全日空:上場予定の日航に先手、公募で2100億円調達-攻め姿勢に

全日本空輸が公募増資による最 大2111億円の資金調達計画を発表した。同社として過去最大規模の増資 で、最新鋭旅客機ボーイング787購入などの設備投資や財務基盤強化 の原資を確保する。9月にも新規株式公開(IPO)を計画しているラ イバル日本航空に先手を打つ形になる。

公募は最大10億株で払込日は25日から27日まで。主幹事は野村証 券ゴールドマン・サックス証券JPモルガン証券で国内外で募集す る。成長分野の国際線ネットワーク拡充を目指す全日空は、燃費のいい B787を戦略機としてアジア中心に投入、シェアと収益拡大を狙う。 4月に新たな役員体制を発足させ、今回の公募が初の大仕事になる。

国内航空業界は、羽田空港や成田国際空港などの首都圏空港の発着 枠拡大や格安航空会社(LCC)の相次ぐ国内路線への就航など、事業 環境に大きな変化が到来。経営再建中の日本航空はリストラや公的支援 の効果などで11年度の連結純利益で1866億円を計上、全日空に6倍超の 差をつけた。再上場では5000億円を超える資金調達を計画している。

マッコーリー・キャピタル・セキュリティーズのアナリスト、ニコ ラス・カニンガム氏(東京在勤)は、「全日空、日航ともに資金調達の 際にアプローチするのは似たような投資家層なので、全日空には先手を 打った利点がある」と指摘、「全日空の調達の後に、日本の航空会社の 新株発行にどの程度の需要があるのか不透明だ」とみている。

全日空の中川信一郎財務部副部長は、ブルームバーグ・ニュースに 対して、「過去2回の増資は緊急対策的な守りの増資だった。特に2009 年はリーマンショック直後で世界経済が揺らぎ、需要が激減し業績が厳 しい中で実施した」と指摘。今回は、前期が過去最高益となるなど業績 好調が続く中で「今後アジアでの積極展開に向けた攻めの姿勢の増資 だ」と強調した。09年の増資の実際の資金調達額は約1427億円、06年は 約966億円だった。

将来的なM&Aの資金にも

中川氏は「今回の増資の目的はボーイング787などの最新機材へ の投資と財務基盤の強化の2つが中核」と述べた。その背景には日本に 押し寄せる「航空自由化の波と国際的な航空業界の競争激化と再編」な どがあるとして、「いざ鎌倉という時に、迅速、的確に対応できる財務 体制を整えるための資本増強と理解してほしい」と語った。

具体的には、中川副部長は調達資金には「将来的なM&A(企業の 合併・買収)も選択肢のひとつと考えいる」と説明する。そして、現状 でも、一定のキャッシュフローは業績が好調に推移しているため確保で きるものの「今後予見されるアジア需要を確実に取り込む展開の際に、 時間を買う感覚で早めの準備のための増資とも位置付けている」と説 明。「世界的な航空業界を見れば、他社との競争において、いつ何時、 何があるか分からず常に警戒が必要だと指摘した。

ただ、広報担当の野村良成氏は「ベストなパートナが見つかった場 合に機動的かつ、すみやかに提携やM&Aなどを検討できるようにする ためのものではあるが、現時点においては具体的なものは何も決まって いない」と補足した。

早期にリターン、責任果たす

また中川氏は、株価が3日に急落した点について、「調達する資金 を活用して早期にリターンをもたらすことで経営責任を果たすことに尽 きる」とし、「同時に債務の返済などの面にも充当することで結果とし て全日空の財務体質を強化することが必要なことは株主に一定の理解を 得られる」と説明した。さらに今回の増資について、社長や経営幹部に よる世界的なIR活動を展開する計画だと述べた。

格付投資情報センター(R&I)の主任格付アナリストの山本由明 氏は、投資家向けコメントで「格付け対比で見劣りしていた財務基盤を 強化し、投資余力を高める効果がある」と評価した。一方「事業環境は 厳しさを増すことが避けられず、機材投資に見合った収入を確保してい けるか予断を許さない」とも分析。格付けの向上には、経営効率化や利 益確保の体制構築が必要として格付はBBBプラスに据え置いた。

全日空の株価は3日、前日比31円(14%)安の193円で終了。東証 1部の売買高で3位だった。4日は前日終値を近辺で推移している。

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