デフレや不健全な金融政策の脱却、経常黒字消失で実現-三國陽夫氏

独立系格付け会社を1983年から経営 し、経済同友会の副代表幹事も務めた三國陽夫氏は、デフレと景気低迷 は輸出で稼いだ資金を国内で有効活用しなかった結果だとみている。今 後は経常黒字が消失に向かうため、成長に必要な資金の海外流出に歯止 めがかかり、内需主導で経済が活性化し、財政再建も進むと予想する。

三國氏(73)は「円デフレ」や「黒字亡国」など国際金融に関する 著作も多く、2009年11月には日米の賃金水準などに基づき1ドル=75円 への円高・ドル安進行を予測した。23日のインタビューでは「日本は輸 出に逆風となる円高を恐れるあまり、稼いだ経常黒字を市場で円に換え ず、為替介入による外貨準備もあり、国全体としてはドルを抱え続けて きた」と指摘。「お金を持ち帰って国内経済の活性化に役立てなかった ため、名目成長率の長期低迷を招いた」と批判した。

三國氏は、日銀・金融機関から経済全体に供給された通貨の残高を 示すマネーストックは「年20兆円程度増えてきた」が、最盛期の経常黒 字額はこれにほぼ匹敵すると指摘。マネーストックの増分のほとんどが 「黒字として海外に流出したも同然」と述べた。さらに「日本銀行は事 実上、経常黒字を上回るお金を出そうとしてきたが、稼いだ外貨を円に 換えないツケを日銀が払うのは健全な金融政策ではない」と指摘。しか も、政策金利を0.5%まで下げた「90年代半ばからは『ゼロ金利のわ な』に陥って十分に資金供給できず、デフレに至った」と説明した。

日本経済、先行き明るい

日本は第2次オイルショック後の約30年間にわたって経常黒字を維 持。世界的な金融危機までは徐々に拡大し、07年には24兆9341億円と過 去最大を記録した。東日本大震災や円高に見舞われた昨年は9兆5507億 円に縮小した。一方、生活実感に近いとされる名目国内総生産( GDP)は戦後最高だった97年から昨年までに10.5%減少した。

三國氏は「貿易収支は赤字基調に転じており、経常黒字は今後、な くなる方向に向かう」とみる。「海外に流出するお金が減るうえ、円高 で対外的な購買力は向上している。輸出産業の単なる衰退にならないよ うな技術革新は必要だが、お金が国内で動き、消費・投資が増える形の 経済成長になる」と予想。日本経済は「この20年間で最も明るい局面に 来ている」と語った。

経常黒字の縮小が財政の持続可能性を揺るがすとの見方に対して は、国内経済が活性化すれば「デフレも自ずと脱却する。税収が増え、 財政は急速に好転する」と主張。金利水準は成長に見合って緩やかに上 昇しても、国債相場の暴落などは起きないと反論した。

衆院は先月、野田佳彦首相が推進する消費増税法案を可決。現在 5%の消費税率を14年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げる内容の 同法案を参院で成立させ、計画通り実施できれば97年4月以来となる。 日本の公的債務残高はGDPの約2倍と主要国で最悪の状況だが、長期 金利の指標となる新発10年物国債利回りは世界で2番目に低い。23日に は0.72%と約9年ぶりの低水準を記録した。

三國氏は、消費増税は実施すべきではないとの立場だ。「経常黒字 国はただでさえ、生産設備に比べて消費が少ない。従って、消費を1円 でも減らす政策は採るべきでない」と主張。「英国、米国とも債権大国 としてのピーク時には消費税に重きを置いていなかった」と指摘した。

--取材協力:小笹俊一 Editors: 持田譲二, 山中英典

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