バークレイズ前CEO辞任、映画「ウォール街」時代終焉へ

英銀バークレイズのロバート・ダイ アモンド前最高経営責任者(CEO)はかつて、自身の抱く世界規模の 野望にそぐわない規制当局の姿勢を「小英国主義」と冷笑した。そのダ イアモンド氏が権力移行のきっかけを作り、世界最大の金融拠点である シティーの統治方法を変えることになった。自身はCEO職を失うとい う代償を支払った。

英国の2大金融監督機関であるイングランド銀行(英中央銀行、 BOE)と英金融サービス機構(FSA)のトップであるキング総裁 (64)とターナー長官は2日、バークレイズ会長をBOEに召喚するこ とで合意、ロンドンで最も知られたバンカーである同氏をもはや信頼し ていないとの立場を表明。この瞬間、シティーへの規制方針の変更が明 確になった。

2008-10年に英財務政務次官を務めガートモア・インベストメン ト・マネジメントの元会長でもあるポール・マイナーズ氏は「シティー では、心得違いをすれば解雇される状況になったことを示している」と 指摘。「よからぬことをたくらんでいる面々は背筋が凍り付いたことだ ろう」と語る。

ダイアモンド氏が歩んだ栄枯盛衰は、ロンドン金融業界の軌跡を映 し出している。10年間にわたる規制緩和で世界首位の金融センターの地 位を確立したロンドンは今、人員削減とロンドン銀行間取引金利 (LIBOR)操作問題など相次ぐスキャンダルの発覚で、大衆の激し い怒りを買っている。金融業界が生み出した富が失われ、英国全体の経 済を脅かす可能性に直面しており、同氏の辞任は規制当局が重要な分岐 点に立っていることを浮き彫りにしている。

ゴードン・ゲッコー

大恐慌以降で最大の金融危機を阻止できなかったとの批判を受け、 BOEとFSAは規制強化を進めており、1987年公開の米映画「ウォー ル街」で主人公として描かれた投資家ゴードン・ゲッコーに象徴される 金融業界の文化を変えようとしている。

ダイアモンド氏は1年半前、銀行業界の「反省と謝罪」の時代を終 わらせるべきだと表明して大衆の怒りに反攻する姿勢を示した。これ は、過去10年間規制当局が行使するのを手控えてきた影響力を再び取り 戻すきっかけとなった最も顕著な例だ。

バークレイズの元CEOでダイアモンド氏を起用したマーチン・テ ーラー氏は「当局が常に権力を握っている。ついにそれを行使する時が 来たようだ」と語る。同氏は、1998年のロシア債務危機で損失が出た際 に責任者だったダイアモンド氏を自身が解雇すべきだったと表明してい る。

弾丸込めた拳銃

キング総裁は17日、英議会の財務委員会で証言し、バークレイズの マーカス・エイジアス会長に対し、ダイアモンド氏は辞任(3日)の前 日にはBOEやFSAの支持を失っていたと語ったことを明らかにし た。同委員会のタイリー委員長はその状況について「つまり、弾丸を込 めた拳銃を手渡したわけですね」と問い返した。

キング総裁は委員会で「世界は変わった」と語り、英政府が来年以 降FSAの権限をBOEに移管する決定をする前の2007年や08年だった ら、今回のような行動は取れなかっただろうと付け加えた。

FSAのターナー長官も委員会で「07年や08年だったら今回のよう な行動は決して取らなかっただろう。あらゆる意味で監督を強化する方 向に向かっている」と述べた。

ダイアモンド氏は、バークレイズがLIBOR設定をめぐる談合問 題で2億9000万ポンド(約350億円)相当の制裁金を科された1週間後 に辞任した。FSAはこの数カ月前にバークレイズについて、規制や会 計規則の抜け穴を利用しようとしていると指摘していた。キャメロン英 首相や野党・労働党のミリバンド党首ら政治家たちは金融業界への批判 を強めている。

マーケットメーカー(値付け業者)のウィンターフラッド・セキュ リティーズの創業者、ブライアン・ウィンターフラッド氏は「これまで は規制が極めて緩やかだったため、今後、銀行など金融業界の関係者は 利益を押し上げるのが負担になるかもしれない。これが新たな出発点に なるだろう」と述べた。

ビッグバン

ダイアモンド氏は米ボストン郊外の教師の両親の下、9人兄弟の1 人として生まれた。1988年にロンドンに移り、モルガン・スタンレー・ インターナショナルの債券トレーディング部門の運営に携わった。サッ チャー英元首相が金融市場の規制を緩和した、いわゆる「ビッグバン」 の2年後のことだった。この改革は資本と人材を引き付け、25年間にわ たる証券取引ブームが幕を開けた。

調査会社Z/Yenグループによれば、ビッグバンから20年以上が 経過し、ロンドンはニューヨークや香港を抜き世界最大の金融拠点に成 長した。ロビー団体ザ・シティーUKによると、ロンドンの金融業界の 雇用者数は63%増加し約20万人に達し、金融サービス業界が英国内総生 産(GDP)に占める割合は2010年に9%と、1992年時点の6.5%から 拡大した。同業界は英国の税収のうち12%を占め、最も多くなってい る。

原題:Diamond’s Exit Fells Final Pillar in London’s Gekko Generation(抜粋)

--取材協力:Robert Hutton、Ben Moshinsky.

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