日銀:固定金利オペ5兆円減、短期国債買い入れは5兆円増額

日本銀行は12日開いた金融政策決定 会合で、市場への資金供給で応札額が提示額に達しない札割れが多発し ていることを受けて、固定金利方式の共通担保オペを5兆円減額し、代 わりに短期国債買い入れを5兆円増額することを決定した。この結果、 資産買い入れ等基金の総額70兆円は変わらないまま、資産買い入れが45 兆円、固定金利オペは25兆円となる。

政策金利を含めたこのほかの金融政策運営方針については、全員一 致で現状維持を決定、追加緩和は見送った。海外の中央銀行が相次いで 金融緩和に踏み切る中、日銀は当面、既に表明している資産買い入れ等 基金の活用を着実に進め、その効果を見極める構えだ。

ブルームバーグが日銀ウオッチャー13人を対象に行った調査では9 人が現状維持を予想していた。審議委員就任が決まったモルガン・スタ ンレーMUFG証券の佐藤健裕氏と野村証券の木内登英氏は、今会合に 任命が間に合わず出席しなかった。

今会合では4月に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート) の中間評価を実施。消費者物価指数(生鮮食品を除いたコアCPI)の 見通し(委員の中央値)は2012年度を前年度比0.3%上昇から0.2%上昇 に下方修正したが、13年度は同0.7%上昇に据え置いた。実質国内総生 産(GDP)成長率の見通しは12年度が同2.2%増、13年度が同1.7%増 と、4月の見通し(それぞれ同2.3%、同1.7%)をほぼ据え置いた。

金融緩和とはみなせず

JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは日銀の決定につ いて「短期国債を増やす代わりに長期国債の買い入れを増やしていた ら、緩和とみなすことができたかもしれないが、技術的な措置に過ぎ ず、金融緩和とみなすべきではない。日銀が追加緩和を見送ったので、 失望する市場参加者もいるだろう」としている。

日銀は札割れ対策としてこのほか、短期国債の買い入れをより確実 に行うため、同買い入れにおける入札下限金利(現在0.1%)を撤廃す る。コマーシャルペーパー(CP)の買い入れについても同様とする。 固定金利オペについては「期間3カ月」と「期間6カ月」の区分をなく し、すべて「期間6カ月以下」とする。

欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)、中国人民 銀行は5日、相次いで金融緩和に踏み切った。さらに、6日発表された 6月の米雇用統計が市場予想を下回ったこともあり、31日から2日間の 予定で開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)でQE3(量的緩和 第3弾)が実施されるとの見方もくすぶっている。

遠のく1%

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「原油価格 下落によって12年度のCPI見通しに下方修正圧力が加わっており、日 銀が目指している1%がやや遠のいている」と指摘。クレディ・スイス 証券の白川浩道チーフエコノミストも「景気は復興需要や安定した個人 消費に支えられているが、世界景気減速の影響を受けるのは必至」と し、1%に達するシナリオは「全く描けない」とみる。

新審議委員のうちモルガン・スタンレーMUFGの佐藤氏が5月25 日のリポートで示した13年度のコアCPI見通しは同0.3%低下。野村 の木内氏が部長を務める同証券金融経済研究所経済調査部の見通し(5 月22日時点)は同0.3%上昇と、いずれも日銀の見通しを下回る。

シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは会合前、両氏 が政策委員会に加わることで「日銀のインフレ見通しのレンジが大きく 切り下がることが予想される。この点は、追加緩和に対する圧力を強め ることになる」と予想していたが、ひとまず両氏と残りの政策委員との 「対決」は次回会合以降に先送りされた。

民間エコノミスト2人に期待も

第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「日銀の市場と の対話路線はここ半年ほど後退している」と指摘。両氏の加入後の1つ の争点は「白川方明総裁がCPI1%の達成が13、14年度にできると言 っている点をただすことだろう。民間エコノミストとしては、何であの ような見通しになるのか分からないと皆思っている」という。

バークレイズ証券の森田長太郎チーフストラテジストは「両氏とも 積極緩和派との評価のもとでのボードメンバー入りであり、意図的にハ ト派的な発言をしてゆくものと予想される」と指摘。その上で「あくま でも9票のうち2票であるという現実を踏まえれば、他のボードメンバ ーあるいは日銀執行部を十分に説得できるだけの理論的根拠を踏まえた 議論展開ができるかどうかが重要になってくる」という。

さらに、「日銀の選択肢として、今のところ長期国債購入政策以外 に残されているものが多くあるわけではなく、市場にある積極緩和論と のギャップを埋める役割が両氏には問われる」と指摘。「可能かつ実効 性のある選択肢を提示できなければ、従来からの日銀ボード内の議論に 最終的には埋没してしまう可能性も少なくないだろう」としている。

白川総裁が午後3時半に定例記者会見を行う。議事要旨は8月14日 に公表される。

金融政策決定会合、金融経済月報等の予定は以下の通り。

 会合開催       総裁会見 金融経済月報  議事要旨
8月8、9日  8月9日   8月10日  9月24日
9月18、19日  9月19日   9月20日    10月11日
10月4、5日   10月5日     10月9日    11月2日
10月30日       10月30日        -      11月26日
11月19、20日   11月20日     11月21日    12月26日
12月19、20日   12月20日     12月21日   1月25日
1月21、22日  1月22日   1月23日  2月19日
2月13、14日  2月14日   2月15日  3月12日
3月6、7日  3月7日   3月8日   4月9日
4月3、4日  4月4日   4月5日   5月2日
4月26日    4月26日    -    5月27日
5月21、22日  5月22日   5月23日   6月14日
6月10、11日  6月11日   6月12日   未定

総裁会見は午後3時半。金融経済月報は午後2時、経済・物価情勢 の展望(展望リポート)は10月30日と4月26日。議事要旨は午前8時50 分。

--取材協力:Andy Sharp. Editors: 小坂紀彦, 杉本 等

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