、 このことは各国の公的債務の水準が膨らむことを意味する。

真の監督権限を持った中央の機関の創設は、共通の預金保険基金や 破綻銀行を整理するメカニズムを盛り込んだ欧州の銀行同盟に向けた最 初の一歩となる。こうしたアイデアはソブリン債危機当初から協議され てきたが、銀行の損失を誰が穴埋めするのかでユーロ圏17カ国が合意で きるかどうかが鍵だ。

納税者負担

簡単なことではないだろう。ドイツのショイブレ財務相は今月、独 議会にスペインの銀行救済策の承認を求めた際、スペインが引き続き国 内銀行の救済で借り入れた資金全ての責任を負うと言明した。

6月28、29両日に開催されたEU首脳会議の6日後、独紙フランク フルター・アルゲマイネ(FAZ)は、中央の監督機関創設後に銀行を 直接支援するとの決定を批判するエコノミスト172人の連名の書簡を掲 載。エコノミストらは、他国の銀行が直面する「膨大な損失」の処理を 一部欧州諸国の納税者に強いる銀行同盟に向けた第一歩だと指摘した。

メルケル独首相は各国が自国の権限をさらに移譲することが銀行救 済のための共通資金活用とユーロ共同債発行の前提条件となると繰り返 し表明しているが、そのドイツでさえEBAなどからの国内の破綻銀行 の整理を求める要求には抵抗してきた。

米サブプライム(信用力の低い借り手向け)住宅ローンなどリスク の高い投資で2008年の金融危機時に経営危機に陥ったドイツの地方銀 行、ウェストLBの閉鎖には4年かかった。EUの欧州委員会が独当局 に閉鎖を強く求めてきたにもかかわらずだ。欧州委は先週、公的支援を 受けた銀行2行の再編計画を受理した。

政治的意志

へッジファンドに助言する米TFマーケット・アドバイザーズの創 業者、ピーター・チアー氏は、「ゾンビのような銀行を生み出している のがドイツだ。ドイツはそうした死に体銀行を守るため、銀行の整理を 試みるEBAや他のEU機関に抵抗してきた。中央の銀行監督機関に権 限を移譲するという点でドイツがそれほど素早く動くことはないだろ う」と語った。

ダブリンにあるトリニティ・カレッジのコンスタンティン・グルジ エフ講師(金融学)は、中央の機関が創設されたとしても他国の破綻銀 行を整理するための資金を賄うことを各国に合意させるのは難しいと指 摘。「アイルランドの銀行であろうがスペインの銀行であろうがこうし た銀行の損失に資金を出す政治的意志は、一定の財力のある欧州諸国に はまだない」と話した。

原題:European Banking Regulator Imperiled by Zombie Banks in Germany(抜粋)

--取材協力:Nicholas Comfort、Jim Brunsden、Robert Friedman.