野村:他に複数のインサイダー情報漏れも-信頼回復の道遠い

野村ホールディングスは渡部賢一最 高経営責任者(CEO、59)がインサイダー問題で引責辞任し、後任に 野村証券の永井浩二社長(53)が就くことになった。しかし、すでに当 局の摘発事案以外に複数の事例で社員から外部に情報が漏れた可能性が 浮上するなど、信頼回復への道のりは遠い。

8月にCEOに就任する永井氏は26日の会見後、ブルームバーグ・ ニュースのこれで膿は出し切ったのかとの質問に、「それはこれから。 新しい体制でしっかりとやっていく」と言及。しかし、2010年以前の分 の調査については「現時点では全部ほじくってとは正直考えていない」 と述べた。

トップ人事刷新と同時に26日発表した10年1月以降の企業の公募増 資に絡む追加調査で野村は、当時の機関投資家営業一部で、接待などを 通じて密接な関係にあった顧客に対する新たな情報伝達が行われた可能 性が高いことを明らかにした。ただ、会見の場では具体的にどのような ケースだったのかについてや、個別銘柄名などへの言及を避けた。

中塚一宏金融担当副大臣は17日、ブルームバーグ・ニュースとのイ ンタビューで、野村について「一切の膿を出していただきたい」と言 明。職業倫理や商慣行も含め、問題点を洗いざらい明らかにするよう求 めていた。

証券取引等監視委員会が3月以降に摘発した企業の公募増資などを めぐるインサイダー取引5事案のうち、野村は3件で未公開情報を外部 に漏えいする関与が判明。すでに政府系金融機関や株式上場を計画の日 本航空などで債券発行の主幹事や引き受け証券の取りまとめ役から除外 されるなど影響が広がっている。

海外縮小か

渡部CEOは08年4月に就任。同年9月には柴田拓美最高執行責任 者(COO、59)とともに経営破たんした米リーマン・ブラザーズのア ジア・欧州部門の買収を主導し、「ワールドクラス」を目指した。しか し、人件費などで09年3月期は過去最大の赤字を計上。その後も欧州危 機などで業績は厳しく、株価も約38年ぶりの低水準となっている。

永井新CEOは会見で、今後について「過去にとらわれない経営戦 略を取っていきたい。海外については適正なサイズのグローバルフラン チャイズに作り直す」などと述べた。

吉川淳・新最高執行責任者(COO、58)は26日夜、投資家向けの 電話説明会で、米国のエクイティ・リサーチ(株式調査)部門も縮小な ど、見直しの対象となるとの考えを示した。

ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは、野村のイン サイダー問題について「トップを変えれば企業の体質が変わるのか、と いう不確定要素は依然として残る」と指摘。「国内畑を中心としてきた 永井氏がCEOになると、海外で稼げない野村が国内ビジネス依存に逆 戻りするイメージが強くなる」と述べた。

ヘッジファンドとの取引

野村の追加調査では、ヘッジファンドからアナリストのレーティン グ変更に関する情報を変更前に提供するよう求められていた事実も判明 した。ヘッジファンドに対し、個別銘柄の売り推奨を公募増資の公表前 にタイミングよく行っていた複数の事例が確認されたという。

また、ヘッジファンドとの取引に関して、個人の携帯電話や通話録 音機能のない会社貸与の携帯電話を頻繁に利用するなど「不自然な点が ある社員」がいたことも明らかにした。

野村外し

3月以降の金融当局からの相次ぐ摘発を受け野村では、外部弁護士 による調査を実施し、その結果を6月29日に発表した。利益を追求する あまり、法人部門から営業部門への恒常的な情報漏れが明らかになり、 渡部CEOらの減給や一部業務自粛などの社内処分を行った。

こうした中、日本政策投資銀行が今月3日、債券発行の主幹事を野 村から三菱UFJモルガン・スタンレー証券に変更。住宅金融支援機構 も住宅ローン担保証券の主幹事から野村を除外。また株式上場を計画し ている日本航空もグローバルコーディネーターから外すなど顧客企業が 資金調達案件で野村を敬遠する具体例が増えている。

渡部氏は辞任会見で「今回の事案を生んだ背景、要因について深く 受け止めた」などと述べた。社内処分などを発表した6月29日の会見で は「私の責務は再発防止策、改善策を着実に実行していくことだ」と述 べ、「辞任の考えはない」と引責辞任を否定していた。

海外拠点は赤字

証券監視委は現在、野村に特別検査に入っている。一方、野村でも も社内調査を続けている。金融庁は企業の増資に絡むインサイダー取引 が相次いだことを重く見て、内外12証券に対して法人関係情報の管理体 制などを自主点検し、8月3日までに報告するよう求めている。

松下忠洋金融担当相は27日午前の閣議後会見で、野村の経営トップ 刷新などについて「自浄作用が相応に発揮されておりおおむね評価でき る。一つのけじめがついたが、これからが大事だ」と述べた。今後は、 「一連の社内調査と改善策をさらに精査し、監視委の特別検査の結果も 踏まえ、行政対応を検討していきたい」という。

野村が26日発表した2012年4-6月の連結純利益は、欧州債務危機 に伴う市場低迷で前年同期比9割減の19億円にとどまった。海外拠点の 税引き前損益は米州、欧州、アジア・オセアニアの合計で121億円の損 失で、9四半期連続の赤字となった。

渡部氏とともに柴田CEOも7月31日に退任する。新CEOの就任 は8月1日付。渡部氏はHDの常任顧問に、柴田氏はHDの顧問に就任 する予定だ。

●永井浩二(ながい・こうじ)1959年1月25日生まれ。東京都出 身。81年中大法卒、同年野村証入社、豊橋、岡山、京都支店長などを経 て、03年に企業金融本部担当の取締役に。その後07年常務、09年専 務、11年副社長、12年4月野村証社長。

--取材協力:伊藤小巻、佐藤茂、谷口崇子 Editors: 平野和, 浅井秀樹

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