米学生ローン徴収の現実-給与の25%差し押さえられた教諭も

リンダ・ブライスさんの銀行口座か ら弁護士たちが預金を引き出し、給与の手取り額の25%に当たる月900 ドル(約7万2000円)以上を差し押さえた。ブライスさんは小学1年生 を教える教諭で米沿岸警備隊の元隊員。食料やガソリンなどの光熱費を 支払うことができないと慈悲を請うた。

ブライスさんは、30年以上前に大学の学費を支払うために借り た3100ドルを支払えず債務不履行となった。ロサンゼルスの連邦地裁の 首席判事はブライスさんの言い分を聞き入れ、月に25ドルずつ支払うよ う命じた。そして、連邦政府の代理人を務める法律事務所ゴールドスミ ス・アンド・ハルがブライスさんの銀行口座から2496ドルを引き出し た。

ブライスさんは2009年5月に裁判所に提出した文書で「私は追い詰 められている。裁判に時間がかかっていることについて謝罪するが、ど うすればいいのか分からないだけだ」と書いている。

米国の学生ローンの負債総額は約1兆ドルと、クレジットカードの 負債総額を上回っている。ブライスさんのケースは政府がその一部を徴 収する際にどれほど厳しい姿勢を示すかを浮き彫りにしている。10代の 時に学生ローンを抱え、学位を取得しても債務を返済できない人々は、 子供の養育費を支払う義務のある人を除き最も厳しい取り扱いを受け る。他のいかなる種類の債務者よりも新たなスタートを切ることができ るチャンスは最も小さい。

米教育省は返済を受けられない場合、債務者の氏名を連邦検察当局 に届け出ることが可能だ。そして、検察当局は民間法律事務所を採用し 納税者のために資金を回収する。これらの法律事務所は手数料を差し引 いた額を国に収める。

債務者がインタビューや裁判所への届け出で明らかにしたところに よると、検察当局の代理人を務める弁護士たちは債務者に対し、自動車 を引き渡し健康保険を解約するよう要求する。数年間かけて債務を返済 したいという申し出は退け、給与の大幅な差し押さえを主張する。

逃げ場はない

借り手にはほとんど逃げ場がない。1998年の連邦法改正により学生 ローンが破産によって免責になることはほとんどできなくなった。91年 以降は他の大半の消費者ローンと異なり、徴収権の消滅時効もなくなっ た。

ブライスさん(58)は、70年代に借りた金の返済を迫られる可能性 があるなど思いも寄らなかったと話す。

「私のように、あるいは警察官や消防士のように国に貢献しコミュ ニティーに報いる仕事をしている人間に、政府は猶予を与える必要があ ると思う」。ロサンゼルスの公立校での授業を終えたブライスさんはカ リフォルニア州バーバンクのコーヒー店でインタビューに応じ、こう語 った。

教諭など公共サービスの仕事に就いた借り手は10年間にわたり定期 的に返済し債務が減れば債権放棄の対象となるが、ブライスさんの場合 は債務不履行となり法的判断が下されたため対象外となった。270日以 上返済が滞り債務不履行に陥っている人は500万人を超える。負債総額 は昨年9月時点で670億ドルに上っている。

原題:Schoolteacher’s Drained Bank Account Shows U.S. Hitting Defaults(抜粋)

--取材協力:Jonathan Kaufman.