ECBが事実上ゼロ金利-非伝統的措置の追加なく、効果薄か

欧州中央銀行(ECB)は5日に政 策金利を過去最低に引き下げたものの、ドラギ総裁はその実体経済への 効果は限られる可能性があるとみている。

ドラギ総裁は政策決定後の記者会見で、「需要が弱い時」には金融 政策からの経済への効果伝達が「控え目」となることは明白だと述べ た。ECBは主要政策金利であるリファイナンスオペの最低応札金利と 下限政策金利である中銀預金金利を0.25ポイントずつ引き下げ、それぞ れ0.75%と0%にした。利下げにより、苦境にある銀行が中銀から資金 を借りる際のコストが下がると総裁は述べた。

この日は中国も利下げ、イングランド銀行(英中銀)は資産購入枠 を拡大し量的緩和再開を決めた。欧州債務危機がユーロ圏の景気を悪化 させ世界経済の足かせにもなる中で、ECBは行動を迫られた。ドラギ 総裁は先月、利下げの効果について懐疑的な発言をしていた。

バークレイズ・キャピタルの欧州担当チーフエコノミスト、ジュリ アン・キャロー氏(ロンドン在勤)は「ECBのこの日の決定がユーロ 圏経済に与える効果は大きくはないだろう」とし、「年後半に景気が上 向かないようなら、ECBは大規模な資産買い切りオペによって対処せ ざるを得ないだろう」と話した。

ユーロ圏経済はリセッション(景気後退)に向かっている。欧州連 合(EU)の欧州委員会は今年、0.3%のマイナス成長を予想してい る。

引き続き回復見込む

ドラギ総裁は「政策委は引き続き、段階的で緩慢な回復を年末ごろ に予想している」とし、「今や下振れリスクが顕在化しているものの、 基本的なシナリオは変わっていない」と述べた。インフレ率は従来予想 よりも早い年内のいずれかの時点で、ECBが上限と見なす2%を下回 る可能性があるとの認識も示した。

最低応札金利の0.25ポイント引き下げは、ブルームバーグ・ニュー スの調査に答えたエコノミスト64人中49人が予想していた。利下げは昨 年12月以来。同年11月1日のドラギ総裁の就任以来では3回目になる。 別の調査で預金金利ゼロを予想していたのはエコノミスト22人中12人だ った。

ECBはこれまでに、長期リファイナンスオペ(LTRO)で域内 の市中銀行に1兆ユーロ(約99兆円)余りの3年物資金を供給した。こ の資金の金利は融資期間中の最低応札金利の平均となるため、利下げは この資金のコストを低下させる。

預金金利ゼロは、銀行が資金を中銀に滞留させることをやめ、銀行 間や企業・家計への融資に活用することを促す公算がある。このところ のECBへの翌日物預金の日々の残高は約8000億ユーロで推移してい る。

予見は困難

ドラギ総裁は「銀行がどう行動するかを予見するのは難しい。どち らにせよ、劇的な行動の変化があるとは考えていない」と述べた。

2008年の米リーマン・ブラザーズ・ホールディングス破綻後に ECBが無制限の流動性供給を開始して以来、預金金利が事実上、市場 金利を誘導してきた。

ABNアムロのエコノミストらは顧客向けリポートで、この日の 「ECBの決定は事実上、ユーロ圏でのゼロ金利政策の実施だ」と指摘 した上で、米国や英国の金融当局に「追随して量的緩和プログラム」を 導入するとの観測が浮上する可能性があると述べた。

欧州債務危機への対応として世界の中銀が金融緩和に動いている。 この日の英中銀の資産購入枠拡大と中国人民銀行(中銀)の利下げ発表 についてドラギ総裁は、両中銀とECBとの間に「通常の意見交換以上 の」協調はなかったと述べた。

ベレンベルク銀行のチーフエコノミスト、ホルガー・シュミーディ ング氏(ロンドン在勤)は「世界を覆っている不透明感の震源地がユー ロ圏であるにもかかわらず、ECBの欧州リスクへの対応は依然とし て、他の多くの中銀に比べると弱い」と評し、この日も「新たな流動性 措置も発表せず、スペインとイタリアを飲み込もうとしている不安の連 鎖を断ち切るためにソブリン債市場への介入を再開する可能性をほのめ かすこともしなかった」と指摘した。

非伝統的措置を追加導入する可能性があるかとの問いにドラギ総裁 は、「非常に断片化された市場で効果的な措置があるとは考えられな い」と答えた。

スピロ・ソブリン・ストラテジー(ロンドン)の責任者、ニコラ ス・スピロ氏はこの日のECB利下げで最も有益なのはユーロ安につな がることだろうとみる。「より大胆な行動がない中で、病気のユーロ圏 経済への処方箋はまさにユーロを安くすることだ」と述べた。

ただドラギ総裁は、必要となればECBは「適時に断固として」行 動することが可能だとは言明した。

原題:Draghi Says ECB Rate Cuts May Have Only ‘Muted’ Economic Impact(抜粋) 原題:Draghi Says Risks to Economic Outlook Still ‘On the Downside’(抜粋)

--取材協力:Kristian Siedenburg、Gabi Thesing.

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