米学生ローンの膨張、高等教育の平等脅かす-残高80兆円

ジェラルディン・ダミアニ・ブレズ ラーさんは、ニューヨーク州立大学で学ぶため1960年代後半に学生ロー ンで5000ドル(現在のレートで約40万円)を借り入れた。看護師にな り、結婚。住宅を購入し、3年未満で学生ローンを返済した。

現在、息子のデービッドさん(38)はニューヨーク大で修士号を取 得した際に借り入れた約8万5000ドルものローンを抱えている。常勤の 仕事が見つからず、ニューヨーク州ホワイトプレーンズの自宅で両親と 同居。学生ローンの返済は3年間先送りしている。

ブレズラーさん一家が2世代にわたって受けた学資援助の実態は、 アメリカンドリームの意義を明らかにする上で、住宅ローン同様に参考 になる。学生ローンプログラムは当初、意欲的な10代の若者が、生涯で 所得が増加した際に完済できる少額借り入れの制度だった。それが現在 では、学生ローンの残高は1兆ドルに膨れ上がり、景気回復の足かせに なるとともに、大統領選挙の火種の一つになっている。米国の高等教育 の平等主義をも脅かしている。

デービッドさんは毎日、求人情報を探して電子メールや電話で問い 合わせをし、短期のコンサルティングの仕事を引き受けている。「毎朝 起きるとオオカミがそばでうなり声を上げているような気がする。家を 買うなんて、想像したこともない」。

当初は学生を支援するために設けられ、貸付額もそれほど多くなか った連邦プログラムは、いかにして制御不能となり、ブレズラーさん一 家のような低・中所得者層世帯の重荷になり始めたのだろうか。

元学生の債務者層

その答えは、医療制度と住宅ローンの危機に通じるものがある。大 学の学費は過去40年間、インフレ率を上回るペースで高騰。最も学費の 高い私立大の場合、年間6万ドルに上る。共和党も民主党も共に検討を 先延ばしにしてきた。借り入れを促し、学費高騰の現状を無視したため に学生ローンは住宅ローンほどの規模にまで膨らみ、制度を考案した当 事者たちまでもが衝撃を受けている。

30年間にわたって連邦政府の高等教育政策に携わり、クリントン政 権時代に教育省副次官補を務めたトム・ウォラニン氏は、「これが元学 生の『年季奉公』債務者層を生み出すことになるとは誰も想像すらして いなかっただろう」と指摘する。

債務が持ちこたえられなくなる状況がいずれ来るとの警鐘が繰り返 し鳴らされていたにもかかわらず、いずれの党の政治家たちもその警告 を無視し続けた。「最も抵抗の少ない道は、学生たちにもっと借り入れ をさせることだった」とウォラニン氏は語る。

カーター、レーガン、ブッシュ(父)、ブッシュ政権時代のいずれ でも、議会はより多くの世帯により多くのローンを提供する制度を認め てきた。議会調査部(CRS)が4月に発表した報告書によると、扶養 家族である学生の在学中の借入限度額は融資プログラムが導入された時 点の7500ドルから3万1000ドルにまで引き上げられた。特定の状況の下 ではこの限度額はさらに高い水準に設定されている。

--取材協力:John Hechinger.