【コラム】野村は「野菜HD」に改名を、名前から健全になれ

福島の原子力発電所事故以降、日本 で物言う投資家が増えている。その証拠が野村ホールディングスに表れ たのかもしれない。

野村の個人株主は名門投資銀行の社名を「野菜ホールディングス」 に変更することを年次株主総会で求めた。インサイダー取引スキャンダ ルで揺れる取締役会に健全な事業慣行を迫る皮肉だ。このほかにも、ト イレを昔ながらの和式トイレにしろなどという突拍子もない要求も出 た。従業員の「足腰を鍛え株価を4桁に回復させる」のが目的だそう だ。

突飛な話ではあるが、この話には少なくとも真実の部分がある。野 村の296円の株価がひどいという点だ。この5年間に80%余り下げてい る。

東京電力も株主に責められている。株主は福島第一原発の事故を起 こした同社が原子力発電をやめるか依存を減らすことと、立ち退きを余 儀なくされた10万人以上の周辺住民への補償を拡大することを求めた。 東電は株主からこれほど物を言われることに慣れていない。

しかし先走りはやめよう。日本企業の株主が数十年にわたる寡黙 (かもく)な態度を変えて物を言い始めている兆候があるとは言え、日 本の企業統治の大改革が事実ではなく、神話に過ぎないことを示す要素 は数多い。

先に良いニュースを見てみよう。不祥事という点で、この1年3カ 月は日本に厳しかった。東電からオリンパス、AIJ投資顧問と、競争 力維持のために新しい道を必要としているはずの日本の旧態依然ぶりを 投資家に思い出させる事件には事欠かなかった。

ミセス・ワタナベ

昨年の大震災と津波後の政府の稚拙な対応は、2009年に自民党を政 権の座から引きずり降ろした行動する有権者の意識を再び刺激した。そ の後の一連の企業不祥事、震災後復興のもたつき、不人気な消費税引き 上げの取り組みの中で、与党・民主党の命運は危うくなっている。

いわゆる「ミセス・ワタナベ」ですら日本への信頼を失いつつあ る。ミセス・ワタナベは家計の財布を握る主婦が主役であることから付 いた日本の個人投資家の代名詞。

東京に本社を置くロジャーズ・インベストメント・アドバイザーズ のエド・ロジャーズ最高経営責任者(CEO)は、このところの事象が 東電など日本株式会社を支えてきた企業に対する前例のない国民の断罪 を引き起こしたと指摘する。「これら全ては一段の株主行動主義へとつ ながり、ミセス・ワタナベは経済、政治問題についての不満をますます 声を大にして表明していくようになるだろう。有権者としても株主とし ても、ミセス・ワタナベはもうかつてのようには日本株式会社を信頼し ていない。二度と信頼しないかもしれない」と同氏は話した。

そうは問屋が卸さない

悪い方のニュースはと言えば、日本株式会社が十分に注意深く耳を 傾けていないことだ。欧州が危機に揺れ、米国がリスク回避志向を強め ている昨今、日本企業の手元資金は潤沢となっている。円高が合併や買 収を促し利益を押し上げると期待されている。

そうは問屋が卸さないと、ジェフリーズ・ジャパン(東京)の株式 ストラテジスト、ナオミ・フィンク氏はくぎを刺す。同氏は日本企業が 海外での買収で高い価格を払い過ぎ、内部留保利益を無駄遣いしている 兆候を指摘している。そのような買収は投資収益率を改善させない場合 が多いが、物言う株主が増えても、このような傾向が変わる兆候はほと んど見られない。

日本に変化が広がっていると大喜びしている向きに、CLSAアジ ア太平洋マーケッツのストラテジスト、ニコラス・スミス氏(東京在 勤)は「マイケル・ウッドフォード」の2語を突き付ける。同氏はオリ ンパスの不正会計を指摘して昨年10月に社長を解任された。事件は決算 修正に発展し、株主資本13億ドルの消失につながった。

身の丈に合った企業統治

無念を晴らしたウッドフォード氏が社長に返り咲くことを申し出た とき、日本の機関投資家は同氏の再任を支持しなかった。「これこそが 問題の核心だ」とスミス氏は言う。「国民は自らの身の丈に合った企業 統治しか得られず、退職年金のリターンも分相応になる」と同氏は指摘 した。

もちろん、われわれの資本主義そのものだってあまり立派とは言え ない。毎日のように、不正や無能を示す新しいエピソードが出てくる。 JPモルガン・チェースはトレーディングで90億ドルに上るともいわれ る損失を出し、中国の経済データは信頼できない。フェイスブックの新 規株式公開(IPO)は爆弾だったし、ロンドン銀行間取引金利 (LIBOR)は操作されていた。挙げれば切りがない。金融市場とそ の参加者を信頼する方が間違っているのかもしれない。

しかしそれでも、東京が世界の金融センターの1つであり続けたい と望むなら、企業の説明責任をもっと明確にする必要がある。インサイ ダー取引を取り締まらなければならないし、企業が決算の数字をメディ アに漏らすことも罰せられるべきだ。株式公開に向けた期間も現行の15 日から短縮し、いかがわしい取引ができないようにすべきだ。総じて、 経済犯罪に対してもっと厳しく臨み、刑事罰も強化すべきだろう。

これらは株主が声を上げ、鋭い質問を投げ掛け、変革を要求して初 めて実現する。こうした動きが見えていることは素晴らしいが、さらに もっと必要だ。日本の経営者らを株主利益に注意を払うようにさせる道 はこのことに尽きる。(ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ぺセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニス トです。このコラムの内容は同氏自身の見解です。

原題:Tough Legs, Loins Urged by Shareholder Activists: William Pesek(抜粋)

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