日銀は政策維持へ、圧力なく為替も小康-サプライズ狙いの緩和予想も

日本銀行が11、12日開く金融政策 決定会合は、円ドル相場が小康状態にあり、政治圧力も強まっていな いことから、現状維持との見方が優勢だ。金融市場でこうした見方が 織り込まれる中、逆にサプライズ狙いの追加緩和を見込む向きもある。

ブルームバーグ・ニュースが日銀ウオッチャー13人を対象に行っ た調査では、9人が現状維持を予想した。SMBC日興証券の岩下真 理債券ストラテジストは「札割れ防止策が検討されても、追加緩和で はない。市場の一部が期待するほど、現在の日銀は積極的に金融緩和 を推進していく構えはなく、既に推進しているとの認識である」と指 摘。「市場の混乱等の追加緩和の緊急性がない状況では、資産買い入れ 基金の増額を決定するとは考え難い」とみる。

2日発表された日銀の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業・ 製造業の業況判断指数(DI)が3期ぶりに、大企業・非製造業も4 期連続で改善し、いずれも市場の予想を上回った。シティグループ証 券の村嶋帰一チーフエコノミストは「短観は日銀の景気シナリオを裏 打ちする内容だった」と指摘。今会合は現状維持を予想している。

日銀は今会合で4月末の経済・物価情勢の展望(展望リポート) の中間評価を行う。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミ ストは「足元で底堅い内需を前向きに評価しつつ、景気・物価のシナ リオを維持するだろう」と指摘。2012年度の消費者物価指数(生鮮食 品を除いたコアCPI)前年比の見通しは「原油価格の大幅下落を受 けた下方修正が考えられる」ものの、13年度のコアCPIについては 中央値の0.7%上昇は変わらないと予想する。

政治圧力は乏しい

村嶋氏が今会合で現状維持を予想する理由は3つある。第1に、 景気が日銀シナリオの枠内で推移していることだ。「先行きについては 内外需ともに不透明感が残るものの、現時点で景気の面から追加緩和 が要請される状況にはない」という。第2の理由は、円ドル相場が1 ドル=79円台に踏みとどまっていることだ。

村嶋氏は「現在の水準は短観の大企業・製造業の想定レートとお おむね整合的であり、この点からも追加緩和の可能性は低いだろう」 という。最後の理由は、政治的圧力が乏しいことだ。「現在、政治家の 関心は、消費税率引き上げ法案に絡んだ政局に向かっており、金融政 策は政治家の念頭にはないとみられる」という。

東短リサーチの加藤出チーフエコノミストも「これまで行ってき た緩和策が国債バブルを発生させていること、5年程度までの金利曲 線が極端に平坦化して銀行など金融機関の収益が悪化し、彼らが中小 企業への貸し出しを行う体力が低下することを日銀は懸念している」 と指摘。今会合は現状維持を選択するとみる。

緩和ならサプライズ効果

一方、上野氏は直前の市場動向次第としながらも、追加緩和の可 能性の方が大きいとみる。「日銀としては、今回の会合でも追加緩和を 見送り、基金による長期国債買い入れ5兆円というカードを温存でき れば、それに越したことはない」と指摘。「あるいは、事前に市場で現 状維持が織り込まれた状態が出来上がっている中で、実際には追加緩 和に動くと、サプライズとしての効果を得ることができる。どちらに しても、日銀にとってみれば損のない話である」という。

東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジストも追加緩和を予想。 「長期国債の買い入れ増額を中心に、指数連動型上場投資信託(ET F)と不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ増、固定金利オペ の『3カ月物増・6カ月物減』がありそうだ」と予想する。

バークレイズ証券の森田長太郎チーフストラテジストは追加緩和 の可能性は五分五分とみる。「国内景気についての強めの評価、政治圧 力がそれほど高まっていない、という点においては見送りの見通しに なるが、海外中央銀行が中国も含めて一斉に緩和方向にある中で、日 銀のみが見送ることへのボードメンバー内での抵抗感もあるのではな いか」という。

日銀の緩和は「FOMC次第」

欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)、中国人民 銀行が5日、相次いで金融緩和に踏み切ったことに加え、6日発表さ れた6月の米雇用統計が市場予想を下回ったこともあり、7月31日か ら2日間の予定で開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)でQE 3(量的緩和第3弾)が実施されるとの見方もくすぶっている。

クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは今会合で は現状維持を予想。日銀の「追加緩和はFOMC次第」であり、次回 FOMCで追加措置があれば、8月会合で追加措置が取られ、資産買 い入れ等基金の5兆円増額、期限の半年延長が有力とみている。

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◎利上げ予想時期は次の通り(敬称略)

【2014年7-9月以降】SMBC日興証券の岩下真理債券ストラテジ スト、みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト、BNP パリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト、野村証券松沢中チーフ ストラテジスト(0.0-0.1%から0.1%へ)

【2015年以降】三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ 債券ストラテジスト、東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト、J Pモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミスト、第一生命経済研究所 の熊野英生首席エコノミスト、東海東京証券の佐野一彦チーフストラ テジスト、クレディスイス証券の白川浩道チーフエコノミスト、信州 大学の真壁昭夫教授、シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミ スト、バークレイズ証券の森田長太郎チーフストラテジスト ============================================================= 無担保コール翌日物金利の予想は以下の通り(敬称略50音順)

                      12   12   13   13   13   13   14   14
           9末 12末 3末 6末 9末 12末 3末 6末
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調査機関                13   13   13   13   13   13   13   13
中央値                 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
最高                   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
最低                   0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05
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三菱UFJ・MS 石井      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
SMBC日興証 岩下       0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
みずほ証 上野          0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
東短リサーチ 加藤      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
JPモルガン証 菅野         0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
第一生命経研 熊野      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
BNPパリバ証 河野     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
東海東京証券 佐野   0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05
クレディS証 白川      0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05
信州大 真壁            0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
野村証 松沢            0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
シティG証 村嶋        0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
バークレイズ証 森田       0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10

(注)無担保コール翌日物金利の予想の0.10%は政策金利「0.0 -0.1%」の現状維持。アンケート回答期限は9日午前8時。「『日銀サ ーベイ』金利予想、経済・物価情勢、金融政策の展望コメント」を10 日朝送信しました。