日銀が円高阻止へ欧州債購入を、ユーロ安加速懸念-伊藤隆敏東大教授

東京大学大学院の伊藤隆敏教授は、 欧州債務問題を背景に円相場が対ユーロで上昇基調にある中、円急伸回 避へ日本銀行によるユーロ建て債券の購入を選択肢の1つとして検討す べきだとの考えを示した。25日に行ったブルームバーグ・ニュースのイ ンタビューで語った。円相場は24日に1ユーロ=94円12銭と11年ぶりの 水準に上昇、引き続き94-96円台の高値圏で推移している。

旧大蔵省(現財務省)で副財務官も務めた伊藤氏は「ユーロ暴落が 起きれば底はもっと深い。ユーロ安は進行する余地がある」と指摘。そ の上で「日銀が円を刷ってEFSF(欧州金融安定化基金)債などを購 入しユーロ転することで、実質的な介入効果を持つ措置を取っても何ら おかしなことはない」と話す。日銀が強い姿勢を示すことで、円高阻止 へ向けたメッセージを市場に発信する相乗効果も期待できるという。

さらに、伊藤氏は欧州中央銀行(ECB)が国債買い入れの増額に 踏み出すことになれば、日銀が協調してイタリアやスペインの国債を購 入すればよいとも指摘。「欧州の金融システム安定化」のためにユーロ を支えるとの大義名分があれば、財務省所管の為替政策を侵犯すること にならず、為替操作だなどと「欧米からとやかく言われるものでもな い」とし、「理屈付けやタイミング」の重要性も強調する。

財務省は欧州支援の一環としてEFSF債を購入しているが、手持 ちの外貨準備を活用するため、円安効果は期待できない。為替介入の場 合は、購入した外貨資産が外準に積み上がる結果、為替リスクが膨らむ ばかりだ。また、南欧の債務問題を背景に「じりじりと進む円高・ユー ロ安に介入しても意味がない」と伊藤氏。日銀の外債購入なら介入資金 を市場に放置する「非不胎化」と同様の効果があると説明する。

ユーロ対応力に弱さ-輸出企業

日銀の山口広秀副総裁は外債購入について、25日の会見で「円高是 正のための政策措置が外国債の購入を通じて行われるのだとすれば、日 銀法との関係で大きな問題を引き起こす」と慎重な姿勢を示したばか り。しかし、伊藤氏は「財務省と日銀間の調整の問題だ」とし、「日銀 が外債を含むリスク資産を購入し、評価損が出ても責任は問わないとの 姿勢を財務省が示し、日銀を後押しすればよい」とする。

週明けの東京株式市場では、欧州売上高比率の高いキヤノンやリコ ー、ソニーなどの輸出関連株が、円高による収益下振れを嫌気して売ら れ、全体の株価を押し下げている。伊藤氏は輸出企業の対ユーロの対応 力の弱さを指摘し、「円はドルではなく、むしろユーロのほうが影響は 大きい」と懸念。その上で、「今はまだ外債購入をする必要はないが、 手段を準備し、ユーロ暴落に備えるべきだ」と強調する。

伊藤氏は、ユーロ圏外の投資家は資金を引き揚げてドルや円に振り 向けているが、域内の資金はドイツに向かい、同国債の金利低下につな がっていると言う。ユーロの資金がドイツからも逃げ出せば、さらに大 きな下げが来る。ドイツ国債の金利が上昇に転じれば、ユーロ安が加速 する。伊藤氏は、米国の格付け会社ムーディーズによるドイツ国債の格 付け見通しの引き下げは、その可能性を示唆していると警告した。

日銀による外債購入については、岩田一政日銀元副総裁が昨年10 月、政府の国家戦略会議でドルやユーロの暴落に備えて50兆円規模の金 融危機予防基金の創設を提案。先に日銀の審議委員に就任した佐藤健裕 氏は24日の会見で、デフレ脱却に向けて日銀による資産買い入れを多様 化する必要があるとし、「外債買い入れも一案だ。為替操作ではなく資 金供給を増やすためと位置付ければよい」との認識を示していた。