「日銀サーベイ」金利予想、経済物価情勢、金融政策の展望コメント

【記者:日高正裕】

7月10日(ブルームバーグ):ブルームバーグ・ニュースは11、 12日の日本銀行の金融政策決定会合を前に、有力「日銀ウオッチャー」 13人に金融政策の予想を聞いた。質問内容は以下の通り。アンケート 回答期限は9日午前8時。エコノミスト予想のまとめ記事として「日 銀は政策維持へ、圧力なく為替も小康-サプライズ狙いの緩和予想も」 を同時配信した。

1)今回の会合で予想される政策、2)日銀が政策金利を「引き 下げる」時期、3)日銀が政策金利を「引き上げる」時期、4)~11) 政策金利の予想水準(氏名50音順、かっこは前回回答)、12)経済・ 物価の見通し。

13)金融政策運営の見通し-①日銀が示す4月の経済・物価情勢 の展望(展望リポート)の中間評価の内容、2012、13年度の実質国内 総生産(GDP)成長率、消費者物価指数(生鮮食品を除いたコアC PI)前年比の見通し、②今回の日銀会合での追加緩和の可能性、追 加緩和がある場合、予想される手段、為替相場や株式市場に与える影 響、追加緩和を行わなかった場合の市場の反応、次の一手のタイミン グと手段、③モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエ コノミストと野村証券の木内登英チーフエコノミストが審議委員に加 わることによる経済、物価見通し、金融政策に対する影響

●三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジスト 1)今回会合 :追加緩和 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年度以降(同) 4)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年6月末 :0.00%-0.10%

12)足元の景気は復興需要の本格化を受けて底堅いものの、国内民需 の自律拡大軌道には乗らないため、復興需要がフェードアウトする年 度下期以降は外需次第となり、不確実性が高い。欧州景気は出口の見 えない債務不安を背景に後退局面が長引きそう。中国景気は政策対応 によるソフトランディングが成功するかどうか不透明。

米国景気は住宅デフレ下の家計バランスシート調整と雇用改善の 遅れが引き続き足かせとなり、成長加速を期待できない。なお、消費 増税前の駆け込み需要は13年度下期に見込まれる。 消費者物 物価は、需給ギャップのマイナス(需要不足)状態を背景に0%前後 での推移を続ける。事実上のインフレ目標である1%が見通せるよう な情勢になるのは早くて14年度下期。

13)①成長率見通しについては、12年度が若干の上方修正、13年度は 据え置き。物価見通しは両年度とも下方修正か。ただし『マクロ的な 需給バランスの改善を反映して、1%に遠からず達する可能性が高い』 とあらためて強調することで、市場のデフレ期待がいたずらに高まら ないよう引き続き配慮を示す。

②追加緩和の可能性を見込む。具体策は、資産買入等基金を通じ た国債購入増額。2013年1-6月分について5兆円増枠。市場コンセ ンサスが観測報道を受けて“見送り”に傾いているのでポジティブ・サ プライズが生じ、一瞬、円安/株高/債券高へ。なお、6カ月物固定 金利方式資金供給オペの見直しも検討する見込み。次の一手のタイミ ングは、10月の「展望レポート」の公表時で、具体策は基金を通じた 国債買入額の増枠、対象国債の残存年延長(例えば3年→5年)、期限 延長(例えば13年6月→13年末)など。

③両氏が報道されているようなハト派の主義・信条を維持するな らば、物価見通しが下方バイアスとなり、金融政策運営は緩和バイア スとなる。「市場との対話」の円滑化が期待される

●SMBC日興証券の岩下真理債券ストラテジスト 1)今回会合 :現状維持(全員一致) 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年7-9月以降(2014年度以降) 4)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年6月末 :0.00%-0.10%

12)短観では欧州経済低迷や中国経済減速等の弱い外需の影響が懸念 されたが、大企業製造業の数字は市場予想に反して落ち込まなかった。 大企業製造業の業況判断DIは、原材料価格の低下による採算改善、 エコカー補助金、復興需要を背景に3四半期ぶりに改善、先行きも改 善。12年度の売上計画は輸出が前年比+8.2%と国内の同+4.0%を大幅 に上回り、経常利益は加工業種主体に2ケタ増、設備投資も同+12.4% と過去平均に比べて大幅上方修正、6年ぶりの高い伸びとなった。

業況判断DIの改善は、事業計画の強さに裏打ちされた整合的な 動きだ。また、エコカー補助金の財源切れが視野に入り、今後の消費 は勢いの鈍化が見込まれるが、企業の設備投資が計画通り実行できれ ば、内需の改善傾向を維持することは可能となる。内需主導の回復シ ナリオを描く日銀にとって、短観で設備投資の復調を確認できたのは 心強い材料と言えるだろう。

5日の日銀支店長会議の総裁開会あいさつ要旨によれば、景気判 断の説明文は6月会合の声明文とほぼ同じであった。唯一の相違点は、 リスク要因の欧州債務問題の今後の展開について、「最も強く意識して おくべき要因」と強調する表現をとったことである。また2日に山口 日銀副総裁は「金融資本市場の緊張が断続的にせよ続き、世界経済が しっかりとは回復しないリスクが現実となる可能性は小さくない」と 語っており、その点は留意する必要がありそうだ。

それでも、5日の夜、中国人民銀行が前回6月8日から1カ月経 たないタイミングで再利下げを決定。13日発表の中国4―6月期の実 質GDP成長率が前年同期比+8%割れ予想が強まる状況下、景気下支 えの金融緩和姿勢を鮮明に打ち出した。減速が長期化しつつある中国 経済ではあるが、各種政策効果により7―9月期に持ち直しに転じる ことが待たれる。

その一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)が6月でツイスト オペを終了できなかったこと、新規失業保険申請件数の水準を考え合 わせれば、米6月の雇用統計が、雇用回復の鈍さを示したのは想定内 の動きである。筆者は暖冬の影響に加えリーマンショック後の季節調 整の歪みが足元は出ており、7―9月期の雇用統計では持ち直すとみ ている。

ただし、今後も7月発表の米国指標の弱さが続くようであれば、 7月31日、8月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けてQ E3(量的緩和第3弾)観測から再び円高圧力が強まる可能性には注 意したい。

13)①先行きの海外経済や為替動向に不確実性はあるが、現段階で下 振れリスクが顕在化しておらず、日銀は「緩やかな回復経路に復する」 という標準シナリオを修正する必要はないと考えるだろう。内需が堅 調を維持している間に外需が持ち直し、上手く主役をバトンタッチで きる姿が期待されている。成長率見通しの数字は、4月時の大勢見通 し中心値が12年度+2.3%、13年度+1.7%だったが、12年度2%台前 半、13年度1%台後半の姿は変わらないとみる。

コアCPI(前年比)の見通し数字は、4月時の大勢見通し中心 値が12年度+0.3%、13年度+0.7%。12年度は足元の国際商品市況の 弱含みの動きを反映して、若干の下方修正となろう。しかるに13年度 は、12年度後半には緩やかな回復経路に復するシナリオのもと、おお むね+0.7%から変えないと思われる。

②今回も現状維持を予想。札割れ防止策が検討されても、追加緩 和ではない。市場の一部が期待するほど、現在の日銀は積極的に金融 緩和を推進していく構えはなく、既に推進しているとの認識である。 市場の混乱等の追加緩和の緊急性がない状況では、資産買い入れ基金 の増額を決定するとは考えがたい。また対象国債の残存年限の長期化 は、極端なイールドカーブのフラット化を招くことによって金融機関 の収益力低下につながる。

5日の欧州中央銀行(ECB)の利下げ決定により、市場では付 利引き下げへの思惑も走っているが、市場機能低下に結びつく施策を 白川総裁は回避したいとの考えは変わらないだろう。事前に緩和期待 が大きくなければ、市場の反応は限定的と思われる。次の一手のタイ ミングは、政局が不透明なこともあり、非常に読み難くなった。政府 の日銀に対するデフレ脱却への協力要請が、今は静かでも再び強まる 可能性はあるものの、そのタイミングがわからない。

次なる重要な景気判断が10月の展望レポートであることは間違 いないが、先行きの海外経済と為替市場動向に不確実性があり、当面 は見極める時間帯となりそうだ。次の一手の手段は、資産買入等基金 で国債買入れの5兆円増額を予想。固定金利オペの減額が加わる可能 性もあるとみている。

③佐藤氏、木内氏はこれまでの主張から緩和積極派と称され、ボ ードの構成はハト派が多くなる可能性が出てきた。ただし就任後の立 場は未知数であり、まずは就任会見の発言に注目したい。それでも独 自の経済見通しを講演で話すメンバーが増えることで、日銀からの情 報発信に面白味と深みが増し、市場とのコミュニケーション強化が期 待される。

10月展望リポートの物価見通しでマイナス予想が登場するかは 興味深いが、大勢見通しの中心値には影響を与えない可能性もある。 また、当面の金融調節等のテクニカル面では、執行部の方がはるかに 詳しく、すぐに政策決定に大きな影響を与えるとは考え難い。

●みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :直前の市場次第も、追加緩和の可能性の方がやや大 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年7-9月以降(同) 4)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年6月末 :0.00%-0.10%

12)短観の内容は、大企業の景況感や設備投資計画を中心に、底堅さ が感じられる内容だった。しかし、手放しで喜ぶことのできる内容で はなく、追加緩和を今回も見送りたいといった考えに由来する過大評 価は避けるべき。エコカー補助金などの政策効果がなくなった後、輸 出に順調に「バトンタッチ」できるかどうかはまだ不確実な情勢。リ スクは引き続き下振れ方向にある。

13)①展望レポートの中間評価では、足元で底堅い内需を前向きに評 価しつつ、景気・物価のシナリオ(中心的な見通し)を維持するだろ う。ただし、12年度の政策委員大勢見通しについては、コアCPIと 国内企業物価について、原油価格の大幅下落をうけた下方修正が考え られる。

一方、13年度のコアCPIについては、大勢見通しのレンジ下限 は4月展望リポート時点の+0.5%からコンマ数%ポイント下がるも のの、中央値の+0.7%は変わらずという結果になると予想される(仮 に下方修正があるとしても0.1%ポイントまでだろう)。いずれにせよ デフレ脱却に向けた動きが着実に進んでいるという政府・日銀の共通 認識を大きく壊すような数字は出しにくいと推察される。

②③短観が発表された後を中心に、国内景気の底堅さが確認され たとして、今回の会合でも金融政策は現状維持ではないかといった趣 旨の観測報道が出ている。日銀が国債イールドカーブを3年程度まで ほぼ完全にフラット化させたことが銀行勢などの中期債投資のリター ンを縮小させる「民業圧迫」につながっているのではないかといった 批判がマスコミでとりあげられる機会も急に増えた。

日銀としては、今回の会合でも追加緩和を見送り、基金による長 期国債買入れ5兆円というカードを温存できれば、それに越したこと はない。あるいは、事前に市場で現状維持が織り込まれた状態が出来 上がっている中で、実際には追加緩和に動くと、サプライズとしての 効果を得ることができる。どちらにしても、日銀にとってみれば損の ない話である。

追加緩和の問題では、為替相場・海外経済が引き続き最も重要な ファクターだろう。円高進行リスクが漂っている限り、追加緩和が行 われる可能性は常に潜在していると言えよう。さらに、原油価格下落 によって12年度のCPI見通しに下方修正圧力が加わっており、日銀 が当面目指している+1%がやや遠のいているという事情がある。

すでに衆院を通過した消費増税法案が最後のステージである参院 での審議・採決に直面することも、デフレからの脱却に向けた日銀に よる追加的な行動を、政治的に要請する面があると考えられる。こう したいくつかの事情を勘案すると、会合当日までの市場の動きをにら んだ上で日銀がサプライズ的に追加緩和に動く可能性は否定できない と筆者はみている。

●東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2016年以降(2015年後半) 4)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年6月末 :0.00%-0.10%

12)復興需要、エコカー補助金などの国内要因により内需は改善が続 いている。欧州発でショックが国際金融市場を襲うことがあると、外 需が急速に落ち込むリスクがあるが、当面はそれが顕在化しないこと を前提にすると、日本経済は緩やかな回復基調を示し続けると思われ る。CPIはコモディティ価格などの影響で上昇が一服しているが、 トレンドとしては上昇を続けると思われる。ただし、賃金の上昇は限 られるため、CPIの上昇ペースは非常にゆっくりとしたものになる。

13)①4月展望リポートで示した中心シナリオを基本的に維持して、 緩やかな回復が続くという見方を継続すると思われる。成長率見通し は12年度+2.2%、13年度+1.7%、CPI見通しは12年度+0.2%、13 年度+0.6%。

②これまで行ってきた緩和策が「国債バブル」を発生させている こと、5年程度までの金利曲線が極端に平坦化して銀行など金融機関 の収益が悪化し、彼らが中小企業への貸出を行う体力が低下すること を日銀は懸念している。短観は非常に緩やかながらも日本経済が回復 を続けていたことを示していたため、今回の会合は現状維持を選択す るだろう。

とはいえ、消費税を14年度から引き上げるならば、事前に成長率 を押し上げるためのサポートを日銀は政府・議会から先行き要求され る可能性がある。欧州などの海外情勢も楽観できない状況が続いてい る。次の緩和策は資産買入等基金の5兆円程度(長期国債中心)増額 だろう。仮に欧州問題が国際金融市場を動揺させるような場合は臨時 会合を開いて、国債だけでなくETFなどのリスク性資産の買い入れ を多めに増やしたり、基金とは別に流動性対策を強化すると思われる。

ECBはデポジット金利をゼロ%に引き下げたが、FRBが超過 準備への付利をゼロ%に下げる可能性はかなり低い。よって、日銀が 付利を下げる確率も低いといえる。③2人の審議委員は当面は他の政 策委員よりも低めの成長率、物価上昇率を示すと思われ、追加緩和策 に対しても他の委員よりは積極的だろう。しかし、白川総裁が率いる 政策委員会全体の判断はこれまでと大きくは変わらないと予想される。

●JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年以降(同) 4)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年6月末 :0.00%-0.10%

12)足元の経済指標は第2四半期GDPが2.0%成長する(前期比年 率)することを示唆している。第1四半期に比べると減速しているが、 復興需要のほか個人消費も予想以上に底堅く推移している。もっとも、 足元の勢いがどこまで持続するかは疑問。エコカー補助金が切れる8 月以降の個人消費は夏季賞与減額の影響もあり減速感が強まろう。

公共事業も第2四半期がピーク。海外経済も欧州が低迷している ほか、中国も回復が遅れており、「秋口以降は外需にバトンタッチ」と いうシナリオに下振れリスクが出てきた。コアCPIは、当面前年比 ゼロ近辺の動きが続くと見られるが、エネルギー価格の押し上げがは く落する13年入り後、コアCPI前年同月比は再びマイナスに転化す る見込み。

13)①中間評価は4月をおおむね踏襲。世界経済の先行き下方リスク を強調か。②追加緩和見送り。為替市場で円高が若干進む可能性があ るが、限定的であろう。マーケット次第で8-10月間の追加緩和(基 金の拡大)を見込む。③両名とも従来の見解を維持し、日銀会合での 議論が活性化され、市場とのコミュニケーションが改善されることを 希望。

●第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年以降(同) 4)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年6月末 :0.00%-0.10%

12)短観は出来すぎの結果。DIよりも、売上・収益・設備投資計画 をみて日銀は堅調なシナリオに思いを強くしただろう。中間評価はG DPがゲタの分+0.2%ほど上方修正され、CPIはガソリン価格の下 落をいくらか織り込むだろう。

13)中央値は、実質GDPが2012年度2.4%、13年度1.6%に修正。 CPIは12年度0.2%、13年度0.7%とみる。雇用統計次第であるが、 短観をみてひとまずは現状維持の公算が高まった。追加緩和の場合は、 固定金利オペを減額して、国債買い入れを増やすだろう。残存期間は 3年以内を変えず。佐藤健裕氏と木内登英氏には是非頑張っていただ きたい。日銀の市場との対話路線はここ半年くらい後退している。

日銀の議事要旨も公式見解の域を出ない。ひとつの争点は、白川 総裁がCPI1%の達成が13、14年度にできると言っている点を質す ことだろう。民間エコノミストとしては、何であのような見通しにな るのかわからないと皆思っているので、その点をもっと理解できるよ うに代弁してほしい。日銀の透明性、市場との対話を立て直すことが、 まずは2人の役割だろう。

●BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト 1)今回会合 :資産買入基金の5兆円増額(主に長期国債) 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年7-9月以降(2014年4-6月以降) 4)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年6月末 :0.00%-0.10%

12)引き続きリスクは海外経済、特にユーロ圏と新興国にある。6月 28日、29日の欧州連合(EU)サミットでは欧州金融安定化ファシリ ティ(EFSF)/欧州安定化メカニズム(ESM)によるスペイン 金融機関への直接資本注入を可能とするなど、スペインの不良債権問 題と財政問題を切り離すための政策も合意された。しかし、欧州ソブ リン問題を抜本的に解決するための銀行同盟、政治統合、財政統合の 3つの主要課題は、銀行同盟を除くと、全く進展が見られない。

長期的に達成されなければならない課題が何であるかが主要国の 指導者の間で共有され始めたことは大きな前進だが、今回合意された 内容は「時間稼ぎ」の域をまだ出ていない。ギリシャでは6月17日の 再選挙後、緊縮財政継続を掲げる新政権が誕生したが、ギリシャが自 力で返済できない過大な対外債務を抱えていることに変わりなく、早 晩、現在の財政健全化策が挫折するというシナリオに変わりない。

新政権は財政健全化策の2年間凍結を要求しているが、過大な負 担を抱えている以上、猶予期間を設けても事態が改善するとは考えら れない。また、2年凍結ということになると、単に期限を延長するだ けでは済まず、EU各国の財政負担が増すことになるため、簡単に飲 める話ではないだろう。

多くの人は、中国、ブラジル、インドの景気回復の遅れは、欧州 経済の減速の影響や引締め的な財政・金融政策による総需要不足が原 因と受け止められている。確かに、各国とも欧州経済の低迷が少なか らず影響している。しかし、新興国ではここ数年間のアグレッシブな 財政・金融政策で総需要が相当に持ち上がり、供給制約に直面してい ることが成長ペース減速の最大の理由だと思われる。

このため、仮に総需要刺激策を取っても、景気が過熱するだけで、 成長ペースの回復は期待できない。また、やや長い目で見ると、2000 年代半ばに新興国が高成長を遂げていたのも、欧米の信用バブルに伴 う金融的要因で嵩上げされた言わば新興国バブルであり、リーマンシ ョック後の高い成長も、積極的な財政・金融政策による所得・需要の 先食いに過ぎなかった可能性がある。

つまり、中国、ブラジル、インドのトレンド成長率は市場で考え られているほど高いものではなく、今後、循環的な回復が始まっても、 成長ペースが元の水準まで戻らないことが、徐々に明らかになってい くと思われる。新興国の回復が遅れることになると、日銀の景気シナ リオにも修正が必要になってくる。

13)①大きな変更はなし。②資産買入基金の5兆円増額(主に長期国 債)消費増税法案が成立する見込みとなったものの、財政再建にはさ らなる増税と社会保障関係費の抑制が必要である。そうした政策の政 治的困難さから、日銀への緩和圧力が強い状況は今後も続く。

ただ、増税による経済への悪影響を金融政策でオフセットすると いうのであればある程度容認されるが、金融緩和で成長を高めること で、増税や必要な制度改革を回避し、問題を解決するという発想であ れば、それは妥当ではないし、そもそも不可能である(金融緩和でト レンド成長率を引上げることはできない)。

金融政策においては、市場の期待へ働きかけることは極めて重要 であり、本来、自らの政策の有効性を否定することは望ましくない。 しかし、実際にほとんどない効果を「少しはある」と説明し、副作用 に目をつむれば、必然的により大規模な緩和を求める声が強まり、な し崩し的にマネタイゼーションに向かってしまうことになりかねない。

日銀に求められているのは、金融政策の限界と、デフレ脱却に何 が本当に必要なのかを、丁寧に説明していくことである。フレキシブ ル・インフレーション・ターゲットの本質は、透明性とアカウンタビ リティの向上にあるが、なぜ目途が達成できないのか(例えば、政府 が構造問題の解決を放置していること等)、なぜアグレッシブな金融政 策を取らないのか(その副作用や財政政策の領域への侵入等)、本来、 それらの理由を明確にすべきである。

③「市場との対話」能力を有するメンバーが増えることは、金融 政策の有効性を高めるためには望ましい。

●東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジスト 1)今回会合 :追加緩和 2)利下げ時期 :2012年8-10月の公算あり 3)利上げ時期 :2015年1-3月(同) 4)12年9月末 :0.00-0.05%(同) 5)12年12月末 :0.00-0.05%(同) 6)13年3月末 :0.00-0.05%(同) 7)13年6月末 :0.00-0.05%(同) 8)13年9月末 :0.00-0.05%(同) 9)13年12月末 :0.00-0.05%(同) 10)14年3月末 :0.00-0.05%(同) 11)14年6月末 :0.00-0.05%

12)短観などを受けても経済・物価の見通しは変わらない。足元の内 需は底堅いが、引き続き今年度の実質成長率は1.0%台後半のプラス、 13年度は1.0%前後のプラス、コアCPIは12、13年度ともに若干の プラスにとどまると見ている。海外経済情勢は相変わらず厳しい。米 国の最近の景気指標は弱めである。バランスシート調整が続いており、 クリスマス商戦で盛り上がった回復期待が春以降に失速するパターン は昨年と同様。今年の米国実質GDPの伸びは2.0%以下と予想する。

欧州だが、ギリシャ再選挙の結果が示したのは、今後、緊縮策の 緩和でギリシャ政府とユーロ圏諸国が折り合うということだ。それは 事態の先送りに過ぎない。スペインの銀行問題は資本注入だけでは解 決しない。住宅価格の下落が続き、経済状態が悪いスペインでは、銀 行資産は劣化するばかりである。ユーロ圏の今年の実質GDPは

1.0%程度のマイナスと見ている。中国の今年の実質経済成長率は7% 台の伸びに低下と予想している。

13)①「基本的見解」におおむね修正はないと考えている。成長率見 通しは12、13年度ともにほぼ変わらないだろう。ただ、消費者物価指 数の見通しは12年度が若干下方修正されると見ている。②今回会合で の緩和強化の可能性は高い。具体的には、長期国債の買入れ増額を中 心にETFと不動産投資信託(J-REIT)の買入れ増の可能性も。 また、固定金利オペの「3カ月物増・6カ月物減」がありそう。

直前の市場の織り込み方次第だが、顕著な円安・株高といった反 応は考えにくい。一方、緩和強化を見送れば、円高・株安が進行しよ う。その際、いや、いずれにしても遅かれ早かれ、(イ)超過準備の付 利の引き下げ、(ロ)「基金」で買入れる長国の年限長期化に追い込ま れ、(ハ)政策金利の上限引き下げの可能性もある。タイミングは早け れば8月会合。

③両氏とも経済、物価に対して弱気派と聞いている。それが「基 本的見解」を変えるには至らないものの、「展望リポート」における数 値見通しは下に引っ張られよう。金融政策に関しては、日銀が購入す る資産範囲の拡大など持論の主張が決定会合の議事要旨で確認できる と考えている。しかし、実際の政策が彼らの主張に沿って変更される とは予想していない。

●クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :2012年10-12月(想定せず) 3)利上げ時期 :2015年以降(同) 4)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年12月末 :0.00-0.05%(0.00%-0.10%) 6)13年3月末 :0.00-0.05%(0.00%-0.10%) 7)13年6月末 :0.00-0.05%(0.00%-0.10%) 8)13年9月末 :0.00-0.05%(0.00%-0.10%) 9)13年12月末 :0.00-0.05%(0.00%-0.10%) 10)14年3月末 :0.00-0.05%(0.00%-0.10%) 11)14年6月末 :0.00-0.05%

12)ユーロ圏は景気後退が継続、米国景気は鈍化、BRICs諸国も 低成長横ばい。足元の世界実質成長率は従来のトレンド成長率であっ た3.5%を大きく下回る2-2.5%程度と判断される。需給ギャップは マイナスであり、米国熱波による影響が出ている一部の穀物を除き、 国際商品相場の軟化傾向によって裏付けられている。

国内景気は復興需要や安定した個人消費に支えられているが、世 界景気減速の影響を受けるのは必至であり、足元から急激に減速へ。 消費税増税の効果を捨象した場合、コアCPI前年比が+1%に達する シナリオは全く描けない。

13)①12、13年度の成長率、物価の見通しはほとんど修正されない見 込み。②今回は現状維持。追加緩和はFOMC次第。次回FOMCで 追加措置があれば、8月会合で追加措置。資産等買取基金の5兆円増 額、半年延長が有力。10-12月期の焦点は超過準備付利金利の0.05% 引き下げ。③特段の影響なし。ただ、緩和推進の必要性を訴え、市場 にノイズを与える可能性はある。

●信州大学の真壁昭夫経済学部教授 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :当面なし、金融市場の混乱等があれば引き下げも 3)利上げ時期 :2015年初以降(同) 4)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年6月末 :0.00%-0.10%

12)米国経済は緩やかに回復しているが、労働市場、製造業の景況感 には減速の兆しも現れている。今後はこうした兆候が一時的なものな のかいなかが重要なポイントになる。雇用の回復が鈍化する事態とな れば米景気の後退リスクは高まる。足許ではISM製造業景気指数が 50を下回ったこともあり先行き不透明感は高まっている。これは住宅 市場の回復など米国のバランスシート調整の進捗にも影響を与える。 そのため、短期的にはインフレリスクが急速に高まるとは考えづらい。 そのためFRBによる追加緩和=QE3の可能性は高まっている。

欧州では先月末のEUサミットを受けて、周辺国に対する楽観論 が高まっているようだ。特にイタリア、スペイン国債の対ブントのス プレッド縮小のモメンタムは強い。問題は欧州首脳が金融市場が期待 するような実効力ある方策を実行できるかいなかだ。ドイツが主張す る「政治同盟」が確立されていない状況では、今後も支援-被支援国間 の利害衝突は避けられない。

そのため、現行の救済基金のスキームでいかなる危機対応策を打 ち出したとしても、周辺国支援がドイツを中心とする中核国の財政負 担につながるという構造に変わりはない。このスパイラルが解決され、 成長戦略がまとまらない限り債務危機の収束は困難だ。ファンダメン タルズが悪化している中、議論に費やすことのできる時間も少なくな っている。欧州経済の下方リスクはむしろ高まっている。

新興国では、欧州債務問題の影響もあり、景気の下振れリスクは 高まっている。中国、ブラジルなど今後の金融緩和の可能性は高まる だろう。一方で、リスク許容度の低下に伴い、資本流出に対する規制 の動きも活発になっている。投資家の新興国に対する選好度が低下し、 流動性が低下することも懸念される。資産価格の下落、不良債権増加 への懸念など、総じて新興国に関するリスク要因は高まるだろう。

そうした中、わが国経済は主要国の中でも堅調さを維持している といえる。短観では製造業、非製造業ともに改善が示され、景気回復 の進捗が確認された。円高圧力、海外経済の先行き不透明感というリ スクがある中での景況感の改善は、実体経済の底堅さを証明している。

労働市場でも緩やかな回復の兆しが現れている。一方、物価見通 しは引き続き弱く、短期間でのデフレ脱却は困難だ。消費税関連法案 が衆議院で採決されたことは、財政にとってポジティブな要素だ。今 後の課題は、いかにして景気回復を推し進め、財政再建の基盤をより 強化するかだ。

13)①展望リポートの中間評価については、これまでの見通しと同水 準、もしくは若干の下方修正になる可能性があると見る。国内景気は 堅調だが、海外に目を転じると、欧米の経済状況が弱気な見通しの要 因になる可能性がある。12、13年のGDP、CPI見通しについて、 海外経済の不透明な動向を考慮すると、上方修正の材料が見つからな い。総じて中間評価はこれまでの見通しと大差ない内容になろう。

②今後の追加緩和はFRBなど海外中銀の動向に大きく影響され るだろう。足元、わが国の景気の堅調さを考慮すると、取りあえず、 緊急の追加緩和の必要性は見出しづらい。そのため今回は海外での対 応を注視しつつ、これまでの対応策の効果を見ることになると見る。 同時に、今後の状況次第では追加緩和を打ち出す準備があるという「市 場とのコミュニケーション」にも気が配られることになるだろう。

ただ、市場では欧州への懸念を中心に、対策への期待は高まりや すい。欧州債務問題の深刻化など市場のストレスが高まったときには、 国債の買い取り年限を5年以下にまで拡大する可能性があるだろう。 これまで同様、追加緩和は一時的に投資家のリスク許容度を高め株高 を演出する材料にはなりうる。ただ、金融政策でデフレ脱却、景気回 復を促進させることは困難だ。そのため効果はあくまでも短期的なも のにとどまるだろう。

③新しい審議委員の任命による金融政策への影響は限定的と見る。 むしろ、政治圧力による追加緩和要請の方が日銀の意思決定に影響す ると考えられる。金融政策に対する依存度が高まる中、政治的な圧力 に屈した金融政策を行っていると市場からみなされることは日銀の信 認を大きく毀損することになりかねない。そうした事態は日銀も避け たいはずだ。今後は、消費税関連法案の成立と併せて、どのような経 済政策を立案し景気回復を推し進めていくか、官民交えて議論が行わ れる必要だろう。

●野村証券の松沢中チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年7-9月にレンジ停止(同) 4)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年6月末 :0.00%-0.10%

12)短観は日本経済が足元堅調であることを示す。一方米中の景気減 速が鮮明になっており、これまで輸出主導で景気回復のモメンタムを 作ってきた日本にとっては懸念材料。欧州債務問題も、政策当局が先 手を打っているとは言えず、再び金融危機へ発展するリスクを抱えて いる。

13)①12年度の景気見通しは据え置き、物価見通しは原油価格の下落 を反映し引下げ。13年度は景気、物価共に見通しは据え置き。②追加 緩和はサブシナリオだが、通常の会合よりも高く、可能性は3割程度 ある。今回実施ならば、基金増額5兆円、指数連動型上場投資信託(E TF)購入0.5兆円程度を含む、国債購入は来年前半分。市場は追加 緩和を十分織り込んでおらず、実施すれば株高、円・債券にはほぼニ ュートラル。見送られれば、円高・債券高が進む。

③金融業界出身の2名が審議委員に加わることは、政策会合にど ちらかと言えばハト派的な意味を持つが、少なくとも今のところ政策 決定には重大な変化をもたらさないだろう。変化があるとすれば、景 気物価見通しの改定においてだ。この2名が日銀に比べ慎重な物価見 通しであったことがそのまま反映されれば、少なくともレンジの下限 が広がろう。

●シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年10-12月(同) 4)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年6月末 :0.00%-0.10%

12)短観は日銀の景気シナリオを裏打ちする内容だった。具体的には、 ①復興需要や個人消費の回復を背景に、非製造業が堅調さを維持して いること、②外部環境が厳しい中でも、製造業の業況判断が持ちこた えていること、③12年度の設備投資計画が強めであること、④金融環 境の改善が続いていることが示された。

ただ、夏場以降は復興需要の景気押し上げ効果が徐々に弱まると 同時にエコカー補助金の終了により、個人消費もいったん弱含む可能 性が高まっている。こうした中、輸出が緩慢な伸びにとどまることで、 今年下期のGDP成長率は年率1%強に鈍化すると予想される。

一方、この間の原油価格の下落を受けて、コアCPIは当面、前 年比ゼロから小幅マイナスで推移しよう。コアCPIは今後、中期的 に日銀の見通しを下振れていく公算が大きいが、今回の中間評価で日 銀が13年度のインフレ見通しを大きく修正することは想定しにくい (これは景気が日銀シナリオに沿って推移しているため)。

13)①中間評価では、GDP成長率の見通しにはほとんど変更がない とみられる一方、12年度のコアCPIの予想は若干下方修正される可 能性が高い。これは4月の展望リポートの公表後、エネルギー価格が 下落したため。今年度のコアCPIの予想(中央値)は4月時点の前 年比プラス0.3%からプラス0.1-0.2%に下方修正されよう。ただ、 景気が日銀シナリオに沿って推移する中で、13年度のインフレ見通し が大きく下方修正される可能性は低い。

②今回は政策据え置きを予想する。第1に、景気は日銀シナリオ の枠内で推移している。先行きについては、内・外需ともに不透明感 が残るものの、現時点で景気の面から追加緩和が要請される状況には ない。第2に、円ドル相場が1ドル=79円台に踏みとどまっている。 現在の水準は短観の大企業・製造業の想定レート(12年度平均で78.95 円)とおおむね整合的であり、この点からも、追加緩和の可能性は低 いだろう。

最後に、追加緩和に向けた政治的圧力が乏しいことがあげられる。 現在、政治家の関心は、消費税率引き上げ法案に絡んだ政局に向かっ ており、金融政策は政治家の念頭にはないとみられる。13年度のコア CPIの見通し(政策委員の中央値)が引き続き、「物価安定のめど」 である前年比1%を下回る公算が大きいことを、追加緩和の論拠とし てあげる向きもある。

ただ、4月27日開催の決定会合・議事要旨をみると、「消費者物 価の前年比上昇率1%が見通せるまでは、機械的に基金の増額を続け ていくという誤解が一部にみられる」との指摘が行われており、景気 が日銀シナリオの枠内で推移していることも考え合わせると、今回、 インフレ見通しが直接的に政策判断に影響を及ぼす可能性は低いよう に思われる。

③政策委員会の議論の活性化に期待したい。民間エコノミスト2 氏のインフレ予想は、展望リポート(4月)の大勢見通しに比べて明 確に低い可能性が高い。このため、日銀のインフレ見通しのレンジが 大きく切り下がることが予想される。この点は、追加緩和に対する圧 力を強めることになる。ただ、現政策委員の政策運営に対する考え方 と2氏のそれとの間の隔たりは大きいように見受けられる。即座に政 策決定に影響が出てくる可能性は低いのではないか。

●バークレイズ証券の森田長太郎チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年以降(同) 4)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年6月末 :0.00%-0.10%

12)国内景気は復興需要に支えられていることと、中国、アジア向け 輸出が下げ止まりつつあることを反映して底堅い推移となっている。 一方で、CPIについては原油価格の影響が短期的に下押し要因とな っているが、底堅い内需を支えに資源価格以外の部分で特に下振れ圧 力が強まっている兆しは見えない。

米景気指標の軟化には、ISM指数に表れているように輸出減速 の影響が色濃く反映されているように見える。欧州の混乱が「米国の 住宅調整終了」、「中国の緩和姿勢への転換」、「日本の復興需要」とい う世界経済のポジティブ要因を相殺する形でグローバルな景況感を下 振れさせている状況。

まだ極端にプラスマイナスのバランスが崩れる段階には至ってい ないものの、ポジティブ要因が優勢になるには、中国のもう一段の景 気刺激など追加的な変化も必要だろう。日本も年内は復興需要が引っ 張るが、年明け以降にグローバルなマイナス材料が増してくる際に復 興需要が減速し始めれば、大きな景気下振れリスクとなる。

13)①経済回復のメカニズムは崩れていないことを強調。原油価格を 反映させて12年度のCPI予測を0.2%程度引き下げ。②追加緩和の 可能性は5分5分。国内景気についての強めの評価、政治圧力がそれ ほど高まっていない、という点においては見送りの見通しになるが、 海外中銀が中国も含めて一斉に緩和方向にある中で日銀のみが見送る ことへのボードメンバー内での抵抗感もあるのではないか。

別の視点では、国債買い入れが市場を歪めつつある実態も含めて、 残りのカードが相当限られていることを考えれば、先送りできる状況 であればなるべく先送りしたいということはあるだろう。その場合は、 秋に政府の補正予算編成と一体化した形での追加緩和のシナリオが濃 厚になる。

③両氏とも積極緩和派との評価のもとでのボードメンバー入りで あり、意図的にハト派的な発言をしてゆくものと予想される。しかし、 あくまでも9票のうち2票であるという現実を踏まえれば、他のボー ドメンバーあるいは日銀執行部を十分に説得できるだけの理論的根拠 を踏まえた議論展開ができるかどうかが重要になってくる。

日銀の政策オプションとしては、今のところ長期国債購入政策以 外に残されているものが多くあるわけではなく、市場にある「積極緩 和論」とのギャップを埋める役割が両氏には問われる。可能かつ実効 性のある政策オプションを提示できなければ、従来からの日銀ボード 内の議論に最終的には埋没してしまう可能性も少なくないだろう。

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