フェイスブック尻目に米高級ブランド首位-IPO銘柄で

2003年当時、米高級ファッションブ ランドのマイケル・コース・ホールディングスは苦しみもがいていた。

ジョン・アイドル最高経営責任者(CEO、53)は3月、米ペンシ ルベニア大学ウォートンスクール(経営大学院)での講演で、「マイケ ル社は赤字を垂れ流していて、われわれが買収しなかったら倒産してい たかもしれない」と打ち明けた。同業のダナ・キャラン・インターナシ ョナルでCEOを務めていた同氏は、香港拠点のプライベートエクイテ ィ(未公開株、PE)投資会社スポーツウエア・ホールディングスを含 むパートナーと組んでマイケル社を買収した。

それ以来、マイケル社は順風満帆だ。ブルームバーグ・マーケッツ 誌8月号が報じた。04年当時2000万ドル(現在の為替レートで約16億 円)にすぎなかった同社の売上高は今や13億ドルに拡大。12年3月通期 の純利益は1億4700万ドルに達した。同社のトータルリターン(総合収 益率)は昨年12月の新規株式公開(IPO)後90日間で144%となっ た。

これにより同社は、ブルームバーグ・マーケッツがまとめたパフォ ーマンスが高いIPO銘柄の年間ランキングで首位を獲得した。同ラン キング調査は、リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻し た08年9月から11年末までの期間を対象に、5億ドル超規模のIPOを 実施した世界179社の上場後90日間のトータルリターンを集計した。

リーマン破綻後のIPO市場は1年余りにわたって凍結状態だった ため、10-11年に新規上場した企業が大半を占める。マイケル社の成功 と極めて対照的なのは、この10年で最も期待された銘柄の一つでありな がら険しい道を歩んでいるフェイスブックだ。

フェイスブックが最下位

9億人余りが利用するソーシャル・ネットワーク・サービス (SNS)最大手フェイスブックの株価は、IPO価格(38ドル)から 一時25.87ドルまで値下がりした。7月17日現在では28.09ドルまで値を 戻している。ブルームバーグが集計したデータによると、11年以降の IPO規模上位30社の上場後1週間のパフォーマンスをみると、フェイ スブックが最下位だ。

一方、昨年12月14日に上場したマイケル社の株価は7月17日現在で もなおIPO価格のほぼ2倍の水準を維持している。

マイケル社は1981年に衣料品の製造を始めた。その後、香水や美容 品へと事業を広げた。12年3月期の売上高は前年比62%増、純利益は2 倍以上に達した。

ジェット族のライフスタイル

同社のIPO成功についてアイドル氏は、「特にマイケル率いる優 れた経営陣と、ジェット族のライフスタイルに的を絞った明確な位置付 けが素晴らしいブランドであることを証明している」と語った。ジェッ ト族とは、世界各地を自家用ジェット機で自由に飛び回るセレブらのこ とだ。

マイケル社は香港に本部を置いているが、創業デザイナーでチー フ・クリエーティブ・オフィサーのマイケル・コース氏(52)自身は今 でもニューヨークを中心に活動している。同社が年内に大中華圏での店 舗数を2倍強の15店舗に増やす目標を掲げる中、アイドル氏の戦略は中 国との強いつながりが鍵を握る。

IPOのパフォーマンス番付では上位10社のうち7社をアジア企業 が占めた。

アジアの豊かさ

米投資会社TCWグループのチーフグローバルストラテジスト、コ マル・スリクマル氏は「08年以降、力強く持続可能な成長を求めるな ら、それを実現したのはアジア地域であり、その他にはロシアがある程 度達成したのみだ」と指摘。「アジアでは中間層の人々が高額所得グル ープへ、低所得層は中間層へという動きが起きている。こうした動き全 てが高級品の消費拡大に貢献する」と語った。

アジアで富が拡大したのは中国やマレーシア、韓国などでここ数年 に実施された鉱工業企業のIPO成功が一因だ。パフォーマンスランキ ング上位には、中国の天然ゴムメーカー、海南天然橡膠産業集団や韓国 航空宇宙産業、マレーシア・マリン・アンド・ヘビー・エンジニアリン グ・ホールディングス、モンゴリアン・マイニングが入っている。

ブルームバーグが集計したデータによると、10年以降のIPO総額 の半分余りをアジア企業が占める一方、米企業はここ数年で15%に低下 した。

商品取引大手のグレンコア・インターナショナルは商品相場の値下 がりが株価に影響。同社はブルームバーグ・マーケッツのIPOパフォ ーマンスランキング下位20社の中の1社となった。11年のIPO規模で 最大だった同社の株価は上場後90日間で25%超下落し、7月17日の終値 ベースでもIPO価格をはるかに下回っている。

同社はロンドンと香港市場で100億ドル規模のIPOを実施した が、投資会社ホランド(ニューヨーク)のマイケル・ホランド会長は、 IPOの際にグレンコア株を売ったのは賢明な投資家だったと話す。

フェイスブックの取引障害

グレンコアのデビューは少なくとも順調だったが、フェイスブック は取引障害に見舞われ、モルガン・スタンレーを中心とする引き受け幹 事が非公開情報を選別的に開示したとの疑惑が発生した。

ブルームバーグ・マーケッツのIPOパフォーマンス番付上位20位 に入ったインターネット・SNS関連企業は、米ジンガとロシア のMail.ru Group(メール・ドット・ルー・グループ)の2社のみ。た だ、ジンガの7月17日現在の株価も米パンドラ・メディアや米グルーポ ン同様にIPO価格を下回っている。

新規公開株に投資するIPOXシュスター(シカゴ)の創業者、ジ ョセフ・シュスター氏は、10、11両年の市場の不透明感を考えれば SNS関連銘柄の株価低迷は予測可能だったと話す。

アジア重視の高級ブランド

中国の景気鈍化や欧州債務危機にもかかわらず、高級品需要は引き 続き好調を維持している。この恩恵を受けているのが、昨年6月に香港 で24億8000万ドル規模のIPOを実施したイタリアの高級ファッション ブランド、プラダだ。同社は世界最大の高級ブランドメーカー、フラン スのLVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンなど競合他社よりも高い バリュエーション(株価評価)を得た。上場から90日目のプラダの株価 はIPO価格を2%下回ったが、それ以降大きく値を上げ、今年は7 月17日までに34%上昇している。

プラダのパトリッツィオ・ベルテッリCEOは5月、ブルームバー グ・ニュースとのインタビューで、12、13両年は売上高の40%をアジア 太平洋地域で稼ぐとの見通しを示した。

ソーシャルメディアは35歳以下の人々に大流行しているかもしれな いが、投資家に利益をもたらしているのはアジアに展開する高級ブラン ドだ。

原題:Luxury Beats Technology as Michael Kors Tops Ranking of IPOs(抜粋)

--取材協力:Laurie Meisler.