造船支援ファンド社長、3年で受注1000億円を目指す-年内第1号も

日本製船舶の輸出促進を目的として 4月に設立されたファンド会社の日本船舶投資促進(JSIF)は、3 年間の案件募集の期間に最低でも総額1000億円規模の受注額を目指す。 複数の問い合わせや相談があり、早ければ年内にも第1号となる契約が まとまる可能性もある。

同社の川戸忍社長(元双日マリンアンドエンジニアリング社長) が12日、ブルームバーグニュースとのインタビューで語った。同社長 は1000億円について「かなり低めに見積もった金額」と述べ、目標の下 限であることを示唆した。現在「十数件の引き合いが来ている」と明ら かにし、複数の案件の作業を進めて、ファンドの組成を急ぐ。

JSIFは、低迷する日本の造船業界の振興を目指して、国土交通 省の主導で三菱重工業や今治造船など国内造船21社が共同出資して設立 したファンド会社。収益性を重視せず、造船会社の船舶受注の確保を最 優先する。船舶の調達をチャータ形式で行う海外船主に向けて造船会社 が営業活動を行う際に、JSIFが資金調達のスキームなどを提供し、 造船会社の受注拡大を支援する。

戦後長きにわたって世界一を誇った日本の造船業界は、造船量で韓 国や中国に追い越され、現在は3位に低迷している。日本造船工業会の 資料によると、2011年の世界の造船受注量は韓国が2520万トンでトッ プ、次に中国が1544万トン。日本は18年ぶりの低水準となる772万ト ン。

日本船舶輸出組合の統計によると、日本からの輸出も11年度に は808万トン。金額ベースで約8000億円。過去10年間で最も輸出が大き かった07年度は2739万トンで、3分の1以下に大幅減少している。

造船業界の案内役

川戸社長は、船舶金融について「船主の信用状態ではなく、世界の 金融情勢の先行き不透明のために、船価が安い買いにもかかわらず、な かなかファイナンスがつかない状態」と指摘する。海外では供給過剰な どの理由で、船舶融資を行っていた主要金融機関19行のうち、13行が新 規の融資を凍結しているのが現状。このため、JSIFは造船各社の競 争力強化に向けて、資金調達や受注などで側面支援する。

具体的には、JSIFが1船ごとに国際協力銀行や(JBIC)民 間銀行の協調融資と造船会社の出資を受けて特別目的会社(SPC)を 設立。同SPCが船舶を保有して、主に海外の船主と傭船契約を結び、 これに基づいて造船会社に船舶を発注する仕組み。このスキームを利用 すれば、造船会社にとってコストやリスクが抑えられる長所がある。

川戸社長によると、スキームの骨子として、制度金融を使っている ため最大で80%の融資となり、残りの20%分は造船会社や船主などの投 資となる。これまでは造船所が先に全額負担する形で建造を始め、その 後で売り手を探すなどのリスクの高いビジネスが行われていた。

同社長は、資金調達でのノウハウなどの面で、「業界での道先案内 人の役割を果たしたい」という。同社のファンドの申し込みは15年3月 が期限となっており、「3年の期間をめどにまず事業を展開し、実績を 積み重ねることで信用の度合いを高めたい」と述べた。

JSIFの強みの一つは、国内最大の船舶投資ファンドを運営する アンカー・シップ・パートナーズ(東京・中央区)の辻肇社長が取締役 (非常勤)として参画していること。日本では数少ない船舶投資の専門 家。川戸社長は辻氏について「ファンド運営のノウハウに極めて秀でて 実績もあり、期待している」として事業成功に自信を示した。

さらに川戸社長は、月内にもメガバンクなどの金融機関と総合商社 など10社程度に増資を受けることを明らかにした。出資比率は既存株主 と均等になる形で、造船、金融、商社で構成され、業界支援のためのフ ァンド会社が完成することになる。