「平均的なIQ」あれば年間13%の運用成績可能-株式の達人

5月のある月曜の朝、ニューヨーク のビルの31階にあるオメガ・アドバイザーズの会議室の窓には強い雨が たたきつけていた。室内では、レオン・クーパーマン会長兼最高経営責 任者(CEO)とアナリスト14人が土砂降りの市場でいかに利益をひね り出すか、議論を戦わせていた。同社はそれまでの1カ月で、今年の稼 ぎの半分を失っていた。

クーパーマン氏(69)は、「市場は重症だ」といつもの大声で語っ た。しかし同氏にとってこうした状況は必ずしもマイナスではない。ニ ューヨークのサウスブロンクス出身の同氏は、25年間にわたったゴール ドマン・サックス・グループのアナリスト時代、銘柄の目利きで頭角を 現し、その後、富豪にのし上がった。同氏は状況を「活用する必要があ る」とした上で、「今、とんでもなく割安の銘柄はどれだろう」と語っ た。

ヘッジファンド運用会社オメガは現在、米国株投資を中心に60億ド ル(約4770億円)相当の資産を運用。米ヘッジファンド・リサーチによ ると、クーパーマン氏がオメガを創設した1991年以降の平均年間リター ンはプラス13.3%と、他の株式ファンドの平均(プラス11.4%)を上回 る。クーパーマン氏は40年を超えるキャリアを通じて、どのような市場 環境の下でも必ず最も割安な銘柄を見つけ出すという評判を勝ち取っ た。「ブルームバーグ・マーケッツ」誌8月号が伝えた。

シンプルな方法

オメガの顧客でソロモン・ブラザーズ共同創設者の孫、ロバート・ S・ソロモン・ジュニア氏(75)は、「クーパーマン氏は特に手の込ん だことをするわけではない。割安の株を探すだけだ」と説明し、「銘柄 の見極めで幾つかの素晴らしい成功を収めた」と語った。クーパーマン 氏在籍中にゴールドマンの共同会長を務めたジョン・ホワイトヘッド氏 (90)は、「彼は業界が長く、市場の浮き沈みを見てきたが、全てを見 事に乗り切った」と述べた。

5月のこの日の市場はユーロ圏の先行き懸念や、米減税措置が年末 に失効する可能性が浮上したことに加え、中国の成長鈍化を材料に株価 が下落した。S&P500種株価指数が5月に6%低下した後、一部の資 産運用担当者はさらなる株安を予想。資産34億ドルのヘッジファンド、 パスポート・キャピタルを運用するジョン・バーバンク氏はブルームバ ーグとのインタビューで、米国も含め世界の多くの国が再びリセッショ ン(景気後退)に陥ると予想しており、株の空売りをしていると語っ た。

株価を楽観

クーパーマン氏はもっと楽観的だ。6月11日時点で、同氏のファン ドの年初来リターンはプラス6%と世界のヘッジファンド平均(プラ ス1.03%)を大きく上回る。同氏は、投資家にとって株式が最も有望で あり、リセッション入りの兆候が見られない米国では特にそうだと語っ た。

米国では銀行の利益率が改善し、家計債務は減少、企業の設備投資 は増えている。しかし経済的混乱や米大統領選挙をめぐる不透明感によ り、株は依然として割安だと同氏は指摘する。S&P500の株価収益率 (PER)は12.5倍と、過去50年間の平均(15倍)を下回っている。

クーパーマン氏の主要投資先の一つは、米学資ローン最大手SLM (サリーメイ)だ。ニューヨーク連銀によると、米国の3月31日時点の 学資債務残高は9040億ドルと、10年前の2410億ドルから大幅に増加。一 部の評論家はこれを根拠に学資債務危機が近づいていると指摘する。

しかしクーパーマン氏は逆にチャンスだとみる。米政府がSLMを 通じてではなく大学生に直接融資するよう議会が決めた2010年以降、 SLMは民間融資事業を拡大した。

SLM

クーパーマン氏は、JCフラワーズとJPモルガン・チェース、バ ンク・オブ・アメリカ(BOA)の投資家連合によるSLM買収計画が 信用危機のさなかに頓挫し株価が急落した後の2007年12月からSLM株 を買い進めた。平均購入価格は1株当たり7.36ドルだった。6月11日時 点で、SLMの株価は14.19ドルで、オメガは22ドルまで上昇すると予 想している。オメガの持ち株比率は3.51%と、第8位株主。

同氏はSLMについて、「最終的にはうまく行くだろう」と述べ、 「多くの子供が資金を借りる必要があり、親がローンの共同保証人にな らざるを得ない。これはもうかるビジネスだ」と指摘した。

ただクーパーマン氏の目利きも外れることがある。オメガはJPモ ルガンのダイモンCEOを業界で最もやり手だと高く評価、2009年から JPモルガン株を買い進めた。平均購入価格は37.14ドル。

JPモルガンは5月10日にデリバティブ(金融派生商品)取引で20 億ドルの損失を出したことを公表。オメガはその翌日に保有する同行株 の約3分の2を売却し、損失を確定した。5月11日の終値は前日比9% 安の36.96ドルだった。6月27日の終値は36.78ドル。

ダイモン氏を信頼

オメガが5月に開いたスタッフ会議で、ポートフォリオマネジャー の1人は、JPモルガン株が現在、通常では考えられないほど割安にな っているようだと指摘した。クーパーマン氏は、ダイモンCEOが不当 にもバーニー・フランク下院議員らの批判にいかにさらされたかを長々 と語り、「一部のひどい報道には本当に腹が立つ」と述べた。そしてダ イモン氏への信任投票として残りの株を保持するとした。

仕事中毒と自認するクーパーマン氏は5月のインタビューで、良い 銘柄を見つける秘訣(ひけつ)は存在しないと語った。「平均的な知能 指数(IQ)と強い勤労意欲があれば誰でも成功できる。自分がそれを 証明している」とした上で、「仕事以外にはあまり関心がないので余暇 の過ごし方が分からない。秩序ある生活が好きなんだ」と述べた。同氏 は、株式のリターンが将来、7-8%と、過去の10%を下回る水準にと どまると予想した。

ジャナ・パートナーズの共同創設者、バリー・ローゼンスタイン氏 (53)はクーパーマン氏の勤労意欲を称賛する。同氏は十代の時にクー パーマン氏と同じセーリングクラブに属していたが、クーパーマン氏は 週末ごとに必ず企業の年次報告書を抱えて現れ、船内で読みふけってい たという。

ローゼンスタイン氏は、「ブルース・スプリングスティーンがロッ ク界で最も勤勉だとしたら、投資業界で最も勤勉なのはクーパーマン氏 だ」と指摘した。ローゼンスタイン氏が2001年にジャナを創設した時に 最初に投資した1人がクーパーマン氏だった。

クーパーマン氏が年次報告書や企業幹部への質問で見つけようとし ているのは、PERが低い上に多くの現金を保有、かなりの利益を上 げ、株価が1株当たり純資産を下回っている企業だ。また、自社株を多 く保有している賢明な経営者や、自社株を安く買い戻す企業にも目を付 けるという。

原題:Cooperman Says Earning 13% Annually in Stocks Takes ‘Average IQ’(抜粋)

--取材協力:David Glovin.

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